第10話
「慎也はさ、中学校で、どんな感じだったの?」
相変わらずと言うべきか、心を痛くしながらも、俺は絆月を無視しながら、自分の部屋に来ていた。
「彼女とか、出来た? 出来てないよね? 慎也には、私がいるもんね?」
隣で圧をかけてきている依存体質な幼馴染がいるけど、当然それは無視だ。
流石にずっと無視をしてくる奴に話しかけるほど絆月も暇じゃないだろうし、メンタルも強くないだろうから、こうしていれば俺の事を嫌ってくれて、自分から離れていってくれるだろうと思って。
「ねぇ、慎也、なんで何も言ってくれないの? まさか、彼女、出来たの? 違うよね? そんなわけないよね?」
……無視、で大丈夫なんだよな?
なんか、絆月の雰囲気が危うくなってきてる気がするんだけど、気の所為、だよな?
「……そう、答えてくれないんだ」
「い、いや、いない! 別に絆月に関係なんて一切ないけど、彼女がいた事なんて無いから!」
無視をし続けるつもりではあったんだけど、絆月の圧に負けてしまった俺は、そんな返事をしてしまっていた。
「なんだ。それなら良かったけど、最初からそう言ってよ。私、勘違いしそうになっちゃったよ」
「あ、あぁ、そう、だな……」
さっきまでは無視しようとしてたから、返事なんて出来なかったんだよ。
……今だって、怖くなってしまって返事をしてしまっただけであって、次からはちゃんと無視し続ける予定だし。
「まぁ、慎也に私以外の女っ気がないのは分かってたんだけどね」
……正直、凄く言い返してやりたいけど、次はちゃんと嫌われるために無視をするって決めたし、俺は何も答えない。
一応、女の子の友達は居たからな? ……まぁ、全然恋愛感情はお互いに無かったんだけどさ。
絆月を突き放した時の罪悪感が残っていて、女の子をそういう対象に見れなかったんだよな。
……まぁ、あの時はもう絆月は俺なんか全く気にもしていないだろうと思ってたんだけど、今も依存……というか、なんならちょっと病んでしまってるもんな。
一応、確実にそこ以外はいい方向に進んでるって断言できるんだけどな。
「そういえば、慎也はさ、学校で私のことを思い出したりしてた?」
そんな言い訳を頭の中で思っていると、絆月はそう聞いてきた。
罪悪感的な意味で、結構思い出してはいたよ。
無視する予定だから、言わないけど。
「私はね、慎也のことを考えてない時間が無いってくらい、ずっと慎也のことを考えてたよ。もちろん、家に帰ってからもね」
……無視だ無視。
なんかとんでもないことを言ってる様な気がするけど、無視に決まってる。
「ねぇ、慎也? なんでまた、無言になっちゃったの? もしかして、慎也もずっと私のことを考えてくれてたの?」
これだけ無視してるんだから、そろそろ絆月も諦めて帰ってくれていいんだけど、やっぱり、帰らないのか?
「もしかして、もう私たち、両思いってことでいいの?」
……ん? 思考が飛躍しすぎてないか? 俺、何も言ってないよな?
「じゃあ、直ぐにお義母さんに報告しないと!」
「ちょ、待て待て待て待て!」
「え? 何? 慎也」
「違う。全然、俺たちは両思いなんかじゃないから」
本当にスマホを取り出して、どこかに連絡をしようとしている絆月の様子を見た俺は、咄嗟にそう言って、絆月を止めた。
「そうなの?」
「当たり前だろ」
新入生代表に選ばれるくらい絆月は頭がいいんだよな? なんでそんな発想になってるんだよ。
「そっか。……残念だけど、どうせいつか好きになるんだから、まぁいいや」
「ならないからな?」
「うん。なるよ?」
……もういいや。また無視をし始めよう。……いや、それもダメなのかな。
なんか、なんにも答えてないのに、変な方向にいって、俺が精神的にダメージを受けそうになるから、無視もダメなのかもしれない。
──────────
あとがき。
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