第17話
学校に着いた。
もちろんと言うべきか、絆月と一緒に、だ。
手は繋いでいない。
そういう約束だったからな。
ただ、やっぱり絆月は見た目美少女で入学式代表にもなってたくらいだし、凄く目立つ。
実際今も教室に行くまでの道のりでめちゃくちゃ見られてる。特に俺への怪訝な視線だったり、嫉妬の視線が多い。
昨日の絆月の暴走は伝わってないのか? もし伝わっているのだとしたら、俺にもう少し違う感情の視線を向けてきてもいいんじゃないか?
明らかに昨日の絆月の様子はおかしかっただろ。
「ん、もう着いちゃった……。これからは毎日一緒に居られるとはいえ、授業の間であっても、慎也と離れ離れになっちゃうのは嫌だな。……早く、席替えにならないかな」
そう思っていると、横からそんな声が聞こえてきた。
……いや、別に席替えをしたって俺と近くの席になるとは限らないだろう。
というか、近くにならない可能性の方が普通に高いと思うぞ。
「……それじゃあ、俺は自分の席に行くから」
そう言って、絆月から離れた俺は、自分で言った通り自分の席に座った。
そして、今度こそ隣の席の人に話しかけようとしたのだが、さっきまで隣の席には座っている人がいたのに、何故か居なくなっていた。
どこに行ったんだ? と少し首を動かすと、それはすぐに分かった。
理由は簡単で、びっくりするくらい絆月の近くに人が集まっていたからだ。
そこにはさっきまで隣に座っていたはずの人まで見える。
……人気者すぎない?
いや、美少女だし、入学式代表で頭も良いし、それだけを見たら別に不思議なことでは無いんだけど、教室の人達は昨日の絆月の様子を忘れたのか?
噂になってなくて、廊下で色々な視線を向けられたのはまだ分かるけど、教室の人達は大体知ってるだろ。昨日の絆月の様子をさ。
まぁいいや。
むしろ俺は絆月がみんなに引かれてなくて良かったよ。
それより、俺は友達を作りたいんだ。
隣の席の人は居なくなってたし、後ろの席……の人も居ないな。
え? 後ろの席の人も絆月のところに行ってるのか? それとも、まだ登校してきてないだけか?
そう思って、もう一度絆月の方に目を向けたんだが、その瞬間、また絆月と目が合った。
流石に学校ということもあって、昨日急に絆月が家に来た時に目が合ったような恐怖は無い。
ただ、なんであんなに人に囲まれている中で俺の方を見てるんだよ。
……いや、別にさっきは目なんて合わなかったし、たまたまか?
そう思っていると、何故か絆月がこっちに近づいてきた。
その瞬間、俺は直ぐに絆月から目を逸らして、こっちに来ないでくれ、という雰囲気を醸し出した。
別にもう絆月を無理して突き放そうとはしてないけど、また昨日みたいに変なことを言われたら、更に友達を作りにくくなってしまうし、嫌なんだよ。
「あっ」
運がいいのか、絆月が俺の元に来る前に、チャイムが鳴った。
当然、チャイムの音を無視して俺の方に来る訳にもいかず、絆月は残念そうにしつつも自分の席に戻っていき、絆月の周りに集まっていた人たちも自分の席に戻って行った。
そして、担任となる先生が教室に入ってきた。
一応、なんとやくさっき居なかった後ろの席の人が遅刻なのか、絆月の所にいたのかを確認するために後ろを振り向くと、普通に女の子が居て、俺がいきなり後ろを振り向いたことを不思議そうにしていた。
俺は一言だけ、何でもない、的なことを伝えて、もう一度前を向いた。
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