26発目 豆できるまでは半人前
神薙さんは、門から出てくるなり俺に頭を下げた。
「明科二子がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや……別に……てゆうか俺の方が迷惑だったんじゃないか?」
俺はそう返すと二子は俺の腕に抱き着いた。
「ほら、さっさと行くわよ」
二子に連れられ屋敷の中に足を運ぶ。
中も和風な作りで、まるで旅館のような雰囲気だ。そして……俺はある事に気付いた。
「なあ二子、ここって……」
「ええ、貴方の想像通りよ」
やっぱりか。ここはいわゆるジャパニーズマフィア。いや、ヤクザって言ったほうが正しいな。俺は二子に連れられて道場のような場所に案内された。そこには剣を持つ男たちが素振りをしたり、試し斬りをしている姿が見えた。また、真剣で斬り合いをする者までいた。
「ここは鶴技会、刃物を扱わせたら右に出るものはない武装集団です」
そう言った
「この薙刀は刃引きしてありますが、それでも人を殺すには十分です」
神薙さんはそう言うと、再び俺に頭を下げた。
「明科二子を護るには…………彼女を脅かす者に対抗するには…………貴方が握るべきものを見つけてください」
彼女がそう言って俺を連れてきたのは武器庫だ。すべてが刃物でそろえられている。
「あらゆる刃物を…………あらゆる剣技を試してください」
そう言った彼女はどこかへと行ってしまった。俺は言われた通り、いろいろな刃物を手に取る。日本刀……小太刀……木刀なんかもあるな。鎌なんて使ったことがないぞ? いや、全部使ったことねーわ。
「二子」
「何?」
「俺に一番似合う武器ってなんだ?」
「……」
俺がそう言うと、二子と神薙さんが顔を見合わせる。二人はよく考え込んでいるようだ。そして、先に二子が口を開いた。
「正直全部似合わないわ。諦めて似合うものとかかっこいいものとかそういうのはやめましょう?」
「いや、俺は真面目に聞いてるんだよ」
俺がそう言うと、二子は少し考えてから口を開いた。
「そうね……やっぱり日本刀ってどうかしら? 絶対いいわ! サムライ!」
「急に日本大好き外国人みたいなリアクションするな」
しかし日本刀か。時代劇で見た以上の使い方を知らないぞ。
「まあ、物は試しか。神薙さん、何から始めればいいんだ?」
「まずは重さと間合いを把握すべきですね。一度振ってみてください」
「ああ」
俺は日本刀を持って構える。すると……重すぎて身体のバランスが崩れる。俺はそのまま倒れてしまった。
「ダサいわ」
「かっこ悪いですね」
「お前らが振らせたんだろうが!!」
二子と神薙さんにバカにされ、俺は思わず叫ぶ。だが、確かにこの重さで振り回すのは無理があるな。
「これは無理だな」
「無理でもいいわ。筋肉をつけなさい。体幹を鍛えなさい」
「そんな簡単に言うけどさぁ……」
俺はため息をついた。そんな俺に二子が近づいてくる。
「何だよ」
「鍛えたらご褒美を上げるわ。そうね…………何がいい?」
「ご褒美ってお前なぁ……」
二子は俺に抱き着くと、そのまま俺を押し倒してきた。そして……俺の耳元で囁く。
「キスで良いかしら?」
「…………うわぁ」
「なんでよ!!!」
俺と二子のやりとりを見た神薙さんはため息をついていた。俺は彼女に聞いた。
とりあえずしばらくは基礎トレーニングになるらしい。
「まあこんな付け焼刃でどうにかなるなんてことはないと思いますけどね」
「ないよりはいいだろ?」
「…………そうですね……………………」
神薙さんは何かを考えながらどこかに行ってしまう。俺はしばらく二子と筋トレなどをしながら過ごした。
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