22発目 納豆の臭みを消すには
なんかわからないけど、今日の二子はいつもより甘えん坊だ。ツンとした喋り方は変わらないが、ぎゅっと俺の腕を抱き締めたまま下校したので、周囲から注目されていたような気がする。
「…………そういえば俺の両親はいつ戻ってくるんだ?」
「そうね…………安全な場所に退避して貰いつつ私が居座りやすい環境にしたのだけど…………今のところ私の居場所がばれている感じもしないし…………でも…………もう少し二人でいたいわ」
父さん、母さんごめん。俺、もうしばらく二子と二人で生活したい、いやする。
「そうだな、俺もそうしたい」
「でも…………いつかは二人でどこか静かな場所で暮らしましょう?」
「ん? …………ん???」
なんか将来を誓い合ってそうなのですが…………え? んーっと…………いや、二子の事は大好きだけどそれは飛躍しすぎというか、俺たちは高校生で、いやまあいいか。
「お前が嫌じゃなければな」
俺がそう言うと、二子はより強く俺の腕にしがみ付く。早く家に帰ってたくさん世話してやりたいな。あれ? でも、こいつって俺に嫌われるために我儘にしていたって言うなら、実際はどこまで出来るんだ?
そう思いながら帰宅すると、二子はいつも通り、靴を脱がせるところから俺の世話を始める。
「我儘のままなのか?」
「こういう私を好きになったのでしょう?」
「そりゃずるい」
俺がそう答えると二子はクスクス笑う。そして俺の靴を脱がし終えると、そのまま俺に抱き着いてきた。
二子の身体の柔らかさと、甘い香りが俺を襲う。正直ちょっとドキッとした。
「ねえなるべく一緒にいましょう? できればお風呂も…………」
二子は恥ずかしそうにそう言うと、俺の胸に顔を埋める。俺は彼女の頭を撫でたあと、彼女を抱き上げてそのままリビングに連れて行った。
「風呂は置いといて、とりあえず部屋着に着替えさせてやるよ。ほら脱がすぞ」
俺は二子のブラウスを剥ぎ取り、スカートに手をかける。
「ちょっと恥ずかしいわ」
「そうか、なら自分で脱いでもいいぞ」
「いいえ、脱がして頂戴」
そう言われスカートも脱がしてジャージを着せてやる。こいつは下着を見られるのが恥ずかしく感じるの遅くないか。それとも、こいつも俺と同じように本当の恋人になれたと思って意識し始めているのか。
「何食べたい?」
「貴方の得意料理が良いわ」
得意料理か! よし!! ………………………………得意料理ってそんなもんみんなあるの? わからないな。何作ろうかな。確かひき肉があったはずだ。
「じゃあハンバーグでいいか?」
「作れるの?」
「まあな……チーズ入りでいい?」
「……任せるわ」
俺は一度ソファから離れようとすると、二子ががっしりと俺の服を掴んで離さない。
「あの…………」
「…………もう!」
二子はソファに寝っ転がりながらクッションに顔を埋めて足をバタバタとさせている。可愛いなこいつ。
俺を待っている二子の為になるべく早く作ってやるか。
食事が終わり風呂掃除を始める頃、二子は掃除している俺を近くで眺めていた。俺の傍から離れるのがそんなに嫌か。
前まではここまでずっと一緒って感じじゃなかったんだけどな。
そして風呂が沸くと二子は俺の腕を掴んだ。
「お風呂」
「本当に一緒に入るのか?」
「…………嫌?」
そう言われるとそんなわけもなく二人で脱衣所に向かうが結構狭い。
「せめてタオルは撒くのと…………俺先に入ってるからお前後から来いよ」
そう言うと恥ずかしくなったのだろう。二子は顔を紅くして頷いた。俺は脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。そしてシャンプーで髪を洗い始めた時、風呂の扉が開く音がした。
そこには顔を紅くしたままうつむいているタオルを巻いただけの姿の二子がいる。
「身体洗う時は向こう向いてるからとっとと洗えよ」
俺はなるべく彼女の方を見ないように背中を向けていた。彼女は洗い終わってすぐに湯船に入ってきて、俺の背中に身体を密着させるようにもたれかかる。
「近くね?」
「……そうね」
そう答えるが二子は離れようとしない。俺は後ろから彼女をぎゅっと抱き締めてやると、彼女は嬉しそうに笑う。
「ねえナツト」
「なんだ二子?」
「……なんでもないわ」
「そうか、じゃあ出るか」
風呂上り後も別々に脱衣所を使い後は眠るだけとなったが、二子に提案されてリビングでホットミルクを飲むことにした。
「どうした急に…………いつもは風呂上りこんなことしなかっただろ」
「良いでしょ別に…………ちょっと話がしたかったの」
「そうか」
俺がそう言うと二子は少しだけ申し訳なさそうにしながら俺の隣に座った。そして彼女は俺に身体を預ける様にして、ホットミルクを一口飲む。
「今日は幸せだったわ」
「…………俺もだ」
彼女は今日の一分一秒も大切にして俺と一緒にいようとしてくれた。だから俺もなるべく彼女と一緒にいようと思い…………そうか、そう言う事か。
俺は二子の頭を撫でる。すると彼女は嬉しそうに笑った。
「なあ、二子」
「なに?」
「明日は何したい?」
俺の質問に二子は目を見開いた。まるで彼女は明日以降を考えていなかったかのように…………。
「私は……そうね。ナツトと一緒に入れれば何でもいいわ」
そう言う二子の笑顔は…………よくできていた。
「二子…………明日はさ。お前の行きたい場所行って、食べたいものを食べよう」
「学校は?」
「一日くらいいいさ」
その日は彼女を抱き締めて眠った。彼女がどこにもいかないように…………ずっと、抱き締めて……
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