第23話
「一応聞いておくんだけど、今日は流石に母さんには何もお願いされてないんだよな?」
もうそろそろ家が見えてくる、といった場所で俺は絆月にそう聞いた。
昨日は帰るのが早かったから、昼を作って欲しいと母さんが絆月にお願いをしたのであって、今日は普通の帰る時間だったし、何も無いとは思うけど、一応、だ。
まぁ、もう突き放そうとなんてしてないんだし、仮に何か頼まれてたとしても一応大丈夫っちゃ大丈夫なんだけど……昔ならともかく、今の絆月は何があるか分からないからな。
……俺のせいだけど。……そう、俺のせいなんだよな。
絆月が俺の事を好きと言っている以上、俺は絆月をヤンデレみたい……というか、ヤンデレにしてしまった責任を取るべきなのかな、なんて思ってしまう。
「うん。今日は何もお願いされてないけど、慎也のお家、お邪魔していい?」
「……ちなみになんだが、ダメだって言ったら大人しく自分の家にいるのか?」
さっきも思った通り、絆月が来ることに問題なんてもう無いんだけど、興味本位で俺はそう聞いた。
「ダメなの?」
すると、可愛らしく首を傾げているはずなのに、絆月は確かな圧を持ってそう聞いてきた。
「い、いや、仮に、仮にダメだって言ったら、どうするのかと思って、聞いただけだよ。……もちろん、絆月が来たいのなら、好きに来てくれたらいいから」
そんな絆月の圧にビビってしまった俺は、直ぐにそう言った。
「うん。じゃあ行くね」
「あ、あぁ、分かったよ」
……こんな怖い思いをするくらいだったら、変な興味なんて持たなかったら良かったな。
いや、でも、こうなるとは思わないじゃん。だって、一応聞いておくんだけど、って俺ちゃんと言ってたのに。
……まぁ、察するべきだったか。絆月がちょっとやばくなってしまっているのは再会したあの日から分かってたことだし。
そんな後悔を胸に抱きながらも、絆月と一緒に家に帰っていると、直ぐに家が見えてきた。
さっきの話をした時点で近かったしな。
「後で行くね、慎也」
「待ってるよ」
そして、そんなやり取りをして、お互い自分の家に帰った。
今更なんだけど、俺の家に来たところで絆月は何をするんだろうな。
遊べるようなものなんて……別にゲームがあるか。
最近はあんまりやってないけど、一応あったな。
……昔はトランプとかをして絆月と遊んでた記憶があるんだけど、流石にもうトランプをしたいだなんて思ってないだろうし、まだゲームで遊ぼうって言った方がマシだよな。
そんなことを考えながらも、服を着替えて、適当にスマホを弄りながら絆月のことを待っていると、インターホンが鳴った。
絆月以外の誰かが来る予定なんてないし、十中八九絆月で間違いなんだけど、お前、合鍵持ってるじゃん。
わざわざ鳴らす意味、あるか? ……いや、普通はプライバシー的に鳴らすべきなんだろうけど、一回俺が居留守を使おうとした時、普通に入ってきてたじゃん。
「どちら様ですか」
そう思いつつも、一応、俺はそう聞いた。
「慎也、来たよ」
すると、予想通り絆月の声が聞こえてきた。
「今開けるよ」
3年ぶりに自分の意思で絆月を家の中に入れた。
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