第24話

「お邪魔します」


「……」


 絆月を家に入れた。

 ……そこまではいいんだが、俺は絆月が家に入る時に言った言葉に唖然としてしまった。

 いや「お邪魔します」なんて言葉はいくら幼馴染とはいえ、人の家に入るんだから、当たり前のことなんだけど、インターホンの時同様この前は何も言わずに入ってきたじゃん。

 ……いや、あの時「お邪魔します」なんて言われたら、それはそれで俺の恐怖心が増長してただろうけど、それは置いておいて、なんで今回はあの時みたいに何も言わずに入るんじゃないんだろうな。

 そんな常識があるのなら、あの時も勝手に入らないで欲しかったんだけど。

 ……まぁ、母さんが許してたって理由があったからか。うん。そう思っておこう。


「どうしたの? 慎也」


「……なんでもない。リビング……いや、俺の部屋に行くか」


 絆月に対してそういう感情は少なくとも今のところは無いけど、一応女の子だし、自分の部屋に誘うのは不味いと思ってリビングに誘おうとしたんだが、やめた。

 だって、今更だし。

 3年前のことは置いておくとして、この前普通に俺の部屋に何も言わずに入ってきてたしな。


「うん」


 そんなことを思いながらも、絆月が頷いたのを確認した俺は、絆月と一緒に自分の部屋に向かった。

 ……心做しか、絆月の表情がいつもより嬉しそうに見える。

 

「適当に座ってくれたらいいぞ」


 部屋に着くなり、俺はそう言った。

 すると、一応椅子もあったのに、絆月は迷う素振りすら見せずに真っ先に俺のベッドの方に向かったかと思うと、そこに座った。

 よく考えたら、3年前もそこが絆月の定位置だったか。

 あの時は並んでくっついて座ってたけど、今は流石にお互い成長してそんな座り方をする気にはなれないし、俺は普通に椅子に座るか。


「慎也、こっち、でしょ?」


 そう思って、絆月がいる方を横目に俺は普通に椅子に座ったのだが、絆月はそんな俺を確認するなり直ぐに自分の隣を手でポンポンとしながら、そう言ってきた。


「一応聞いておくんだが、絆月は何かしたい事とか、あるか?」


 そんな絆月の言葉を無視して、俺はそう聞いた。

 ゲームに誘おうとは思っているが、もしも絆月に何かしたい事があって俺の家に来たのなら、そっちを優先したい。

 別に俺もどうしてもゲームをしたいってわけじゃないし。

 ただ、何もせずに一緒の空間にいるのは気まずいだろ。……いくら幼馴染とはいえ、3年は関わってなかったんだし。


「取り敢えず、昔みたいに隣に座って?」


「……別にここでも問題ないだろ」


「ダメ。早く来て?」


 ……もうお互い色々と昔とは違うんだから、何もかもが同じって訳にはいかないだろ。

 いや、俺もただ隣に座るだけだったら正直別にいいんだけど、再会してからの絆月の様子を見ているに、くっついてくるところまで昔と同じようにしてくるような気がして、行かない方がいい気がするんだよ。

 

「なんで来ないの? 私の事、嫌いな訳じゃないんだよね? なら、なんで?」


「……くっついてきたりしないか?」


「しないって言ったら、来てくれる?」


「……それなら、まぁ」


「なら、しないから、来て?」


 このままじゃ話が進まないし、絆月がそう言ってくれるのなら、ってことで俺は座っていた椅子から絆月の隣に移動した。

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