第13話 終結
アルが目を覚ます。
窓から光が差し込み室内を照らしていた。
見覚えのある場所、どうやらここは僕の寝室だ。
いったいどうしたんだっけ、どれくらい眠っていたんだ?
ふと気づくと、右手をセシルに強く握り締められている。
ベットに顔をのせ眠るセシル。その隣には王とサラも仲良く並んで眠っている。
少し動くとお腹に痛みを感じる。
そう言えば、あのときセシルを
「ん……」
セシルが身じろぎする、目を覚ましたようだ。瞳がゆっくりと開いていきアルを
「アル!」
いきなり勢いよく抱きしめられ、アルは後ろに倒れそうになる体を腕で支えた。
「アル、アル、よかった」
セシルの興奮した声に、王とサラも目を覚ました。
「おお、目を覚ましたのか」
「よかった、本当に」
王とサラも
「いたた……」
傷がその重みに悲鳴を上げ、アルが顔をしかめる。
「ごめん」
「すまない」
「ごめんなさい」
三人は同時に謝りながら、
アルが
マーヤは
天井も床も壁もすべてが石で造られた部屋、窓はなく
アルを刺したあと、
もうすべて終わりだ、もう一生外の景色は見れないだろう。
マーヤは
生きる意味さえわからなくなり、
たった一つ、アルのことだけが気がかりだった、あの子は大丈夫だろうか。
マーヤは自分の手を見つめた。
あのとき私はこの手で……。
そのとき、扉が開く音がした。誰かがこちらへ近づいてくる。
「……母上」
アルが
「アル! 無事だったのね」
マーヤは
「本当にすまなかった、まさかアルが飛び出してくるなんて。
おまえを刺すつもりなんてこれっぽっちもなかったんだよ、許しておくれ。
母さんはあまえを愛してる。
アル、おまえは優しい子だ。アルは母さんを見捨てたりしないよね?」
「母上、あなたが少しでも人の心を持っているなら、今までのことを悪かったと思うなら、ここで反省してください」
冷たく突き放すアルに、マーヤは信じられないという表情をして
「何言ってるの? 私は悪いことなんてしていない、ただこの国を
あの二人は人が良すぎる……。アル、国を治めるということは時として悪者にならなければいけないものなの。
あなたたちにそれができて?」
何の反省もせず、悪びれなく訴えるマーヤをアルはきつく
「あなたのしてきたことが正しいというのなら、なぜ
母上は民の顔を見たことは、声を聞いたことはあるのですか?
上から見下ろし、すべてを治めたように思っていては本当の王にはなれない。
本当の王とは、民と同じところに立って、同じ痛みや悲しみを分かち合い、共に生きていける人のことです。
あなたは決して王などではない!」
マーヤはその場に力なく
「母上、もう何も言わないでください。これ以上あなたを嫌いになりたくはない」
アルは苦しそうにマーヤから顔を
マーヤは頭を抱え、叫ぶ。
「いや、アル、助けて、母さんを助けて!
おまえは私の息子だろ!」
取り乱し泣き叫ぶ母を横目に、アルは静かに告げた。
「さよなら……母さん」
マーヤの
「アル、大丈夫か?」
心配そうな顔を向けるセシルに対してアルは
「大丈夫、前からわかってたことだから。母上はどうしようもない人だって」
その言葉とは
「あれ、おかしいな……」
涙を押さえようとするアルをセシルが抱き寄せた。
「馬鹿、我慢すんな」
セシルがアルの頭を優しく撫でるとアルの瞳からは涙が次々
「よく頑張ったな、アル」
アルはセシルにしがみつき、泣いた。
母への感情や想いを
アルを優しい
夕日が照らし、辺りを赤く染める中、二人の影は一つとなり細く長く伸びていた。
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