道中エンカウント③

『バリアに解析かけておいてよかったぁぁぁぁ………ともかく、ヌイ!』

「うん!」

『こっちに関しては問題ない!引き続き頼んだ!』

「了解!」



レールガンとやらを撃った時点で既に制圧射撃は消えている。今が反撃の時だ。

既に虫の息となっている運転者の首を飛ばしてから飛び上がる。



向かう先は、車両団の先頭の車。まずはあそこから潰してやろう。


目標着地地点は車のボンネット部分。あそこが一番効率的な一撃を与えられるだろう…現代の車と同じ構造であれば。



「飛んでくるぞぉぉ!!」

「何手ェ止めてやがる!!!撃て!!!!」



また牽制射撃だ。いい加減学ばないのだろうか。

先程と同じように【流体の支配者】で盾を作り出しながら自由落下を続ける。


が、その途中でガィィ!と何かに弾かれた音がして空中で止まる。


どうやら、これは奴らが張っていたバリアのようだ。奴らを守るように薄くバリアが張っていて、私の盾と干渉している部分だけ濃くなっている。



「ナイス、レド!そして女!お前はもうここには入れねぇんだよ!!馬鹿が!」

「…あっそ」



牽制射撃は未だに続いているし、その弾丸はバリアを貫通している。それに奴の言葉。

試しにバリアに指を突っ込むと、あっさりと通り抜けることができた。


…なるほど、対スキルシールドね。これは【毒火花】を受けた時とは違うバリアみたいだ。


だが逆に言えば、物理であれば通るということもわかった。それさえわかれば…



「シャル、例の弾丸って物理?」

「ええ。さらに言えば、確実に相手に当たりつつ威力もそこそこありますよ」

「おーけー」



手甲の形になっていたシャルは、右手だけ銃の形になる。研究室で見た時と同じ様な四角い形をしているが、ところどころ流線形の形が増えている。奴らが使っていた銃の技術が入っているのだろうと予測できる。


私はそれを、バリアを張っている張本人であろう、シドと呼ばれた男に向かって発射した。

狙いは適当でいい。相手が見えなくても、その弾丸は相手を狙える。



「どこ狙ってんだバ…ぐあッ!?」

「レド!?クソ、どういうことだ!?」



まるで吸い込まれるかのように弾丸の軌道が曲がり、レドとやらの頭に直撃する。

…どうやら貫通はしなかったようだが、気絶させることはできたようだ。



バリアが剝がれていくが、未だに私はこのバリアを突破できない。

もしかしてだが…車側のバリアもまだあるのか?重複して発動していたとするなら、まだこの中に入ることはできない。



「…ッ、まだ大丈夫だ!おい、【インシネレータ】はチャージできたか!?」

「すぐ行けます兄貴!完了と同時に発射します!」



盾と射撃によりちゃんと見ることができないが、奴らの言葉からまた何かしらの銃を用意していることはわかる。

そしてそれが、もう数秒後には発射されるであろうことも。


どうしようか、なんて考えている時間は無い。

打開策が思いつかず、妥協策しか思いつかなくても。


私にはまだ、手段が残っている。



「スー!手伝って!」

『了解、相棒!俺が無力化するから飛べ!!』



返事はしない。そんな言葉すら今は惜しいとばかりに全力の跳躍。

力を入れすぎたせいか盾として使っていた【流体の支配者】も一瞬解除されてしまうほどに。



これで稼げる時間はほんの少しだ。この程度の時間でできることは少ない。


一体何をやるのだろう…。


そう思ってスーの方向を見ると、そこには。



完全武装された原型とはかけ離れたモンスターマシンがそこにはあった。


車の上部には奴らが使っていた銃に似ている、ガトリングが2丁。

さらには装甲を増やしたであろう車の側面からも銃と思わしき物が生えている。

また、さっきまでなかったはずのバリアも張られている。そのバリアは奴らが使っている物なんかよりもずっと濃い色を放っている。


そして一番驚いたのは…ガトリング2丁に、キサラギとミコがそれぞれ配置についていたことだ。



『オラッ!お前らも働くんだよ!!』

『アンドロイド使いが荒いっすよォ!!』

『…これ終わったら、ねるから!』



ここからではよく見えない。だが、彼らはやる気満々のようで、既にガトリングはスピンアップしている。

そしてスーはというと…ロケットランチャーのような物を構えていた。

…どこでそんな物を覚えたの?私ちょっと心配になってきた…



『バリアの解析をしたおかげでスキル特化と物理特化の切り替えができることは知ってんだよ…それに近くで両方発動しようとすると干渉して使えないこともなァ!』



スー、キサラギ、ミコそれぞれが一斉射撃をする。その時間は数秒で、私が着地することも考えた射撃。

しかしそんな数秒の射撃でも、ほぼ面制圧と言っても差し支えないほどの弾丸が発射される。



『射撃による物理!そして俺の【スカベンジング】で【毒火花】を入れたロケランによるスキル!お前らはどっちを防ぐのかなぁ!?』

「奴ら撃ってきました!物理に切り替えを…」

「馬鹿が!!そんなことしたら【インシネレータ】まで防いじまうだろうが!」



奴らに残された考える時間は数舜に過ぎない。そんな中で咄嗟の取捨選択として取った行動は…



「とにかく女を落とせ!遠距離は融通が利く!どうせあの距離なら当たるのは数発だ、覚悟決めろ!!」

「ッ!了解です!」



…こいつらは、咄嗟の判断で対スキルのまま行くことにしたようだが…それは正解では無い。

というより、この問題に正解は無い。なぜならどちらを選んだところで敗北を喫することは間違いないのだから。



「チャージ完了!撃ちま…ぐッあぁあ!?なんで全弾当たって…!」

「うぐゥぅぅぅッ!!やっぱりこいつら、どっちも【誘導】スキルもってやがるのか!?だがスキルだったらバリアを通れねぇはずだぞ!!」



ガトリングで撃った弾が意思を持ったように敵の弱点へと吸い込まれていく。

車についているバリア発生装置、銃座、今から撃とうとしていた【インシネレータ】とやらにも。

なお、スーが撃ったロケットはバリアの部分で防がれている。きっと対物理に変えていたとしたら、このロケットが変わりに仕事を果たしてくれていたことだろう。



現在、相手のバリア、無し。牽制射撃、無し。



既に奴らを守る堅牢な壁は取っ払われ、息をつかせぬ攻撃は一呼吸の間に止まった。


私は、奴らの車の上に着地し、自由落下を終える。見事にボンネットの上に着地をした。

着地の衝撃でエンジンか何かがギュルルと嫌な音を立てる。



さて。



「殺しに来たよ」

「…なんだよ、こいつら…」



勝とう。勝って、スーの元に帰るんだ。

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