第2話

 俺達は、ピロノ砂漠に到着した。


「以前の調査隊は、ピロノ砂漠の中心部で敗北しました。アレン様は、どこから調査しますか?」


「まずは、外縁部を調査しよう」


「かしこまりました」


 ここで、いきなり中心部に向かうと、負けイベントが発生して強制敗北する。


《ピロノ砂漠の異変調査》は高難易度クエストであり、攻略情報なしでクリアするのは困難だ。


 ピロノ砂漠の外縁部では、サンドワームが生息している。


「ゴオオオオオオオオ!」

 

 俺達を発見したサンドワームは、砂を勢いよく吐き出した。


 砂に当たると暗闇状態になるので、近接攻撃でサンドワームを倒すのは難しい。


「【ファイアボール】」


 しかし、魔法攻撃なら簡単に倒せる。


 サンドワームの弱点は火属性なので、ファイアボールで攻撃した。


 ファイアボールは、火属性の下級攻撃魔法だ。


 ファイアボールはMP消費が少ないので、レベル上げに適している。

 

 レベルが上がるまで、俺達はサンドワームを倒し続けた。





 20分ほどサンドワームを倒し続けて、ようやくレベルアップした。


 アークス・ファンタジアでは、敵を倒してレベルアップすると、その敵からほとんど経験値を入手できなくなるので、1レベルアップしたら、別の敵を倒さなければならない。


 ステラは眷属なので、レベルアップ時に眷属ボーナスが加算される。


 レベル4になったので、オアシスで水を飲んで休憩した。


 オアシスには、換金所が設置されており、モンスター素材を換金することができる。


 サンドワーム素材を換金して、10000Gを入手した。


 換金所で換金可能なのは、価値の高いモンスターの素材だけだ。


 モンスターの素材の大半は価値が低いので、換金することはできない。


「サンドワームの様子がおかしいですね。本来であれば、サンドワームは小さな虫などを食べるモンスターで、人間は襲わないはずです。凶暴化しているのでしょうか?」

 そう言って、ステラは首を傾げた。


 ステラをパーティーに加入させた状態でサンドワームを一定数倒すと、イベントフラグが成立する。


「ああ。現在、ピロノ砂漠の地下で、破滅教団が儀式を行っている。ピロノ砂漠の拡大や、サンドワームの凶暴化は、儀式の影響だろう」


 破滅教団は、その名の通り、世界を破滅させるために活動しているカルト宗教だ。


 ルート次第では、ラスボス勢力になる。


《ピロノ砂漠の異変調査》をクリアするためには、ピロノ砂漠の地下に行かなければならない。


 地下には、ダンジョンを経由して向かうことができる。


 ピロノ砂漠には、ダンジョンが5つ存在するが、そのうち3つは破滅教団によって支配されており、突入すると負けイベントが発生して強制敗北する。


 残る2つのダンジョンの選択で、北ルートと南ルートに分岐する。


 このルート分岐は、その後の世界を大きく変えるので、慎重に選ばなければならない。


 北ルートの場合は、破滅教団の儀式は阻止され、ハッピーエンドを迎える。


 南ルートの場合は、時間がかかりすぎて破滅教団の儀式の阻止に失敗し、ビターエンドを迎える。


 今回は、もちろん北ルートを選択した。


 北ルートの場合は、ダンジョン《嘆きのピラミッド》を攻略しなければならない。


《嘆きのピラミッド》の内部では、ゾンビが生息している。


《嘆きのピラミッド》に足を踏み入れると、早速、ゾンビの大群が現れた。


 ゾンビは非常に数が多く、再生力も高い。


「【ホーリーライト】」

 呪文を詠唱すると、白い光が辺り一面に広がり、ゾンビの大群を消滅させた。


 ゾンビは光属性が弱点なので、ホーリーライトで倒せる。


 レベルが上がるまで、俺達はゾンビを倒し続けた。





 30分ほどゾンビを倒し続けて、ようやくレベルアップした。


 レベル5になったので、探索を開始した。


《嘆きのピラミッド》は上層・中層・下層・最下層の4層に分かれている。


 現在、俺達は上層に滞在している。


 上層から中層に向かうための正規ルートは階段だが、階段は階層ボスであるフォールンナイトメアが守護している。


 フォールンナイトメアは魔法を無効化する敵なので、相性は最悪だ。


 だから、階段は使わず、敢えて落とし穴の罠を踏んで、中層に移動する。


