第12話 悲劇
しくじった、全てバレてしまった。
先ほど
まずい……しかしまだ
あいつらみんな
マーヤはここにきてもなお、自分の勝利を疑っていなかった。
彼女にとって自分以外はすべて自分の欲望を満たすための
自分は絶対的な支配者として
あとはセシル、貴様だけは
それだけはやり
セシル、どこだ、逃がさない。
マーヤは変装して町の人込みに紛れていた。
この辺りにセシルがいると配下から連絡があったのだ。
あいつの
今度こそ、私がこの手で始末してやる、それが一番確実だ。
いた!
マーヤはスラム街から出てきたセシルを発見した。
セシルは一人で
今度こそ、
マーヤはゆっくりと確実にセシルとの距離を詰めていく。
二人の距離が数メートルになった。
「さようなら、王子」
マーヤはセシル
アルは必死にセシルを探していた。
「待ってください、そんなに走っていかれたら危ないです」
アルの後ろを懸命についてくるトーマス。
彼はアルの
「僕より今はセシルが危ない、トーマスもセシルを探してくれ」
アルは町を駆け抜けていく。
スラム街に行ったほうがいいかと考え、そちらへ目を向ける。
そのときマーヤの姿が目に入った。
「いた!」
アルが急に立ち止まる。
マーヤの手にはナイフが光り、彼女の視線の先を辿るとそこにはセシルの姿があった。
アルの心臓が大きく跳ねた。
いけない、駄目だ、それだけは。
アルの足は考えるより先に動いていた。
セシルはロジャーとポールのことを
自分も危険だが、アルのことも心配だった。
自分の母親があんな人間だと知って、どれだけアルが傷ついているか、傍にいてあげたい。いてもたってもいられなくて、城へと急いでいた。
スラム街から町へ出ると、遠くの方でアルがこちらへ走ってくるのが見えた。
こんなところで一人で危ないじゃないかと、セシルは
彼は自分が王子だという自覚がないのだろうか、いつも気軽に町やスラムに足を運んでくる。
セシルはアルを守ってあげたいという思いが日に日に強くなっていくのを感じていた。
アルは
え? 何で、どうした?
そのとき、目の前でアルは誰かに刺された。
今まで自分がいたその場所で刺されたのだ。
「え……」
セシルは固まってしまい、動かない。
刺した相手もしばらく動かなかったが、はっとしたように今度はセシルの方へ向き直り、もう一度セシルを刺そうと襲い掛かってきた。
が、トーマスがそれを
刃物をもった人物を
通りすがりの女性が事態に気づき悲鳴を上げる。
アルは地面に倒れた。
付き添っていた
刺した人物は護衛たちに取り押さえられ、
アルはすぐに近くの
「ア……アル……」
セシルはアルの名を繰り返すだけで動かない。
見かねた護衛がセシルを立ち上がらせると、アルの運ばれた診療所へと連れていった。
アルは
王とサラが心配そうにセシルを出迎えた。
セシルがまだ
「アルはきっと大丈夫。
……医者が言うには今晩が
アルの傷はそう深くはなく、命に
しかし、刃に毒が塗られていて、その毒がアルを
あとは本人の体力が回復するのを待つしかないと医者は告げた。
セシルはベッドで眠るアルの傍に行き手を握った。
「アル……ごめん、俺のせいで。
死なないでくれ、まだ俺はおまえに何も返せてない。
まだまだおまえと一緒にやりたいことがたくさんあるんだ。この国をいい国にするんだろ? 一緒に夢を語ったじゃないか。
おまえにしかできない、頼む……目を覚ましてくれ」
セシルは祈った、今できることはそれしかなかった。
王とサラはそんなセシルに寄り添い一緒に祈った。
三人は夜が明けるまでアルの傍にいた。
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