第6話 Q 作者がバグ技使用っていいんですか? A 黙っとれ
「準備ってことはもしかして、特異空間に行くってことでいいんだよね?」
「ああ。あそこで色々と準備をしよう」
「でも普通にしてたら多分間に合わないよ?」
「だから、制作者としては掟破りみたいなもんだが………バグを使う」
「バグ?」
「んまぁ沙月は知りもしないよな」
こいつらの記憶は、現時点で解放されているストーリーと自身が作られた存在であること。そして、作者である俺のことをほんの少し。
プレーヤーが何をしているかなんて知らないのだ。
「んじゃ行ってみるか」
万電帳を開き、特異空間という欄をタップする。
そして表示される特異空間選択画面。
System>>>>>>特異空間がロックされています。
「んまぁそうなんだよな………」
特異空間というのは、まぁ簡潔に言って仕舞えばダンジョンのような場所。
様々な世界で発生しており、主人公たちはそれの原因を調べるために特異空間に入ったり色々な場所に行くというのが本作のストーリー。
もちろん、それだけが主軸ではなく他にも主人公たちには目的があるのだが………。
話を戻すと、主人公たちが初めて特異空間に相対するのはメインストーリーである、『天神譚』の第二章である。
今現在、自分のこのデータ?は多分スタートしたてなのだから、天神譚第一章だろう。最悪第零章かもしれない。
「でもストーリーなんてこの世界にあるわけないし……でも進めないといろんな機能がロックされっぱだし………」
「どうするの……?」
そう悩んでいる時だった。
一つの通知音が鳴る。
俺らは、万電帳の画面を見る。
System>>>>>>隠しアーカイブ達成条件を満たしました。隠しアーカイブ『スター
トライン』を達成しました。
System>>>>>>隠しアーカイブ『スタートライン』達成により、いくつかの機能が
開放されました。
System>>>>>>『声帯認識』開放、『人工知能』開放、『特異空間選択』開放、
『図鑑』開放、『アイテムボックス』開放。
System>>>>>>隠しアーカイブ『記念すべき初隠しアーカイブ達成!』を達成しま
した。これにより、キャラ人数制限が10人から15人になりました。
「色々と多いな………」
『図鑑』、『アイテムボックス』、『特異空間選択』以外を俺は付け足していない。多分神とやらが付け足したのだろう。
「声帯認識?」
「なんかスマホみたいになったと思えばいいのか……?」
いきなり色々な機能が追加されたため、何から手をつければいいのかわからない。
「ってちょっと待てよ……?人工知能ってまさか」
俺は万電帳に向かってその名を呼ぶ。
「起きろ……甘梅雨こと……あゆ!」
すると、
「なんですかマスター?」
「やっぱりお前かよ……」
正式名称『甘梅雨』。略称『あゆ』。
俺が新たに作っていたキャラであり、ストーリーでは主人公たちの万電帳にリンクし、主人公ないしプレイヤーをサポートするというキャラクターだった。
「神……企業秘密という言葉を知らんのか全く……」
閑話休題
「それで……早くしないと被害が広がっちゃうよ?」
「あっそうだった……ごめんなあゆ。ちょっと急いでて」
「いいですよマスター。私のことは気にしないで大丈夫です」
「起きてもらって悪いんだが、特異空間の中で『密毒林のサーキュ』っていけるか?」
「すぐに検索しますね」
少し……数秒であゆは俺の指定した特異空間を探し出した。
「ありました!」
万電帳が大画面モードになり、空中に表示される。
「密毒林のサーキュ………」
「マスター大丈夫なんですか?この特異空間、初見殺しだってよく言われているステージじゃないですか」
そう。このステージは自分でも思う。初見殺しだと。
通常毒についての説明……実践はチュートリアルで行われる。
なのでこの『密毒林のサーキュ』を軽視して挑む初心者が後をたたないのだ。
しかし彼らはこの特異空間の中継地点にすら到達することができない。
というのもこのステージ。
「私も覚えてるよ………1秒で体力の5%を持っていくフィールド効果………」
沙月もブルブルと震えている。
そのこのステージは常時フィールド効果が発動しており、毒無効を持っていないキャラクターは体力の5%を奪っていく『猛毒』のステージなのだ。
毒は自ターンが回って来るたびに1%のダメージを喰らう。
そして数ターンで効果は切れる。
しかしこのフィールドは基本常時発動なのだ。
回復手段がない場合。
このフィールドでの活動時間は20秒——。
「本当狂気の沙汰だよね……」
「うん。本来ならみんなストーリーを優先すると思ったんだけどね……」
ただしストーリークリアでもらえる無料キャラの中に回復がいるため、大変なものの突破は序盤でできるようになっている。
しかし、まぁ敵も沸くこのフィールドでは……まぁ厳しい。
「どうするの?」
「まぁ…………バグ技を使う」
「ば、バグ技?」
「ああ。この特異空間にはまだ直していないバグがあるんだ」
そう。それは………
「どんなバグなの?」
「特定の場所で回避をすると、壁を貫通して猛毒フィールド効果を受けずに敵に認識されても攻撃されずに奥まで進むことができるんだけど………」
「え?なんでそれ放置してたの?」
「タイミングがシビアだし………それに最近のバグ技だったからアプデのタイミングと被ってたんだよ」
「そっか………」
「それでもそれのおかげでなんなくと進めそうですねマスター」
「ああ」
俺らは時間がないためすぐに特異空間に入るのだった。
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