第51話
「──也、慎也、起きて」
「……ん、俺、また寝て──ッ」
さっきめちゃくちゃぐっすりと寝たばっかりなのに、また寝てしまったことに内心で驚きつつ、起こしてくれた絆月に礼を言おうとしたところで、俺は思わず言葉を失った。
「な、何やってるんだよ!」
そして、直ぐにそんな声を上げた。
「? 何って、何が?」
「な、何がって……わ、分かるだろ!?」
「? 起こしてただけだよ?」
確かに起こしてただけではあるのかもしれない。
ただ、起こし方が問題すぎるんだよ!
起こすために体を揺らす。ここまではいい。
ただ、体を押し当ててきながら揺らす必要は無いだろ!?
「ッ、だ、ダメだって」
そう思いつつ、もう何を言っても無駄だと思い、俺も嫌だった訳では無いんだからと起きるために体を起こしたところで、そのまま絆月がキスをしようとしてきたから、俺は咄嗟にそれを避けた。
……体を押し付けられたこと同様、絆月に……恋人にキスをされることが別に嫌な訳じゃない。
ただ、さっきの……俺がまた寝てしまう前のあの感じからして、キスを許してしまったら、そのまま舌を入れられそうだったから、避けたんだよ。……もしもまたあんなキスをされていたら、体を押し付けられていたこともあって、今度こそ我慢ができなくなるかもしれないしな。
「……なんで?」
「は、絆月……わ、分かるだろ? 今は母さんもいるし、な? せめてこういうことは二人っきりの時にしような?」
二人っきりの時にそんなことをされたら、さっきみたいに更に我慢が出来なさそうだけど、今をきりぬけるために、俺はそう言った。
「お義母さんなら居ないよ」
「……へ?」
「話の中で慎也が私と恋人になったことを言ってないことに気がついたから、恋人になったことを伝えたんだよ」
「そ、それで……?」
確かに母さんにそんな報告はしてなかったけど、別にそれがバレること自体に問題は無い。
隠そうとしてた訳じゃないし。
ただ、それと母さんが今家に居ないことに何の関係があるんだよ。
「夜ご飯を作り終わったあと、私の家に向かっていったよ。色々親同士で話したいんだってさ」
「へ、へー……いつ、帰るんだ?」
「少なくとも、今日は帰ってこないよ? お義母さん、私の家に泊まっていくってさ。……もちろん、私と私のお母さんが進めたんだよ。二人とも慎也が私を避け出した後もずっと友達だったみたいだから、今頃仲良く話でもしてると思うよ」
……俺、我慢出来るかな。
もう諦めて、コンビニに走った方がいいんじゃないだろうか。……避妊具を買うためにさ。
本当に絆月は俺なんかには勿体ないくらいに魅力的すぎて、二日連続で一つ屋根の下に二人っきりだなんて、もう我慢出来る気がしないんだけど。
「慎也、我慢、しなくてもいいよ?」
俺の心の内を読んだかのように、絆月は俺の耳元で囁くようにしてそんなことを言ってきた。
「よ、夜ご飯、出来てるんだろ? そ、それを食べるよ」
「私じゃなくて?」
「お、俺はもうリビングに行くからな」
ベッドから体を起こした俺は、絆月を部屋に置き、急ぎ足でリビングに向かう。
……からかってきてるだけならともかく、本気、だもんな。
食欲を満たせば、この気持ちも多少はマシになるだろうし、さっさと絆月と一緒に夜ご飯を食べよう。
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