第28話
絆月が帰ってから、俺は絆月のことを考えてしまいドキドキしてしまっていた心を落ち着かせるために風呂に入って、ちょうど帰ってきた母さんのご飯を食べてからはすぐに眠りについた。
今日は別の意味で精神的に疲れてたからか、本当に直ぐに眠りにつくことが出来た。
「慎也、起きて。もう起きないとダメな時間だよ」
「……ん……まだ、目覚ましが……ん?」
まだ目覚ましが鳴ってないし、大丈夫。
そう言おうとしたところで、俺は違和感を覚えた。
よく考えたら、これは母さんの声じゃなく、絆月の声、か? ……いやいや、そんなことがあるはずがないだろう。
確かに、絆月は俺の家の合鍵を持っているが、朝から絆月が家にいて、寝ている俺を起こしている、なんてことはありえないだろう。
つまり、これは夢だ。
明晰夢ってやつだ。
……好きなわけではないはずなのに、夢に出てきてしまうほどに俺は絆月のことを意識してしまっていたのか。
「……絆月」
「えっ」
夢なら別にいいかと思って、夢のくせにまだ眠たいから、俺は絆月の名前を呼びながら絆月を布団の中に引き寄せた。
すると、やっぱり夢だからと言うべきか、俺に布団の中に引きずり込まれた絆月は顔を耳の先まで真っ赤にして困惑していた。
昔ならともかく、今の絆月がこの程度のことでこんな顔をするわけが無いだろう。
だって、夢じゃない最近のリアル絆月はめちゃくちゃ怖いし。
……まぁ、俺はそんな怖いと思ってしまっている絆月のことを昨日はめちゃくちゃ意識してしまって、夢に出てくるほどの意識をしてしまっていたわけなんだけどさ。
と、とにかく、話を戻すと、絆月は昨日だってあんなに自分の体を俺に押付けてきたりしてたのに、全然恥ずかしがる様子が無いどころか、普通に嬉しそうにしてたし、こんなことで今更恥ずかしがるわけが無いんだよ。
「し、慎也? ね、寝ぼけてるの?」
「……寝ぼけてないよ」
そう言いながら、俺は絆月のことを抱きしめながら夢の中なのに眠いから二度寝をすることにした。
昨日絆月を抱きしめた時の体の暖かさを頭が覚えているのか、夢の中なのに絆月の体はめちゃくちゃ暖かくて、直ぐに二度寝をすることが出来た。
「し、慎也、ダメだよ。もう起きる時間だよ!」
せっかく二度寝が出来たところだったのに、恥ずかしそうに顔を赤くした夢の絆月にそう言われて俺はまた起こされてしまった。
なんで俺は二度寝したいって思ってるのに、夢の中の絆月が起こしてくるんだよ。
「………………痛い」
俺はまさかと思い、頬を抓ってみた。
すると、普通に痛かった。
……つまり、ここは夢の中の世界じゃない。
それを理解した瞬間俺は絆月から離れるためにベッドから飛び起きた。
「待って、待ってください……な、なんでここにいる?」
色々と考えに考えた結果、まだバクバクとうるさい心臓をそのままに俺はそう聞いた。
「……お義母さん、急な仕事場からの連絡でいつもより早く家を出なくちゃならなくなったみたいだから、私が慎也を起こしに来たの」
すると、絆月は未だに顔を赤くしたまま、そう言ってきた。
いや、起こしに来たって……俺、別に目覚ましで起きられるからな?
と言うか、なんで絆月はそんなに恥ずかしがってるんだよ。
昨日は全くそんな様子なんて見せなかったじゃないかよ。
……ただでさえ意識してしまっていたのに、余計に意識してしまうじゃないかよ。
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