絶対に間に合わないけど 絶対に間に合わせないといけない話

モトミヤ ヒロ

走れワタシ

今日は4限まで授業がある。

つまり、下校するのは16時45分ということだ。

それは不味い状況だ。非常に。


本日18時からは推しアイドルの卒業コンサートがある。

首都圏に住んでいない私が現地参戦できるはずはなく、

地元の映画館からの参戦となる。


75分もあれば、余裕で間に合うと思うだろうか?

学校から駅まで約400M、駅から自宅まで約200M、自宅から映画館まで約1500M

その間、乗り換え1回、県またぎ1県

待ち時間も含めると、かなりギリギリのタイムスケジュールになる。


開演時間に遅れるなど、言語道断

一分一秒、見逃すことは許されない

絶対に遅れることができない下校が始まった。



第1関門は学校からの脱出

あいにく友人に捕まる心配も女学生から声をかけられるリスクも、私には存在しない

ゴールへと向かうリオネル・メッシのように人混みを搔い潜り、門を出た。

理想的なタイムを記録、この調子でいけば問題なし


第2関門は駅に向かい、電車に乗ること

ここが一番の鬼門になる。

冒頭述べたように授業が終わるのは 16時45分

乗らなければならない電車は    16時52分発   その間、7分

もし同校の生徒に「4限終了後、52分発電車に乗ってください。」と聞けば、

「いや、それは無理でしょう。」と100人中100人が答えるだろう。

だが今日に限っては99人、私は「余裕です。」と答える。

周囲の「なんだこいつ」という目線を感じながら、脇目も振らず一心不乱に走る

その姿はながら親友のもとへと向かうある男のようだ。

元陸上部の私にとって、問題なのは速度ではなかった。

「カーンカーンカーン」と甲高い音が風に流されて聞こえてくる。

そう、問題なのは黄黒の縞々模様のこいつ、踏切である。

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