第49話
「慎也、ちゃんと私の事、好き?」
「好きだよ。……勝手に帰っちゃったのは、本当にごめん。次からはちゃんと一緒に帰ろう」
「……うん。……キス、していい?」
「え……も、もちろん良いよ」
一瞬口ごもってしまったが、俺は直ぐに頷いた。
別に俺だって嫌なわけじゃないし、それで許してくれるのなら、と思って。
「んっ!?」
布団から顔を出してきたかと思うと、絆月がそのままキスをしてきた。……まではいいのだが、俺の口の中に絆月の舌が侵入してきた。
「待っ──」
突然のことにびっくりした俺は、反射的に絆月から離れようとした……けど、絆月に抱きつかれているせいで、上手く離れることが出来なかった。
それをいいことにと言うべきか、絆月はまだ俺にキスをしてきている。……ただのキスじゃなく、舌を入れるキスだ。
別に俺だって男だし、この状況が嫌な訳じゃない。
それでも、再会したばかりで付き合ったばかりでもあるんだから、これは早すぎると思い、俺は一旦でもいいから、絆月に離れてくれというアピールとして何度か背中あたりを優しく痛くないように叩いた。
……それなのに、絆月気がついていない振りをしているのか、単純に無視しているだけなのか、俺から離れてくれることは無かった。
ちょ……そろそろ本当に息が続かないんだが!?
「──ぷはっ」
俺がそう思った瞬間、さっきまで全く離れてくれる様子なんて無かったのに、絆月は普通に顔を離して、キスをやめてくれた。
……もう俺の口の中には何も入っていないのに、まだ感触が残っている。
「は、絆月……キスだけって話、だっただろ」
「うん。だから、キスだけしかしてないでしょ?」
俺の少しだけ責めるような言葉に絆月は当たり前のことかのようにそう言ってきた。
……いや、それは、確かに、キスだけしかしてないって言われたらそうなんだけどさ。
「……舌を入れてくるなんて、言ってなかっただろ」
「うん。でも、キスだよね? ……慎也、嫌だったの?」
「……嫌、では無かったけど、やっぱりまだ早いって言うか──」
「なら、いいよね。もう一回しよ」
俺の言葉に重ねるようにして、絆月はそう言ってきた。
かと思うと、そのまま俺が抵抗する間もなく、絆月はまた唇を俺の唇に重ねてきた。
そしてそのまま、また絆月は舌を俺の口の中に侵入させてこようとしてきている。
さっき言った通り、嫌だった訳では無い。
でも、絆月にとっては違うんだとしても、、俺にとっては三年間ずっと避けてきた相手だ。
三年間の間に変わっていることも多くて、まだ全然俺は絆月のことを知らなすぎる。
だから、まだそういうのも早いと思うんだ。
情けないとは思うけど、そんな思考に至ってしまった俺は、口を固く閉じて、もう今度は舌を入れられないようにした……はずだったんだけど、自分でも驚く程に俺の唇は突破されてしまった。
ただでさえ好きな人からの初めての舌を入れるキスをされている状況だと言うのに、それに加えて更に絆月の体……特に胸が思いっきり当たっているこんな状況で興奮を覚えない訳もなく、内心ではまだ早いから、と言っておきながら、みっともなくも俺の下半身のある部分は大きくなってしまっていた。
……でも、仕方ない、だろ。
こんなこと、口に出した覚えなんて一切無いのに、絆月の体はまるで狙ったかのように俺の理想すぎるんだよ。
むしろ今まで抱きつかれた時とかに我慢できてただけ凄いと思う。……って、俺は何を開き直ってるんだ。
そうじゃなくて、俺が快楽に溺れる前に……絆月が俺の状態に気がつく前に……早くこの状況を何とかしないと。
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