21発目 絡み合う
二子と一緒に下校する。今日は神薙さんに言われたことが頭から離れず、ずっと彼女の事を考えていた。
「なあ二子」
「何?」
「お前……その……」
なんて聞けばいいんだ。聞いていい事なのか。いや…………俺は二子の事もっと知りたいから。
「…………聞きたいことがあるなら聞けばいいわ…………答えるかわからないけど」
「…………多すぎてわっかんねーよ」
俺がそう伝えると二子は俺の手を握った。
「馬鹿ね…………思ったことを口にするだけよ」
「じゃあいうぞ」
俺はぎゅっと二子の手を強く握る。二子は少しだけ驚いたような表情をして、それから続きを促す。
「お前がもし、ここからいなくならなきゃいけなくなったとしたらさ…………俺を連れて行ってくれるか?」
「え?」
俺は今より強く彼女の手を握る。彼女が離れないように、俺は彼女の手を引く。彼女が逃げ出さないように、強く……握る。
「答えてくれ、二子」
「ちょっと、痛いわ」
彼女は俺の手を振り払おうとはしない。むしろ握り返す様に……力を込める。
「小向から何を聞いたのかわからないけど、ナツトは…………巻き込めないわ」
「いいや…………俺から巻き込まれてやる」
「馬鹿ね、大馬鹿よ貴方」
彼女は俺の腕を振りほどく。しかしそれも上手くいかない。俺は彼女の手を掴んで離さない。
「離しなさい」
「なんでだよ」
「…………わかんないわよ!!! わかるわけないでしょ!!! どうしていいか!! どうするのが正しいか!!! 教えてよ!!!」
二子は俺の胸を叩いて泣き叫ぶ。どうしていいのかわからなかったと……そして、彼女は涙をぬぐいながら俺を抱き締めた。俺は強く握った手をはなすと、もう片方の手も俺の背中に回す。
「誰でも良かった…………利用できればいいと思った! 貴方がはじめて声をかけた時、都合がいいと思えた! なのに! どうして貴方はわがまま放題で! いい加減で! 何もしようとしない私を!! 嫌ってくれなかったの?」
二子の声は泣いていた。彼女はずっと、泣いていた。
「…………最初は失敗したって思ったよ。でもさ…………俺は粘り強さに定評があってさ。だからお前のわがままに音を上げる前に、お前に愛着が沸いちまったよ」
そうか…………お前、俺の家にいついて、その上で俺に嫌われようとしていたのか。それはちょっと無理があるんじゃないか? だってお前、割と最初から俺の事気に入ってただろ?
「俺はお前と一緒に居たいよ二子」
「……私もよナツト……私も、貴方と一緒にいたい……」
彼女は俺を強く抱きしめ、俺は彼女の背中を優しく撫でた。やっと二子の気持ちを聞けた。
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