第31話
結局何も思いつかなかった。何も思いつかずに、学校が終わった。
……いや、そもそもの話、俺が絆月のことを知らなすぎるんだよ。
昔のことは知ってるし、一応原作知識だってあるけど、もう結構原作とはズレてるし、それも頼りになるのかなんて分からない。
やっぱり俺が絆月の家とかなのかな。
よく考えたら、俺としては自分の感情を確かめたいから絆月と一緒に居たいのであって、別にどこかへ出かける必要なんてないんだよな。
「絆月、一緒に帰らないか?」
そう思いつつも、今日も今日とて絆月は人に囲まれているけど、それを無視して、俺は絆月に向かってそう言った。
……正直、こんなに人に囲まれている絆月に話しかけるのはかなり勇気が必要だったし、嫌だったけど、また置いていったら絆月が怒るだろうし、悲しむと思ったから頑張って声をかけた。
「うん! もちろん慎也と一緒に帰るよ」
すると、絆月は直ぐに嬉しそうにそう返してくれた。
……良かった。流石にここで断られてたら公開処刑すぎて死んでたぞ。
「どうしたの? 慎也。早く帰ろ?」
「分かってるよ」
視線を向けられるのが嫌だから、俺は絆月にそう言って、一緒に学校を出た。
「そういえば、慎也」
「どうした?」
「デートの場所、決まった?」
「あー、悪い。色々考えたんだけど、俺、今の絆月のことを知らなさすぎてさ、どこに行けば絆月が喜ぶとか分からなくてさ、決まらなかった。……悪い」
正直に俺はそう言って、絆月に謝った。
「慎也と一緒ならどこでも嬉しいよ?」
「……仮にそうだとしても、その、場所でも絆月に喜んで欲しかったんだよ」
「……ふーん。私のこといっぱい考えてくれたんだ」
それは……まぁ、幼馴染っていうのもあるけど、それ以上に好きな相手かもなんだし、そりゃ考えるよ。
……その結果が何も思いつかなかったなんだから、全然ダメだったけどな。
「好きに思ってくれ」
「うん。好きに思うね」
絆月は笑顔でそう言ってきた。
……やっぱり可愛いよな。
まぁ、それでも好きかは何故か分からないんだけどさ。
「それより、だったら今日はまた慎也の家に行ってもいい? そこで今度どこに行くか一緒に考えよ?」
そう思っていると、絆月は笑顔のままそう言ってきた。
なんか自然と今度一緒にどこかへ行くことになってるけど、どうせ本当なら今日の放課後にどこかに行く予定だったんだし、別にいいか、と思い俺は頷いた。
考えられなかった俺が悪いんだしな。
「待ってるよ」
「うん! 直ぐに行くね!」
そんなやり取りをしてから、朝とは違って適当な雑談をしつつ、家が見えてきたところで、俺たちはお互いの家に帰った。
そして、多少飲み物とかを準備して、絆月が来るのを待った。
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