第45話

 さっさと寝るに限る。

 そう思って、目を閉じ、どれくらいの時間が経ったんだろうか。

 ……正直、全く眠れる気がしなかった。

 

 この世界ではあんまり無いけど、前の世界ではよく読んでいたラノベだったりでこういう展開……つまり、美少女と一緒に寝る時に全く眠れない、みたいな展開はよく見たけど、実際本当にそんなことになったら最初はともかくとして、時期に睡眠欲が勝ってすぐに眠れるだろう、と俺は考えていたんだが、全くそんなことは無く、俺のそんな考えは甘かったんだと今まさに思い知らされていた。

 

「……絆月」


 太っているわけじゃないのに、色々と柔らかい絆月の体を抱きしめながらも、余計なことは考えないように意識しつつ、俺は小さく呟くように絆月の名前を呼んだ。

 特に何も反応は帰ってこない。

 ……この状況で絆月は寝られたのかよ。…… 絆月にとっても好きな人と一緒のベッドに居るっていう状況だろうに、なんで寝られたんだよ。……本当は俺の事なんて好きじゃないってことか?

 ……自分で思ってて、自惚れとかじゃなく、それは無いって断言出来るわ。色んな意味で。

 と言うか、今日の……いや、もう昨日か? ……ともかく、朝、俺が寝ぼけてた時、絆月はめちゃくちゃ恥ずかしそうにしてた癖に、なんで普通に寝られてるんだよ。

 ……まぁ、もういいや。それならそれで好都合だし。

 ゆっくりと絆月の手を退けて、絆月から離れよう。

 そうしないと、眠れる気がしないし。


 そう思って、絆月から体を離そうと頑張ってみたのだが、俺が絆月を起こさないように慎重にしているからなのか、全く絆月を引き離せる気がしなかった。

 ……どうする? 少しくらい無理やりになってもいいから、絆月を俺から引き剥がすか? ……いや、ダメだな。

 それで絆月を起こしてしまったら元も子もない。

 ……絆月が起きたら絶対に離れてくれないっていうのもあるけど、単純に好きな子が気持ちよく眠っているところを起こすなんてことしたくないし。




 そして、また時間が経ち、とうとう外が明るくなってきてしまった。

 相変わらず俺は眠れていなかった。

 ただ、とうとう眠気は訪れてきていた。

 それを逃さないように、なるべくではあるけど、直ぐに体から力を抜いた。


 


「おはよう、慎也」


「…………あぁ、おはよう、絆月」


 その結果、俺は眠ることは出来なかった。

 もう今日休んでもいいかな。……いや、流石にダメだな。

 今日学校に行ったらもう明日は休みなんだ。……デートは明後日も休みだから明後日にしてもらって、今日はもう学校から帰ったら直ぐに寝よう。

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