「……ほ、本当に落とし穴で移動するんですか?」

 そう言って、ステラは不安そうな表情を浮かべた。


「ああ。【フェザーサークル】で落下速度を低減するから、落とし穴から落ちても、ダメージを受けることはない」


「……分かりました」


 こうして、俺達は落とし穴で中層に移動した。





《嘆きのピラミッド》中層はボーナスステージであり、通常の敵モンスターは出現しない。


 中層には多数の宝箱が設置されており、最大6つまで開けることができる。


 6つ開けると、宝箱は消滅し、下層への階段が出現する。


 まず、俺は大広間の、最も豪華な宝箱を開けた。


 宝箱の中には、土のキーストーンが入っていた。


 キーストーンは重要アイテムであり、7つ集めると、ラストダンジョンへと至る扉が開かれる。


 続いて、大広間の、2番目に豪華な宝箱を開けた。


 宝箱の中には、世界樹の杖が入っていた。


 世界樹の杖は、エルフ専用装備である最高級の杖であり、エルフが装備すると、精霊術師に転職することができる。


 土のキーストーンや、世界樹の杖は、この宝箱が唯一の入手手段だ。


 早速、世界樹の杖をステラに装備させ、ステラを精霊術師に転職させた。


 精霊術師は最上級職であり、非常に優秀なジョブだ。


 6つの宝箱のうち、土のキーストーンと世界樹の杖までは、どんなプレイヤーでも固定だが、それ以降の4つは意見が分かれる。


 今回は、ステラの装備を揃えることを優先しよう。


 隠し通路を抜けて、俺達は小部屋に向かった。


 小部屋には、かつてピロノ砂漠を支配していた、エルフ王族の装備が揃っている。


 俺は宝箱を3つ開けて、精霊女王のドレス・精霊女王の靴・精霊女王のティアラを入手した。


 早速、ステラに装備させた。


「……ど、どうですか? 似合ってますか?」


 精霊女王のドレスは、胸元が大きく開いた、露出度の高い格好だ。


 ステラは頬を赤く染め、恥ずかしそうに両腕で胸元を隠していた。


「ああ。よく似合ってるよ」


「……ありがとうございます」


 最後に、俺は宝箱を開けて、龍の宝珠を手に入れた。


 龍の宝珠は希少なアイテムであり、この宝箱入手を含めて、世界に2つしか存在しない。


 本来であれば、龍の宝珠を入手するためには、最難関ダンジョンの1つである《龍山ドラゴニア》を攻略しなければならないのだが、ここの宝箱で入手しておけば、《龍山ドラゴニア》をスルーして、イベントフラグを成立させることができる。


《龍山ドラゴニア》は、凶悪なドラゴンが多数出現する危険地帯であり、賢者率いる最強パーティーでもセーブ&ロード必須だ。


 今は、セーブポイントが使用できず、ノーセーブで攻略しなければならないので、絶対に《龍山ドラゴニア》には行きたくない。


 宝箱を6つ開けたので、下層へと続く階段が出現した。


 中層の階層ボスは、ダークエレメンタルだ。


「ようこそ、女王陛下。我々は、新しい女王陛下を歓迎いたします。どうぞ、お通りください」


 ダークエレメンタルは、ステラを見て一礼して、道を譲った。


 ダークエレメンタルは強敵だが、精霊女王シリーズを装備した精霊術師がいれば、戦闘を回避することができる。


 こうして、俺達は階段を降り、下層に向かった。





《嘆きのピラミッド》下層では、マミーとアースエレメンタルが生息している。


 このうち、アースエレメンタルとの戦闘は回避できるので、マミーを倒せばいい。


 早速、マミーの群れが現れた。


「【ホーリーライト】」


 ホーリーライトを浴びて、マミーは一撃で消滅した。


 マミーはゾンビの上位種だが、倒し方は変わらない。


 レベルが上がるまで、俺達はマミーを倒し続けた。





 15分ほどマミーを倒し続けて、ようやくレベルアップした。


 マミーは上位種なので、ゾンビよりも経験値が多い。


 レベル6になったので、俺達は階段に向かった。


 下層には、階層ボスは存在しない。


 その代わり、最下層へと続く階段は、魔法鍵によって封印されていた。


 アンロックの杖を使用して、魔法鍵を開けた。


 こうして、俺達は階段を降り、最下層に向かった。



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