第44話
そして、とうとう来てしまった
絆月と一緒に俺の部屋……正確には、ベッドの前に。
……え? マジで一緒に寝るの? ……いや、その覚悟をして、ここまで来たことは間違いないんだけど、やっぱり、ベッドの前まで来たら来たでその覚悟が鈍ってきてしまう。
情けない、と思われるかもしれないけど、異性の友達はいたことがあっても、異性と一緒のベッドに寝ることなんて、それこそ、子供の頃に絆月と一緒に寝た時くらいだし、緊張して、覚悟が鈍るのなんて当たり前だ……と思う。
「慎也、入らないの?」
隣で俺に体を預けてきていた絆月が眠たそうにしつつ、そう聞いてきた。
……ここでリビングに戻るよ、とでも言えば、多分だけど、絆月も着いてくるんだろうな。
「……入るよ。ただ、絆月から入ってくれるか?」
どうせ寝るだけなんだ。それ以上は当然ながら無いんだ。
俺は強くそう思い、ベッドに入ろうとしたんだが、俺よりも絆月の方に奥に行って貰う方がいいと考えて、そう言った。
大丈夫だとは思うけど、奥の方じゃないとベッドから落ちる可能性だってあるからな。
「うん。ありがとう、慎也。……でも、ちゃんと慎也も来てね?」
「……分かってるよ」
流石にここまで来て逃げたりはしないよ。……と言うか、逃げられないって分かってるし。
「……失礼、します」
絆月がベッドの奥に横になったのを確認した後、俺はそう言いながら、絆月に続いて、ベッドに横になった。
……これは俺のベッドなのに、なんで敬語になってるんだ? という自分の事ながらに疑問を感じながら。
「慎也、遠いよ。……もっと、こっちに来て?」
「い、いや、俺はここでいいよ」
ベッドの落ちるギリギリで絆月に背中を向けつつ、俺はそう言った。
「私がダメだから、こっちに来て? そんなところに居たら、ベッドから落ちちゃうし、昔はもっと近かったでしょ?」
「……昔とはもうお互い色々と成長して、違うって何度も言ってるだろ」
俺の言葉を聞いた絆月は、無理やり俺の体を絆月の方向に向かせて、体をくっつけてきた。
「は、絆月!? な、何やってるんだよ」
「慎也がこっちに来てくれないからだよ」
悲しそうな声色で、俺の言葉に絆月はそう言ってきた。
「……恋人なんだから、別にいいでしょ?」
「それは、そう、なんだけどさ……」
まだ付き合ったばかりなんだから早すぎるっていう理由は言い訳にはならない、もんな。……実際、さっきそうだったし。
「慎也、緊張してる?」
これだけ体をくっつけているから、心臓の音が聞こえたのか絆月はそう聞いてきた。
「そりゃそう、だろ。……付き合ってる女の子と一緒のベッドでこんなに体をくっつけて寝転んでたら、誰だって緊張くらいする」
「……うん。私も幸せ」
どことなく話が通じてない気がするけど、今更だと思うし、幸せなのは否定できないから、俺は何も言わずにもう目を閉じた。
……このままじゃ色々と俺的にも我慢できなくなりそうだし、さっさと寝るに限る。
一緒に寝るのはもう仕方がないとして、それ以上は流石にダメだし。
絆月もさっき眠たいって言ってたしな。
そう思いつつ、俺の方からも軽く絆月のことを抱きしめた。
「おやすみ、絆月」
「うん。おやすみ、慎也」
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