道中エンカウント⑤
/*今回から舞野の視点に戻ります*/
「マスター、あと90秒で図書館に到着いたします」
「オーケー、わかった。ヌイ!!もうそろそろだ!離脱の準備!!」
ヌイに前線を任せている間、俺はある物を作成していた。
それは現実で見た物よりも大きく、それでいて繊細な機械でできている。
それは武装というにはあまりにも銃口が大きく、弾丸を発射する隙間もない。
「…スーさん、これってほんとに秘密兵器なんすか…?」
「…ちょっとたよりない…」
「まーそうだな、不安に思う気持ちも理解できないでもない」
現在の車の武装はバリアを残してすべてこいつの為にリソースを割いているのだ。
先程まであったガトリングは無くなり、舞台照明のような形をした円柱の機械によって車の背面は埋め尽くされている。その円柱には蓋が取り付けられており、今は閉口状態だ。
この形は昔見たアニメの赤外線を照射する装置にちょっとだけ似ていると思ったりもしたが、実際の性能は全く別物だ。
「いやぁ…こんなものまで無から生み出せるなんて…ほんと、スーさんのスキル【クリエ】ってなんなんすか?」
「それについてはおいおい説明してやるよ」
今回のこれについては、高校の夏休みにこいつを使った実験をしたことがある。部屋にこいつが置いてあったかもしれないが、最近は見てないからきっと押し入れの奥の方にでもしまってあるのだろう。何が言いたいかと言えば、こいつの構造はちゃんと知っているということ。
シャルに作ってもらったコントローラーでセットアップをして、どんな攻撃をするかを詰めていく。
「シャル、こいつの範囲はどれぐらいだと思う?」
「そうですね、本来の使用用途であれば1kmぐらいでしょうが、今回であれば5kmほど届くでしょう」
「そんなもんを至近距離で受けたら?」
「…どんな効果であれ、相手を無力化するという点においては最高の効果を発揮してくれますよ」
ポチポチとタブレットのような機器を操作していく。俺の知識、シャルの作成、【機械工学】のスキルを合わせて作ったこの機器は広範囲殺傷能力を備えているが、別に俺はあいつらを殺したいわけではない。
むしろ取れるだけ情報は欲しいし、スキルも欲しい。先程シャルに聞いたところ、スキル解析はまだ全部終わっていないみたくなので、全員捕縛してゆっくりと解析をしたいというわけだ。
最後の設定項目をつけ終わり、タブレットの画面を閉じる。あとは俺の号令によってこいつは発動する。
「準備終わり。あとは…」
「スー!!!!!!」
突如何かの黒い影が俺に飛来した。
それは、先程まで前線で活躍していたヌイで、一直線に俺に飛び込んでくる。
…いや直撃コースじゃねぇか!!
「おわぁぁぁあぶない!!」
必死にダメージ覚悟でヌイを受け止めようとした。凄まじい速度で人を受け止めた時に入る衝撃はどれほどなのだろう。
俺は怖くなり目をつむってその時を待つ…が、一向に痛みは来ない。
それどころか、やわらかで、シルクのような心地よさが俺を包むこととなる。
「…そんな怖がらなくてもいいんだよ?私がスーを傷つけるわけないんだから」
「……はは、そうだったな、一瞬とはいえ忘れてたな、すまん」
目を開けると、そこにはいつも通りに狂気を孕んだ笑顔を浮かべたヌイがそこにいた。
彼女は俺の存在を確かめるように、ゆっくりと俺の体を撫でていく。俺はというと、そんな彼女の存在が恋しかったのかわからないが、こうやってお互い抱き合った姿勢でいることに安心感を覚えている。
…だがまぁ、人前ということもあって、やんわりとヌイに否定の意志を伝える為に背中をポンと叩く。これは少し前から決めた俺とヌイとの合図だ。
それを受け取ったヌイはしぶしぶと俺から離れて、俺が作った兵器に対して目を向けた。
「これがスーのプランB?…あ、待ってこれ見たことあるね」
「だろ?懐かしいな」
「あとで家に戻ったらほかにいろんなものが無いか探してみよ?」
「…確かにな。使えるものを探す目的というよりかは、掃除がてら思い出話でもするか?」
「…もう完全に二人の世界にはいっちゃった…」
「何回見ても熱い二人っすよねぇ…妬けるっすねぇ…」
おっと、今は戦場なんだ。こういう話はあとでするか。先程閉じたタブレットをヌイにも見せて説明する。
