第33話

「デートの場所も決まったことだし、そろそろイチャイチャしよっか、慎也」


 俺が最初から原作でデートに行っていた場所を挙げておば良かったなと後悔していると、絆月がそう言ってきながら俺との距離を詰めてきた。


「するわけないだろ」


「なんで?」


 ……逆に俺がなんで? って聞きたいよ。

 なんでそんな不思議そうな顔ができるんだよ。普通に考えて、俺の言葉は別におかしいものじゃなかっただろ。

 ……仮に俺と絆月が付き合ってたりしたのならともかく、別に付き合っている訳でもない、少なくとも今はただの幼馴染なんだからさ。


「慎也も私の事が好きなんじゃないの? 好きって言ってたよね?」


「それは……ん? いや、待て、俺、好きとは言ってないだろ」


 確かにほぼ好きと言ったようなものかもしれないけど、意識してるかも、みたいなことを言っただけで好きとは言ってない。


「……私の事、好きじゃないの?」


「……距離を詰めるくらいならいいから、今は聞かないでくれ」


 まだ自分の気持ちが何故か分かっていない以上、下手なことは言えないと思って、俺はそう言った。

 

「んー、分かった。今はそれで我慢するね? デートの約束もしてくれたしね」


 笑顔で絆月はそう言ってきた。

 ……本当に朝の寝ぼけていた俺の行動にめちゃくちゃ恥ずかしがっていた子と同一人物なのか疑わしくなってくるな。

 あの時はあんなに照れてたのに、今は嬉しそうな笑顔を見せてくるだけで、一切照れてる様子なんかは無いのに。


 取り敢えず、絆月は今の状況に満足してくれてるっぽいし、俺はスマホでも弄って気を紛らわせようかな。

 

「ねぇ慎也」


 そう思った瞬間、絆月が声をかけてきた。


「なんだ?」


「今日はゲーム、しないの? また罰ゲームを掛けてさ」


「……」


 別に絆月とゲームをすること自体はいいんだけど、罰ゲームか。……結局、負けなければいいだけの話ではあるんだけど、昨日の絆月の上手さからして正直勝てる気があんまりしない。

 ……かといって、何もしないとなるとせっかく絆月と一緒にいるのに、勿体ないよな。

 まだ好きかは分かってないけど、何もしなかったらそれを確かめることも出来ないし。

 

「ゲームをするのは全然いいんだが、今日は罰ゲーム無しじゃダメか?」


「別にいいけど、昨日私に負けちゃったから、怖がってる?」


「……そんな訳ないだろ。今日はそういう気分じゃないだけだ」


 そう言って、俺は絆月から離れながら立ち上がり、ゲーム機の準備をした。

 別にリビングのテレビでも出来るし、なんならリビングのテレビの方が大きいからな。

 昨日もこっちのテレビでやったら良かったな。

 ……いや、結果はあんまり変わらないだろうし、別にいいのか。

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