GenesisCraftのプレイと相棒の受肉

「すげー、転移ってこんな感覚なのかね」

(反応淡泊すぎない?)



目が覚めた後の第一声である。

これが転生物であったら生命の息吹を感じさせる鳴き声を出すはずだったが、ちゃんと声を発することができる。

よかった、こんなタイミングで転生とかしたら速攻で地球に戻る方法を探していたところだ。


まぁそれはそれとして。



「ここどこなんだ…」

(最初に言うセリフ、それにした方がよかったと思うよ絶対)

「じゃあそう言ったことにしてくれ」



周囲を見渡してみると、真っ白な部屋…ではなく、どこかの一室に見える。

一人が住むには少し大きいと感じる部屋の中には、某家具ショップで見たことあるようなソファやテーブルが並べられている。

窓や扉もあるようで、窓には外の光を一切通さない真っ黒なカーテンがかけてあり、扉は装飾が一切なく、ガラスから先のほうを覗くことはできない。

壁には額縁が飾られているが、中には何も入っていない。豪華なのに中身が無いのは、なぜだか少しだけ哀愁を感じさせる。



「俺の部屋よりいいぞ」

(ずいぶんとこざっぱりした部屋だねぇ)

「こういう部屋は嫌いか?」

(いや、今住んでる部屋より全然いいと思うよぉ)

「あ、そですか…」



もうちょっと住みやすい部屋にしようと考えつつ、近くにあったソファに座ってみる。いい手触りのそれは、応接室などで座るようなソファを数段グレードアップしたぐらいのいい家具のようだ。

そう思っていると、目の前にウィンドウが出てきた。



『GenesisCraftへようこそ

主の帰還を心よりお待ちしておりました』

「おぉ、こりゃご親切にどうも」

(従順でかわいいねぇ)



どうやらチュートリアルをしてくれるウィンドウのようだ。多分高性能AIとかが使われてるんだと思う。

いろいろ聞きたいことがあったからこういうのは非常に助かる。



『では、主のお名前と、私の名前をご決定ください』

「ほぉ、俺の名前を決めるのはいいけど、お前の名前を決めないとダメなのか」

『はい。名前入力の後、任意ではありますが性格付与等の設定もできます』



チュートリアルだけかと思っていたが、この感じだと今後も一緒に行動するっぽい、と感じた。

では、気合を入れて名づけをしてやらないといけないだろう。



「名前…名前かぁ…」

(まずは君の名前を決めようねぇ。いつも使っている名前でいいんじゃない?)

「…んん、まあそうだよな…名前変更できるゲームだったらネタに全振りでもいいけど、変更できなかったら怖いし、無難に『スー』とでもしておくか」

『承知いたしました。スー様にて登録させていただきます』



ちなみに、俺がよく使っている「スー」という名前だが、これは俺の名前が舞野 和まいの かずの和→数→スウ→スーといった具合に変化してできた名前だ。もともと友人から呼ばれていたあだ名でもある。

最初はちょっと否定的だったが、年を取るにつれてなかなかいいあだ名をつけてくれたなと少しほっこりする。



「んじゃ、お前の名前は…前に考えてたキャラの名前から流用するか。『シャルディン』で登録。でも長いし普段はシャルって呼ぶからな」

『承知いたしました。ちなみに、どのような意味でその名前をつけたかを伺ってもよろしいでしょうか』

「あー…なんだっけか…たしか、神秘的な知識に熟練した賢人、みたいな意味があったはず…いや、忘れたけど…」

『…そうですか、承知いたしました。』



シャルディン…ほんとにそんな意味だっけ…まぁそんな気にすることでもないか。

とりあえずこれで名前が決まった。あとは性格設定だっけか。



『では、性格設定の方はいかがなさいますか?』

「んー、めんどいし適当でいいや。性格は時間を経るごとに変化していく形式で、あとはまぁもう少し砕けた口調でもいい気がするけどな。そこはお好みで」

『了解です。ではこのままで進ませていただきます』



確かにちょっとだけ砕けたな…。ほんとにちょっとだけど。まぁウィンドウに表示されてる文字列だし、正直感情とか読み取りづらいからあんまり気にする必要もないか。

ここで下手に性格固定とかして後々嫌になるよりか、可変にしてどう変化していくかを楽しんだ方がいいだろう。



『では、チュートリアルを始めさせていただきます』


---


『主には、今から神になってもらいます』

(急にすごいこと言うねぇ)

『神としてできることは、この部屋からすべて行使できます』

「ほー、なるほど。それは本当に『なんでもできる』と考えていいんだな?」

『はい。システム上可能なことであれば何でも』

(…?)



クク…ヌイは俺が何をやりたいかわかっていないようだが、俺にはずっと夢があったのだ。

神のように、なんでもできる状況になった時用にとっておいた夢。


俺は、この時を待っていたのだ。



「んじゃ、今からヌイを受肉させるぞ!!」

(…!)



俺はちょうど家具が無い空間に対して手を伸ばして、ヌイを作ることに意識を向ける。

元々あった曖昧なイメージを、どんどん明確に形作っていく。

顔を、髪の毛を、体格を、服を。あとケモみみ。

目を閉じて、集中する。



「…うぉぉ…でろでろ…ヌイでろ…」

『…そんなことしなくても、想像したものはちゃんと反映されるのですが』



何かシャルがシャルがしゃべっているような気がするが、目を閉じてるから俺にはわからないねェ!

何やらふわふわとした粒子が顔を掠めたので、目を開けてみる。




すると、ずっと考えていたヌイの姿が、目の前にあった。



考えていた通りのクリーム色のロングヘアーに、キリっととした目つき。身長は俺より高く、その胸はとても大きい。

全体的に装飾の少ない服は、すらっとした体型をこれでもかと強調してくれている。

そして…一番の見どころ。



「うおぉおっぉおお!!!ケモみみだあああぁ!!」

「そんな驚く?」

「おおおっぉぉ!!服だぁああ!!!」

「いや服は着てるけど」



初めてちゃんと見るヌイの姿。今までどんなに頑張っても想像力の足りない俺の頭ではボヤっとしか見れなかったのに、こんなにはっきりと見ることができる。

思わず地面に倒れこんでしまう。



「おおおおお!!地面だあああ!!」

「大丈夫?感情の発露機能バグってない?」



今、俺はすべての現象に驚けるであろう。

多分、テレビとか見ても「中に人が!?」とか言える。



---


「おぉおぉ…ほんとに存在してる?」

「してるねぇ、記憶とかもそのままだねぇ」

「おほ…すげ………………………触ってもいい?」

「ん…いいよぉ…」



ヌイは触りやすいように腕を後ろに組んで俺の前に立つ。いや背でっか…

確かに背がデカい方がいいとは思ったけど、身長差がすごい…。

具体的に言うと、今目の前にヌイの胸が来てるぐらいデカい。


では、いざ尋常におさわり…!!



「…ふぅ…ッん…」

「おお…こりゃいい触り心地だぜ…」

「あっ…そこ…いいよぉ…」



ヌイの淫靡な声が部屋を静かに駆け巡る。

手を口で押えて声を漏らさないようにするヌイが少しかわいらしく感じて、触る手を強める。



「んぁッッ…///」

「…そんな大げさに声上げるのやめません?」

「いや、結構きもちいいんだよぉ?」



というわけで、ヌイについているケモみみを触らせてもらった。体格を大きく設定したせいか、みみもだいぶデカい。

とても触り心地がよく、いつまでも触っていたくなる。

実家で飼っていた犬のみみにも勝るとも劣らない、素晴らしいケモみみだった。


また触らせてもらおう。

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