第26話

「変なことはダメだって言っただろ」


「変じゃないよ。ただのスキンシップだよ。ほら、ね? 私のこと、嫌いじゃないんでしょ? 慎也の為にスタイルにも気を使ってるんだから、抱き心地もいいと思うよ?」

 

 スキンシップと言われたら確かに変なことでは無いけど、スタイルがいいから抱き心地が良いって……。

 俺が色々と考えていると、絆月は焦れったくなってしまったのか、絆月の方から俺に抱きついてきた。

 そして、昔を思い出すように強く俺を抱きしめてきたかと思うと、そのまま匂いまで嗅いできた。


「な、何してるんだよ!」


 心の準備をしていたのならまだ良かったものの、なんの準備もなくいきなり抱きつかれた俺は少し強く反応してしまった。

 異性としては好きでは無いとはいえ、絆月が自分で言っていた通り、絆月はスタイルがいいし、これは仕方がないと思う。

 割と最低だと思うけど、好きな相手じゃなくても、こうなってしまうのが男ってやつだと思うから。


「何って、慎也の罰ゲームだよ。そんなことより、早く慎也の方からも抱きしめてよ」


「早くって……そ、そもそも、まずは匂いを嗅ぐのをやめろよ」


「やだ」


 俺がそう言うと、絆月は恥ずかしげもなく一言そんなことを言ってきた。

 やだって……子供じゃないんだから。

 

 そう思っていると、絆月は俺から離れないとばかりに抱きしめる力を強くしてきた。

 

「ちょっ、わ、分かったから、もうやめろとか言わないから、力を強くするな」


 器用にも俺が痛くないように調整をしてくれているのか、その辺は大丈夫なんだけど、絆月の体が俺に強く当たるのが全然大丈夫じゃないんだよ。


「どう? 慎也」


 俺がそう言うと、絆月は力を緩めることなく、そう聞いてきた。


「何がだよ」


「私の体、気持ちいいでしょ?」


「ッ、な、何言ってるんだよ」


 ……この感じからして、分かっててやってるってこと、だよな、これ。

 

「ふーん。……慎也が分からない振りをするのなら、それでもいいよ。でも、ちゃんと罰ゲームはやってもらうからね? ほら、私のこと、早く抱きしめてよ」


「……分かったよ」


 確かに、スキンシップと言われたらスキンシップだし、と無理やりにも自分を納得させて、俺はそう言った。

 どうせ絆月の言う通りにしないと、絆月は離してくれないだろうし、これは罰ゲームなんだ。仕方ない。

 俺は負けたんだからな。……勝てばこうはならなかったんだから。

 

「こ、これでいいか?」


 そう思いつつ、俺は自分で言った通り、俺の方からも絆月を抱きしめた。


「ダメ。もっと強く」


「強くって……痛くなるぞ」


「大丈夫だから。そっちの方が慎也がもう私から逃げないって思えるから」


 意味が分からない、けど、そんなことを言われたら悪いのは俺だし、断れないだろ。……そもそもこれは罰ゲームなんだし、俺に断るなんて選択肢は無いんだけどさ。


「……分かったよ。……これでいいか?」


「うん! しばらく、こうしててね」


 絆月は俺がもう抱きしめるのをやめようとしてるのが分かったのか、念を押すようにそう言ってきた。

 抵抗……は絆月の雰囲気が変わった様子を思い出して、何もしなかった。

 多分、これでいいはずだ。

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