俺が作っていたことを知っていたヌイにもちゃんと知識はあり、簡単に説明するだけで構造を理解してくれた。
さてと…敵の方を観察してみるか。
現在の車両数は8。最初に落としてくれた2両以外はいまだに無事…傷は多々あるものの無事のようだ。相手さんは困惑した様子で車両を固めて上で陣取っているが、そこから動くことは無い。きっとあの陣形が一番慣れている陣形なのだ。
どうやらあちらさんもこの車両の装備に気づいたようで、先制攻撃を仕掛けてやると言わんばかりにこちらの方に銃器を向けてきている。いや攻撃の意志自体は最初からあったが。
別に撃たれても問題は無いが、あまり撃たれすぎて機械が損傷でもしたら大変だ。できるだけ被弾を避けるルート取りをしないとな。
「スー!あれ見て!あれが図書館で間違いないよね?」
「明らかに違う風貌だし…多分そうだな」
「ええ、その通りです。先程アンドロイド二名から聞いた話と同じ建物です」
その建物は、パルテノン神殿とベルサイユ宮殿を合わせたような形をした、近未来の世界にしては古めの建築法を使っているように思えるような巨大な建物だった。
周りにはビルが散乱しているのに、なぜかこの建物だけが石材で作られていることに違和感もあるが…それ以上に、ビルが劣化しているのにこの建物だけは依然として経年劣化の傾向を見せない。
中央にあるドデカい扉の上には何かの彫刻が彫っており、繊細なレリーフが描かれている。その模様は建物全体に張り巡らされているだけでなく、その周りの道にすら描かれているようだ。
そんな時代に見合わないような建物に続く道は、一直線の道路で舗装されている。ここは少し石畳がめくれている部分などがあるために同じ技術で作られたわけではないと考察できるが今は関係ない。
一直線の道路。それが今の俺にとって一番欲しかったものだ。
「よし…シャル!手筈はいいな!キサラギにミコ!あぶねぇから車の中に隠れてろ!ヌイは俺と一緒に耳をふさげ!!一応指向性を持たせてるから大丈夫だとは思うが用心しろ!!」
「「「了解!」」」
車はコンクリートでできた道路から変わり、石畳に変貌を遂げる。そんな俺らに追従するように奴等も追ってきた。
案の定奴等はこの道を通る時に隊列を整えなおさざるを得なくなり、横に広がっていた車両は後ろの方に並びなおすような形になる。
まるで日本の駅のホームのように綺麗に車が整列されてこちらまで走ってきた。気分はホームに電車を止めたばかりの車掌だ。
「もう逃げられねぇぞ臆病者!!さっさと何隠してるのか吐きやがれ!!」
「何を隠してるのか、だってぇ…?」
こいつらが蛮族で、人の物や技術を奪うことで生きてきた奴等というのは確定しているからいいのだが、俺たちにここまで執着する理由は何なのだろうか。
それに、俺らが何かを隠していると思っているところもムカつく要因だ。決めつけで動きやがって、俺らはただの観光客だってのによ。
「なら見せてやるよ…俺が高校の時に作った技術の集大成を!!!」
ガシャン、と閉じられていた機械の蓋が開く。その中には、ライブで使うようなスピーカーを小型化して敷き詰めたようなものがびっしりと取り付けられている。
…後々知ったのだが、この兵器…音響兵器は、現実の装備で言うと『LRAD』というものに酷似しているそうだ。
「食らえや!!!!!!特製音響兵器feat.俺のデスボイス!!!!!!!!!!」
俺が研究がてら作っていたのは、指向性のあるスピーカー。親に連れられて行った美術館にて使われていた技術が気になって調べて作ったこのスピーカーは、特定の方向にしか音を出さない。
なので当然俺の方向に音が聞こえることは無い。いうなればこれは特定の方向に音の波を発射する機械であり、この大きさとなれば威力も伊達ではなくなる。
では、そんなものを俺の【クリエ】で作ったならば?俺がその構造を理解し、神の力として認められたなら?
「 」
「……………えぇ…??」
一瞬、目の前の空間がぐにゃりと歪んだかと思うと、信じられない光景が眼前に広がることとなる。
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