第32話
飲み物とかを適当に用意して絆月を待っていると、直ぐにインターホンが鳴った。
……だから、この前は勝手に入ってきてたのに、なんでこういう時はインターホンをわざわざ鳴らすんだよ。
今日だって勝手に……いや、今日は勝手にじゃないのか? ……俺にとっては勝手にだったけど。
「はい」
「慎也、来たよ」
「今開けるよ」
もう今更だし、インターホンのことはいいやと割り切って、絆月とそんなやり取りをして俺は玄関の扉を開けた。
「リビングでいいよな?」
「うん。別にいいけど、慎也の部屋じゃダメなの?」
「……もう飲み物を用意してあるからさ」
本当は朝のことを思い出してしまうから嫌だっただけなんだけど、俺はそう言った。
……正直に言ったら、絆月もまた朝みたいになってしまうかもしれないからさ。
そして、絆月を連れてリビングまでやってきた。
「じゃあ、慎也、デートの場所、考えよっか」
「……それもだけど、取り敢えず、俺は絆月の好きなことだったりを知りたいかな」
言い訳でしかないけど、デートの場所を決められなかったのは俺が絆月のことを知らなすぎるからなんだよ。
だからこそ、俺はそう言った。
「私の好きな事? 慎也のことを知ること、とかかな?」
「……それ以外で頼む」
「んー、慎也──」
「俺以外のことで頼む」
こっちが聞いてる立場なんだし、あんまり口出しするのもどうかと思うけど、俺の事ばかりを言われてもどう反応したらいいのかが分からないから、やめて欲しい。
……俺の事を言われたって、デートの場所は絶対決まらないし。
「慎也以外のことで好きなことなんて無いよ」
「い、いや、何かあるだろ?」
「慎也以外のことで好きなことなんてないけど、慎也が一緒ならどこでも好きになれるし、なんでも好きになれるかな」
……それは、どう反応したらいいんだよ。
素直に喜べばいいのか? ……確かに、これだけ思ってくれてるって考えると嬉しくない訳じゃない、はず……ではあるんだけど、何故か素直には喜べなかった。
「……好きなことは一緒に探していくってことでいいか?」
「? 慎也と一緒ならなんでも幸せだよ?」
「……デートの場所、決めようか」
「うん!」
なんか、本当にさっきまで悩んでたのがバカバカしくなってきたかもしれない。
悩んだりなんてせず、どこに行ってたとしても絆月は喜んでくれてたと本気で今なら思えるから。
「慎也はどこに行きたいの?」
「……俺は、まぁ、映画とか水族館とか?」
原作ではそこにデートに行ったりしてたことを思い出した俺は、何となくそう言った。
「なら、今度の休みそこに行こ?」
「え、あ、うん。分かった」
……どうしよう。
今日学校であんなに悩んだのに、10秒くらいで決まってしまった。
最初からそう言っとけば良かったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます