第30話

 朝食を食べ終えて、俺たちは今、一緒に学校に登校をしていた。

 相変わらずと言うべきか、会話はあまり弾んでいない。

 俺も最早さっきの出来事のせいなのか、いつもこんな感じだったのか、あんまり分からなくなってきていた。


 ……勝手に……いや、正確には勝手にでは無いみたいだけど、少なくとも俺に断りなくだったし、勝手に部屋に入ってきたことに文句でも言ってみようかな。

 ……いや、もうそれは今更だし、別にいいか。


「……あー、絆月?」


 頭の中でそんなことを思いつつ、俺は流石に少し気まずくなってきて、何かを話さないとと思い取り敢えず絆月の名前を呼んだ。


「な、何? 慎也」


 すると、時間を置いて最初よりはマシになったとはいえ、絆月は未だに恥ずかしそうな様子でそう聞いてきた。

 ……なんか、やっぱり変な感じだな。……いつもは手を繋ごうみたいなことを絆月の方からぐいぐいと言ってくるのに。


「……暇だったらでいいんだけど、今日、放課後どこか出かけないか?」


 そう思いつつも、俺のせいだし、あまり気にしないようにして、俺はそう言った。

 何故か自分の感情もあんまり理解できてない俺だけど、やっぱりそれは知っておかないとダメなことだと思うから、少しでも理解するために。


「……デートってこと?」


 すると、まだ恥ずかしそうにしつつだけど、絆月はそう聞いてきた。


「……出かけるだけだって」


 それをデートというのかもしれないけど、俺は否定するようにそう言った。

 まだ俺が絆月を好きかどうかもわかってないんだから、誤解を招きそうな発言は避けるべきだと思うし。

 ……まぁ、今日の朝、曖昧だったとはいえ、誤解されそうなことを言ってしまっているからこそ、今の絆月はこんな感じになってしまっているんだけどさ。……あれは寝起きだったし、いきなり絆月が居たりして、困惑してたからこそ出た言葉なんだよ。……絆月も掘り返してこないし、少なくとも今は無かったことにしておこう。


「だから、デートでしょ? もしかして慎也、照れてる? 私のこと、意識してるんだもんね?」


 さっきまで顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたのに、ここぞとばかりに絆月は俺をからかうようにそう言ってきた。

 ……さっきまで掘り返してくる様子なんて無かったのにな。


「……照れてなんかない。それより、暇なのか?」


 俺の方もそのことをからかってやろうかと一瞬思ったけど、またあんな感じになったらお互い気まずいし、俺は絆月の言葉を無視しつつ、そう言った。

 

「うん、暇だよ。でも、どこに行くの? もちろん、慎也と一緒だったら私はどこでもいいんだけどね」


「今突発的に誘ったから、特には決めてないな。逆に絆月はどこか行きたいところとか無いのか?」


「さっきも言ったけど、私は慎也と一緒ならどこでもいいよ?」


 ……一応、学校にいる間に考えてみるか。

 仮に何も思いつかなくても、もう絆月は少なくとも表面上は普通だし、良い起点作りだったと思おう。

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