第48話
家に帰った俺は、本当に死んだように眠りについた。
それからどれくらいの時間が経ったのかは分からないが、多分、かなりの時間が経って、意識が覚醒してきた。
……明かりが一切無いし、多分、もう夜なんだろうな。
「……ん?」
そう考えたところで、違和感を感じた。
……昨日……じゃなく、今日の朝と同じ感覚だ。
布団を少しだけ捲る。
俺がよく知る桃色の髪の毛と一緒に、何処か暗い感じの瞳が俺を見上げていた。
それを見た瞬間、俺は直ぐに捲っていた布団を元に戻した。
暗闇の中なんだから、瞳が暗いのは当たり前なのかもしれないけど、今のはそういう感じじゃなかったからこそ、俺の中の恐怖心が増長される。
それにより、まだ寝ぼけていた頭が一気に覚醒して、俺は布団の中にいた桃色の髪の子……絆月に足を絡まされられていて、俺が逃げられないように抱きついてきていることに気がついた。
……本当に逃げられないようにって目的なのかは分からないけど、さっき布団の中を覗いた時のあの感じを見てしまっていると、そう思ってしまうのは仕方のないことだと思う。
それで、問題はなんでこんな状況になってるんだって話なんだけど……俺、なんかしたか?
……ダメだ。……ちょっと記憶が曖昧で分からない。
学校にいた時の記憶がぼんやりしすぎてるし、多分、学校にいる間に何かをした……んだと思う。
取り敢えず、謝るか? ……いや、でも、何に対して謝ればいい? そもそも怒っていない可能性だって、一応無いわけじゃない……はずだし。
「は、絆月……? お、起きてるん、だよな?」
昨日一緒に眠っていた時とは違う意味で緊張しつつ、俺はゆっくりと、なるべく刺激しないように声をかけた。
……刺激しないようにって、絶対に人間相手に使う言葉ではないよな、なんて絶対に余計なことを考えながら。
「……」
何も返事は返ってこない。
その代わり、俺に抱きついてきている力が強くなった。
……色々と当たってる、けど、やっぱり今はそれよりも恐怖心の方が大きかった。
「……と、取り敢えず、ごめん。わ、悪かったよ」
一体何に対して謝ってるのかは全く分からないけど、俺は絆月に向かって謝罪をした。
もう怒ってるのは確定だと思うし。
「なんで、帰ったの?」
感情を感じさせない声で、絆月は布団の中からそう聞いてきた。
……怖いよ。
と言うか、帰ったって、何処から……あ、いや、待った。
何となくだけど、思い出してきたぞ。
……そうだった。俺、眠さが限界で、そそくさと学校から一人で帰ったんだった。
「べ、別に約束してた訳じゃないだろ?」
「用事があったのなら、仕方ない。……でも、何も無いのに、彼女のことを置いて勝手に帰るのは違う」
……確かに。
いや、実際は本当に何も無かった訳では無いけど、それを言ってない以上、どう考えても俺が悪い、よな。
「慎也、ちゃんと私の事、好き?」
「好きだよ。……勝手に帰っちゃったのは、本当にごめん。次からはちゃんと一緒に帰ろう」
「……うん。……キス、していい?」
「え……も、もちろん良いよ」
一瞬口ごもってしまったが、俺は直ぐに頷いた。
別に俺だって嫌なわけじゃないし、それで許してくれるのなら、と思って。
「んっ!?」
布団から顔を出してきたかと思うと、絆月がそのままキスをしてきた。……まではいいのだが、俺の口の中に絆月の舌が侵入してきた。
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