25発目 刃を磨くには

 朝起きると二子がいた。消えていなかった。どこにも行っていない彼女を抱き締めるが、まだ眠っているようだ。俺は彼女を起こさないように起き上がると、腕が伸びベッドに押し倒される。


「二子!? 起きているのか?」


 返事はない。しかし、力は強い。どうやら起きているようだ。今日は休みだしそのまま二度寝もしていいが、休みの日こそ家事ができるのだ。だから起きて活動したいのだが、二子は離してくれなさそうだ。


「二子、離してくれ。朝食作りたいんだ」

「……まだ早いわ。それに今日は土曜日よ」


 眠ろうとする彼女。まだ俺と一緒にベッドにいたいとは可愛い奴だ。俺は二子の頭を撫でて抱き寄せてやると、素直に身を預けてきた。

 くっついていられるなら文句ないのだろう。面白そうなので引きはがそうとしてみると、嫌なのだろう今より強く抱き着いてきた。さて、どうしたものか。


「二子、今日は何をしたい?」

「んー、離れない」


 可愛い奴だ。だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。少しイタズラをしよう。俺は二子の耳にしゃぶりついた。


「きゃん! あ……もう……」


彼女の反応が可愛いので俺はそのまま耳を舐める。そして、甘噛みもしてやると二子は甘い声を出した。


「や……あ……ん……」


 しばらく耳を攻めると二子はぐったりとして動かなくなった。お疲れのようだ。俺は彼女から離れると朝食を作り始めた。


 朝食が完成したので、二子をお姫様抱っこして食卓に連れて行く。そして俺の上に座らせた。なぜなら、お姫様抱っこして運んでいたらまたしがみ付いてきたからだ。


 甘えてくる二子が可愛いのでそのまま食卓に運んだ。


「ほら、食べるぞ」


 俺はまず最初にコンソメスープに手を伸ばす。二子が邪魔だけど、彼女にスープをこぼさないようにしないとだな。


「二子、スープ飲むか? あーん」


 俺はスプーンでスープをすくうと二子に食べさせた。彼女は素直に口を開ける。可愛いなこいつ。


「次はパンだ。ほら口開けろ」

「ん……」


 今度はトーストにジャムをつけて食べさせてやる。すると二子は俺の指まで舐め始めたのだ。そして……そのまま俺の指をしゃぶっている。これはこれでエロいな……だが、朝食中だし今は我慢しよう。

 

 最後に牛乳を飲み干して彼女は満足げに笑う。俺は二子を抱き寄せた。一度抱き寄せてしまうと、もう離れようという気はなくなっていた。


 もう彼女は動きがなさそうだ。俺と一緒にいれば幸せだというなら、それに越したことはないが、正直そろそろ理性というかなんというか一度落ち着かせてほしいものだ。


「二子、今日は何がしたい?」

「貴方のしたいことをするわ」

「じゃあ…………俺を強くしてくれ」


 俺のしたいことを聞いた二子は、少しだけ考え込んだ。きっとあまり気乗りしないのだろう。


「貴方を強くする理由は?」

「お前と一緒に居続けるために俺は、このままじゃいけないと思うんだ」


 二子はまた考え込んだ。そして……


「……わかったわ」

「いいのか?」

「ええ、貴方が望むなら」


 こうして俺は二子に連れられてどこかに向かう事になった。一度誰かに連絡していたようだ。大きな和風の御屋敷だ。そこには読み方はわからないが「鶴技会」という看板が取り付けられている。


「なんだ? つるぎかい?」

「ええ、そうよ。ここは鶴技会つるぎかい小向こなたも所属している組織よ」


 神薙さんも所属している組織? よくわからないが、一日でヘリを用意できる組織って事で良いんだよな。


「そう、この組織は貴方を鍛えてくれるわ」

「え?」


 俺の反応に二子は少しだけ微笑んでいた。そして……門が開くと、中から一人の女性が現れた。


「お待ちしておりました」


 中からは当然と言えば当然か、神薙さんが俺を待っていた。

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