俺のひよりが、寝取り男に変えられていく……!(仁秀視点)

(くそぉ……! あいつら、結局あの後どんな感じになったんだ……?)


 翌日、学校にやって来た俺は、落ち着かない気持ちを押し殺しながら教室へと向かっていた。

 ただ、向かっている教室は自分のではなく、ひよりのクラスの教室だ。


 昨日、ひよりと尾上を尾行した俺は、途中であいつらの調査を終わらせたわけだが……やっぱり頭から二人のことが離れることはなく、ずっと気になり続けていた。

 一応、ひよりの家を確認し続けたから、あいつが夕方くらいに帰ってきたことは知ってる。つまりはどちらかの家にお泊りしたり、ホテルでヤったりはしてないってことだ。


 それに関しては安心したが、何もかもを楽観的に考えることはできない。

 セックスはしてなくても、キスとかそれに近いことはしたかもしれないし……と考えると、不安で悔しくて仕方がなかった。


 だから今、俺はひよりのクラスに行って、こっそりとあいつの様子を伺おうとしている。

 昨日のデートで何か問題があったらしょんぼりしているかもしれないし、そこで付け入る隙を見つけられるかもしれない。


 ただ、あいつに見つかったら俺の浮気がバラされる可能性があるから、俺がいることがバレないように気を付ける必要がある。

 ちょうどクラスメイトの女子たちと話しているひよりの姿を見つけた俺は、こっそりと物陰に隠れながら聞き耳を立てた。

 そうすれば、二人組のクラスメイトのうち、元気な方の女子の声が聞こえてくる。


「マジ!? そんな感じのことをしたんだ!?」


「ちょっともう、大袈裟だよ。別に大したことじゃないって」


(なんだ? そんな感じのことって、どんなことをしたんだ?)


 オーバーリアクションで驚いてみせた元気な女子の言葉に、疑問を抱く俺。

 あんなに驚くことって何なんだと俺が頭を悩ませる中、もう一人の落ち着いた雰囲気の女子がひよりへと言う。


「でも、尾上くんも喜んだでしょ? 色々と助かったって言ってなかった?」


「うん、まあね。お礼も言われたよ」


 話から察するに、ひよりは尾上のことを助けたらしい。

 でも、いったい何を助けたのかはわからず、ちょっとぼやけたままだ。


 あのひよりに、尾上を助けられるような何かがあっただろうか?

 本気であいつが何をしたのかがわからずに困惑する俺の耳に、楽し気な元気な女子の言葉が響く。


「そりゃあまあ、雄介くんも感謝するでしょうよ! なにせ、わざわざあげたんだからさ!」


「えっっ……!?」


 その信じられない発言に、俺は思わず驚きの声を漏らしてしまった。

 慌てて口を閉ざした俺の背中には大量の汗が流れていて、心臓もうるさいくらいに鼓動を鳴らしている。


 お風呂の写真を、撮って送った? つまりそれって、入浴中の裸の写真を尾上に送ったってことだよな……?

 俗に言う、エロ写メってやつじゃないか……!? と驚き、動揺する俺の耳に、会話するひよりたちの声が届く。


「そのくらい、大したことじゃないよ。雄介くんが喜んでくれるなら、いくらでもするって」


「お~、言うねえ! いいじゃん、いいじゃん!」


「実際、尾上くんも助かるでしょ。ひよりにそこまでしてもらえるなんて、幸せ者だよなぁ~」


(た、大したことじゃない? いくらでもする……!? そんな、そんな簡単にしていいことじゃないだろ……!?)


 って、そういう意味か!? 確かにひよりの裸の写真があればそりゃあ大助かりだけど、そんなのおかしいだろ!?

 っていうか、ひよりもなんでそんなに軽いんだよ!? 一か月くらい前までは俺に胸も揉ませてくれなかったのに、尾上と近付いてから全部緩くなり過ぎだろ!?


(や、ヤバイ……! 想像以上に尾上の調教が進んでる! このままじゃ、ひよりがとんでもない女にされちまう!)


 昨日の家電量販店でのあれもそうだが、ひよりは尾上の手でどんどん下品な女に変えられていることがわかった。

 外で胸を揉ませるだけじゃなく、裸の写真まで平然と送れるようになるだなんて、昔のあいつからは想像もできないヤバさだ。


 急いであいつの目を覚まさせないと、とんでもないことになる。

 どうにかして尾上のヤバさと弱みを掴んでひよりと引き離さないと、あいつが下品過ぎるクソビッチになっちまう!


「あっ……‼」


 そんなことを考えている俺の目に、にっくき尾上の姿が映った。

 あいつも今、登校してきたらしい。まだ俺には気付いていないようだ。


 あいつに見つかっても面倒なことになるだろうし、それでひよりからの信頼をまた失ったら一層状況が悪くなってしまう。

 ここは撤退するしかないと……悔しさに拳を握り締めながらそそくさと自分の教室へと退散していった俺は、その最中にひよりのエロ写メを想像して歯を食いしばる。


(くそぉ……! 尾上の奴、ひよりにそんな真似までさせやがって……! う、羨ましい……‼)


 俺も見たことのないひよりの裸。デカい胸と尻にもっと大事なところまで丸見えの写真を、尾上は何枚も持っているんだろう。

 いや、それだけじゃない。尾上は生でひよりの裸を見たことがあるんだ。だってあいつら、ヤったんだから。


 悔しい! 悔しい悔しい悔しい悔しい! 羨ましくて仕方がない!

 なんでぽっと出のあいつにひよりを奪われなくちゃならないんだ!? つい一か月前までは、俺があいつの彼氏だったのに!


 そうだ。俺がひよりの彼氏だったんだ。なのに、尾上の奴に寝取られた。ほんの少し隙を見せただけで、ひよりを盗られてしまった。

 そこからたった一か月で何もかもを食い尽くされて、俺がしたこともなかったことをやってて……これを悔しがらないなんてあり得ないだろ!?


(くそぉ、くそぉ、くっそぉ……!)


 気が付けば、俺の目からは涙がこぼれそうになっていた。

 それを隠すために机に突っ伏して顔を伏せながら、俺は悔しさに打ち震える。


 ひよりが、俺のひよりが尾上に変えられてしまった。あんな下品な女になってしまった。

 きっと俺が奪い返すまでの間、尾上はひよりを散々に弄ぶんだろうなと想像した俺は、昨日も感じた頭がぐわんぐわんと揺れ、何もかもが壊されていくような感覚に襲われる。


 寝取られで脳が破壊されるってこういう感じなんだなと、一生知りたくなかった感覚を身を以て経験しながら……俺は、教室で一人、涙を流し続けるのであった。


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