第4話【幕間】創造の女神と聖竜族の思惑
隆也が去った後、竜崎がひとりで管理事務所にいると不意に気配を感じた。
「……よかったんすか? 直接会わなくて」
「いきなり私が出ていったら彼も驚くでしょう?」
竜崎の背後に立ってそう告げたのは十代半ばほどの少女。
ショートカットの茶髪に青い瞳で、出で立ちは上下揃いのジャージ姿。パッと見は部活帰りの女子高生にしか見えないのだが、
「ルナレナ様が顔を見せれば、矢凪さんはもっとすんなり転職を決めてくれたかもしれないのに」
「結果的にうちへ来てくれる決断をしてくれたんだからいいじゃない」
「どうっすかねぇ……途中で心変わりするかもしれないっすよ?」
「なっ!? 神の誘いを断ろうと!?」
「いや、まだ完全に信じ切ってはいないんじゃないっすかね。このあと冷静になれば何かおかしいって思うかもしれないっすよ?」
「だったらもっと信憑性を高めるよう努力をしろ!」
「俺が何か言うよりもルナレナ様が直接会った方が早いっす――って、これさっきもやったっすね」
「~~っ!!」
ジャージ姿の少女こと創造の女神ルナレナは何とも言えない表情で地団駄を踏む。
「これでも神様なのにまったく思い通りに進まない……やはり力が弱まっているようね」
「確かに以前より力は弱まっているみたいっすけど、今回の件に関しては単純にルナレナ様が――いや、やっぱりやめておくっす」
「そこまで言えば大体分かるわ!」
吠えるルナレナに対し、慣れているのかまったく意に介さない竜崎。
両者の関係性が如実に出るやりとりだった。
「まあ、いい」
疲れたのか、ルナレナは手近な位置にあった椅子へと腰を下ろす。
「彼には絶対にこちらへ来てもらわないといけないんだ」
「それについても詳しく説明をしたらよかったのに」
「……なんか嫌だった」
「感情に流されやすい神様だなぁ」――と、竜崎は言いかけたが、またグダグダしてもいけないからと飲み込んだ。
「でも、いずれは説明をしなくちゃいけないっすよ。何せ彼は……矢凪隆也さんはあっちの世界じゃ特別な存在なんすから」
「分かっている。……しかし、世界が変わるだけでこうも人間性が変わるものかな」
「そうっすか? 俺は矢凪さんと『あの人』は凄く似ていると思うっすけど」
「……まあ、面影はあるよね。最初見た時はちょっとビックリしたし」
ルナレナも竜崎も、隆也とは別の人物を彼に重ねていた。
それこそが隆也をスカウトした最大の理由なのだが、当人がそれを知るのはもうしばらく先の話である。
その後、ふたりは隆也に重ねている『あの人』の話題で盛り上がった。
矢凪隆也が転職するまで――あと一ヵ月。
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