第22話
放課後になった。
休み時間の度に俺が逃げるように教室を出ても絆月が追いかけてきて、目立つことになったけど、それはもういい。
今更絆月が学校では関わらなくなってくれたって、もう色々と遅いと思うし、諦めた。
昼休みの時に諦めたら楽になるんじゃないかな、なんて思ってたけど、実際少しは楽になったと思う。
そう思いながらも、俺はまたそそくさと教室を出て、家に帰ろうとしていた。
友達を作ろうと周りを見ても、みんな既に作ってある友達と一緒にいるし、俺の入り込む余地なんて全然無さそうだし、だったらさっさと帰るに限る。
……もう絆月と学校で関わらないってのは諦めたんだし、案外絆月に「一緒に帰ろう」って言うのも悪くはなかったのかもな。
どうせ家は隣なんだし、俺のせいで失った幼馴染との3年間を取り戻すのもいいと思うし。
……まぁ、もう靴を履いて、学校を出たところだから、戻ってまでわざわざ絆月を誘うのも面倒だし、今日は……いや、一応メッセージでも送ってみるか。
昨日は絆月から逃げるように一人で帰ろうとしたら、絆月が追いかけてきていて、雰囲気が普通に怖かったし、一応、断られたとしても誘っておこう。
【今、ちょうど学校を出たところなんだけど、出来たら一緒に帰らないか?】
そう思って、俺はそんなメッセージを送った。
【帰る。待ってて。すぐ行く】
すると、相変わらずと言うべきか人に囲まれていたし、直ぐに返信は来ないと思っていたのだが、本当に驚くほど早く返信が帰ってきた。
「お待たせ、慎也」
メッセージを確認するなり、俺も直ぐに返信を返そうとしたのだが、文字を打っている途中に後ろからそんな声が聞こえてきた。
「……早過ぎないか?」
考えるまでもなく、絆月の声だ。
「うん。すぐ行くって言ったでしょ?」
「……それはそうなんだが、いくらなんでも俺が返信を打つ暇すらないのは異常だと思うんだが。……いや、別にいいんだけどさ」
絆月が色々とヤバいっていうのはもう嫌という程分かってるしさ。
「慎也の方から誘ってくれたのが嬉しかったの。……また教室をそそくさと出ていっていたし、また私を置いて行こうとしてるのかなって思っちゃってたから、余計に嬉しかったの」
顔を赤らめながら、絆月は周りの目なんて気にせず、そう言ってきた。
めちゃくちゃ可愛いとは思うんだけど、今の俺の感情的には安堵の気持ちが強かった。
だって、実際置いていく……とは少し違うかもだけど、直前まで一人で帰ろうとはしてたし、誘ってよかったな。
これだけ近くにいたのなら、絶対また怖い思いをするところだったと思うし。
「なら、良かったよ」
「うん」
そんなやり取りをしつつも、俺は絆月と一緒に家に帰った。
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