第37話

 家に帰ってきて、絆月にご飯とお風呂、どっちを先に済ませる? と聞いたところ、お風呂と言ってきたから、俺は風呂を沸かした。

 当然と言うべきか、風呂は先に絆月に入ってもらっている。


「…………」


 そんな中、俺は自分の部屋でスマホを弄りながら絆月がお風呂から出てくるのを待っている。


 ……誰だよ、さっき少し気持ちが楽になってきたとか考えた奴は。

 自分の部屋にいるのに、少しだけ聞こえてくるシャワーの音で全くスマホに意識が逸らせない。

 スマホなんてただ手に持っているだけだ。


 ……さっきまではそんなに深く考えてなかったんだけど、一つ屋根の下で好きかもしれない女の子がお風呂に入ってるってだけでこんなに意識してしまうなんて思わなかったよ。……本当に。




 そして、相変わらずそのままスマホを片手に持つだけで何も出来ずに時間が経つのを待っていると、シャワーの音が止まった。

 それとほぼ同時に、薄くだけど、今度はお風呂に浸かる音が聞こえてきた。

 

 落ち着こう。

 一旦深呼吸だ。

 流石に意識しすぎだ。

 絆月はただ風呂に入ってるだけなんだから、ここまで意識するのはおかしいだろ。

 ……いや、好きだからこそ、ここまで意識してるのかな。

 分からない。……なんでかは分からないけど、やっぱり俺は自分の気持ちが分からない。

 どこか、心の底ではまだ俺は絆月のことを突き放そうとしてたりするのか? だから、自分の気持ちが分からないのか? ……いや、そんなことは無いな。好きかは分からないけど、嫌いな訳では無いっていうのは分かってるからな。


「慎也、上がったよ」


 そんなことを考えていたからか、いつの間にか絆月は風呂を上がってたみたいで、そう言って俺の部屋に入ってきた。

 ……ノックくらいしろよ。……勝手に家に入ってきた過去があるんだから、今更かもだけどさ。


「あ、あぁ、なら、俺も入ってくるな」


「うん。……ご飯はどうする? 私が作る? それとも、出前にする?」


 ……風呂に入ってきたばかりだからか、絆月の顔が赤い。

 ……服も薄いし、さっきまで意識してしまっていたこともあって、更に意識してしまうから、早く俺も風呂場に逃げたいんだけど、無視をするわけにもいかないし、俺は答えた。


「せっかく母さんがお金を置いていってくれたんだし、出前でいいだろ。……絆月も今から作るよりそっちの方が楽だろ? 俺は悪いけど何も手伝えないし」


「私は慎也のためなら料理くらい全然何時でも作るけど、慎也が私のことを気遣ってくれたのなら、今日は出前にしとこっか。慎也が言ってる通り、せっかくお義母さんがお金を置いていってくれたんだしね」


「……俺、風呂入ってくるな。……出前は絆月の食べたいものでいいから、適当に頼んでおいてくれ」


 そう言って、絆月の返事を聞く前に俺は風呂場に向かった。

 ……さっさと入っちまおう。

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