19発目 こんなにも甘いから
旅行からの帰りは互いに会話をしていたが、記憶に残らない日常風景とかした。楽しかった事は覚えているが、浅葱と二人きりは気まずかった。部屋も同室だったがハプニングは最初の一回きりで終わった。
結局尾行していた二子と光も最後には新幹線で一緒に合流してしまった。まあ最初から俺も浅葱も気づいていたんだけどな。
「いやぁ納豆君と二人きりだったのに残念ですねぇ」
浅葱はそう言っているが、ほっとしているようにも見える。俺も少しだけ解放された気分だ。
「てゆうか浅葱ばっかりずるいよ! 私なんてクラスも違うのに!」
「そもそも、本来は彼女でもない女が一緒に出掛けられるだけでも有難く思って欲しいわ」
そう言って隣に座ってきた二子が俺の腕を抱き締めてきた。二子の柔らかい部分が俺の腕に押し付けられ、俺はそこをガン見してしまった。
「…………残念だったわねアサギ。ナツトは胸の大きい人が好みみたい」
「なっ!? いいえそんなこと…………」
二子は勝ち誇ったようにより強く押し付けてきて、浅葱は顔を真っ赤にして胸を抑える。光は自身の胸を見て「そこまで小さくないよね」と呟いていた。
「それで? 私からアサギに乗り換えようだなんて思ってないわよね?」
「思ってねーよ!!」
「どうだか…………」
二子はまだ俺を怪しんでいる。やはり俺と浅葱の距離感は友人よりは男女の仲に近いのかもしれない。彼女もいるんだし、もう少し配慮しよう。距離を取るんじゃなくて二人きりにならないように…………二子が不安にならないようにしないとな。
まあ、今回のは勝手に俺を賭けの対象にした二子が悪いけどね!!!!
「私も納豆と旅行行きたい!!!」
「…………いやさすがに二回も三回も彼女じゃない人と旅行には行けねーよ」
普通一回でもおかしいことはみんな分かった上で突っ込まないのである。そもそも今回のは俺悪くねーし。
四人で帰る時、浅葱と二人きりの時に感じたドロドロした気持ちは感じる事はなかった。それは…………隣に彼女がいてくれたからかもしれない。
新幹線から降りてそれぞれの帰路にたどり着き、俺たちは自宅に戻ると、二子はいきなり俺に抱き着いてきた。
「なんだよそんなに盗られるか心配するなら賭けなんてしなければ良かっただろ」
俺がそういうと、二子は顔をあげて何言ってんのこいつと言いたそうな顔で俺を見つめてきた。あれ?
「私、貴方の匂いを嗅ぎたかっただけだけど? 盗られる訳ないでしょ? 私を捨てるなんて愚行をされるなんて思えないわ」
なんでこいつはこんなに偉そうなんだ。どう考えてもお前と浅葱なら浅葱の方がいい彼女になれるぞ。俺は二子の頭を撫でてやると、彼女はまた俺に顔を押し付ける。
いや、匂い嗅いで良いぞって合図じゃないぞ。てゆうか、玄関から動けねえ。
「二子、とりあえずリビング行こうぜ? 好きにしていいから」
俺がそう言うと、二子はぱっと俺から離れて玄関に座り込み足をあげる。俺は彼女の前にしゃがみ込み、靴を脱がしてやった。短いスカートで足をあげる二子。俺の視線はそのスカートの方に集中すると、二子は俺の頬をつねった。
「見過ぎよ…………いえ、貴方が望むなら……そうね、好きに見なさい」
そう言って一度は抑えたスカートから手をはなす二子。別に見ようとしていた訳じゃないし、見ていいと言われて…………素直に見ていいものなのかソレ。
だが、俺も男だ。はっきり言って見たい。でも…………
「馬鹿な事してないで靴脱がすぞ」
「…………いいの?」
彼女の表情を見ると、あまりからかっているような顔ではなさそうだ。でも、残念そうでもない。ただ…………不安そうに感じた。
口では私が選ばれて当然と言った彼女だが、本心は何もしない自分が捨てられるのではないか不安なのかもしれない。
だからだろうか、二子は色仕掛けでしか、俺を喜ばせられないと…………勘違いしているようだ。
「良いんだよお前の下着なんて四六時中見れるようなもんだろ。寝る前なんてパンツ丸出しで歩き回ってるじゃねーか」
「…………そうね。でも間近で見れるのは少ないんじゃない?」
まあ確かにそうだけどさ。でも、お前が本気で望んでないことくらい俺にはわかるから。
「ほら、靴脱がしたぞ…………服はどうする? 風呂入るまで着てるか? 部屋着に着替えるか?」
「部屋着で」
俺は二子の手を引いて自室まで連れ込むと、彼女は俺のジャージを手に取ってそれを俺に突きつける。これに着替えさせろと言う事だろう。
「ほら、ブラウス脱がすからな手の力を抜いてくれ」
彼女のブラウスを慣れた手つきで脱がしていくと、黒いブラジャーと白い素肌が露出する。二子の胸はいつみても綺麗だった。
「……下も脱がすから少し腰あげてくれ」
「ええ」
俺は彼女のスカートを脱がして、ジャージのズボンを履かせてやった。そして上もジャージを着せてやる。素直な着せ替え人形の様だ。
「ブラは自分で外しておくんだぞ?」
「え、ええ…………私は構わないのだけど?」
「俺が襲いそうになるからダメだ」
「…………そう」
二子は納得してそのまま俺の腕をがっちりつかんでリビングまで連れ込もうとするが、俺も部屋着に着替えたかったので先にリビングに戻って貰おうと声をかける。
「俺も着替えさせてくれ」
「…………そうね」
二子は納得してくれたのか立ち上がると、俺の来ている服に手を伸ばしてきた。
「え?」
「ちょっと! 着替えさせられないでしょ?」
あれ? 俺は普通に自分で着替えるつもりだったのだが、どうやら二子が着替えさせようとしている。どうやら着替えさせてくれを二子がと受け取られたらしい。
「待て! 俺は自分で!!」
「いいから!」
強引に脱がされると、洗濯したばかりの部屋着を被せられる。雑過ぎません?
最終的には二子に無理やり、それも雑に着替えさせられた俺は自分で細部を直しながら、突っ立っていると、二子に腕を引っ張られれてリビングまで連れていかれる。
これが散歩中に犬に引っ張られる感覚か。そしてリビングに連れ込まれるとソファに座らされて二子も俺に寄りかかる。
「今日は料理しなくていいわ。デマエ? というものにしましょう?」
「いや、高くなるんだが…………まあ今日は疲れてるし良いか」
そして二子は俺に顔を押し付けてリラックスした様に俺に寄りかかる。俺たちは特に会話をすることもなく、ゆっくりと時間を過ごすと、二子は大きく欠伸をした。
「眠いのか?」
「…………ご飯…………」
「頼んでおくからお前は寝てろ」
「…………そうね」
そう言って二子は俺にもたれかかったまま眠りにつく。手はがっしりと俺を掴んで離そうとしない。なんとかスマフォに手を伸ばし、適当に注文をすることにした。
二子は辛党なので適当に辛い物でいいだろう。眠る彼女が、どうしたら喜んでくれるか。そればかり考えていた。
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