14発目 粘らせる手は止めないで
今日は高校が休みの日曜日。俺と二子はショッピングモールに向かっていた。ちなみに現在の服装は制服だ。朝、鏡の前で髪整えてると、二子が隣でネクタイ直してる姿が映って、なんか妙に落ち着く。彼女は制服しかないし、俺が私服だとちぐはぐで浮きそうだったから、お互い制服で出かけることにしたんだ。外に出ると、朝の空気が少し冷たくて、二子の金髪が風に揺れてるのが目に入る。
家を出ると二子は躊躇いなく俺の手を握ってきた。指が絡まって、彼女の手の冷たさが伝わってくる。あたりが強い癖にこういうとこは可愛い奴だな。俺、彼女の手の感触にちょっとドキッとしつつ、歩きながら口を開いた。
「お前はどんな服が好きなんだ?」
「そうね…………動きやすくて目立たなくて…………大衆に紛れやすいような人の視線の集まらないけど目立ちも悪目立ちにもならない服よ」
「お前は工作員か何かかよ」
二子の答えに笑いそうになるけど、どんな服を言えばいいのか全然わからなくて困る。頭の中で彼女の好みを整理してみる。
「…………つまりオシャレで人目を惹くような奴もダメ。逆にダサすぎて悪目立ちもダメ。…………てなるとトレンドを取り入れてなおかつ肌の露出は控える感じだな」
「…………ナツト、ちょっと気持ち悪いわ」
二子がジト目でこっち見てくる。ムカッと来た俺は勢いよく手を振りほどくと、ものすごい速さで掴みなおされて、あっという間に恋人つなぎに戻った。彼女の指が俺の手を離さない力が強くて、ちょっと驚く。
「…………何今の動き」
「だってデートの時はこうするのでしょう? …………もしかして腰に手を回すタイプだった? ど、どうぞ?」
そう言って二子は俺の手を放し、自らの腰を差し出すようにして俺が手を回すのを素直に待ってた。制服のスカートが少し揺れて、彼女の細い腰が目の前にくる。じーっと俺を見つめる二子の頬がほんのり赤い気がして、心臓が少し速くなる。……俺は二子の腰に手を回すと、そのまま彼女の身体を引き寄せた。シャツ越しに温かさが伝わってきて、思わず息をのむ。
「…………そう、次からはデートの時はこうしましょう」
二子が冷静な雰囲気で喋るけど、耳は真っ赤で頬も紅く染まってた。俺、そんな二子が可愛くて、ついからかうように耳元で囁いた。
「せっかく腰に手を回すなら、腰回りが露出した服にするか?」
俺がそう言うと、二子が冷静に返してきた。
「そう。貴方は直接触りたいのね。…………でもさっき貴方が言った通り、露出は目立つわ。必要なら家で言ってもらえる? そうね、マッサージでもしてもらおうかしら。ショーツは履いててもいいかしら?」
「…………とりあえず服探すか」
俺、このあと自分の検索履歴がマッサージ関連で埋め尽くされることになるとは考えてもいなかった。二子の言葉に頭が一瞬混乱して、彼女のペースに巻き込まれてる感じがする。彼女の謎めいたとこが気になって、もっと知りたいって気持ちが膨らむんだ。
そんなくだらない会話をしながら歩いてたら、いつの間にかショッピングモールに着いてた。ガラス張りの入口から見える人で賑わう店内が目に入る。早速女ものの服を売ってる店に立ち入ることにした。店の中は明るい照明で、服がキレイに並んでる。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
店員が笑顔で俺たちのとこにやってくると、二子がすかさず俺に話しかけてきた。
「……ナツト」
「え? ああ……」
二子が俺の後ろに隠れるみたいに近づいてくる。彼女の肩が俺の背中に当たって、ちょっと緊張してるのが伝わる。俺、頷くと二子に代わって口を開いた。
「この子に合う服を探しているんだけれど……なんかいい奴ないか?」
「そうですね……お客様の雰囲気ですと、こちらのコーデなどいかがでしょうか?」
店員が白い服とか長いスカートとか持ってきて、俺にはよくわからん。とりあえず着させてみるかと二子の方を見ると、彼女がコクンと頷いて試着室に入っていった。俺、店の椅子に座って待つこと数分。カーテンが開くと、そこに二子の姿があって……俺、思わず見惚れてしまった。
「どうかしら?」
二子が着た服は白を基調にした清楚な印象の服装で、スカートの丈が長くて彼女の長い脚が少しだけ見える。シンプルだけど、二子の雰囲気と合ってて、なんか目を離せなくなる。二子の美人なとこが際立ってるな。
「え? あ、ああ……いいんじゃねえの?」
はっきり言って二子は本当に美人で可愛い。そういえば俺の彼女だったって思い出すくらい、別世界の人間みたいに感じる瞬間がある。いや、世界は一緒なのかもしれないけど、彼女の謎めいた部分が頭をよぎる。今は考えすぎないでおこうって自分に言い聞かせる。
「お客様、大変お似合いですよ」
店員が二子のことをほめちぎる。すると二子が何を考えたのか俺を手招きしてきたから近づくと、彼女が耳元で囁いてきた。吐息が耳に当たって、ちょっとくすぐったい。
「抱き締めたくなる?」
「店員さん、この服そのまま買います、タグ切ってもらえますか?」
俺、すぐに店員呼んで二子が着てる服を購入することにした。二子の言葉に心臓が跳ねて、彼女のこういうとこが気になって仕方ない。
「彼女さん、お綺麗な方ですね。彼氏さんが羨ましいです」
「ほんと…………ビックリするくらい綺麗で…………」
店員の言葉に頷きながら、俺にはもったいない女だって思う。
旅行は二泊三日。最低でも三日分の服が必要だ。ついでに予備も購入しておこう。他にもいくつか二子に服を選ばせたり、俺が選んだりして、普通のカップルみたいに買い物を楽しんだ。二子の好みが少しわかってきた気がする。動きやすくて目立たない服ってのが彼女らしいな。
「貴方も服を買いましょう? 私も選びたいわ」
二子が提案してきて、俺は彼女と一緒に服を選ぶことにした。俺、別にかっこいい服が似合うタイプじゃないと思うけど、二子が選んだ服ならいいかって購入した。彼女らしい目立ちにくいけど悪目立ちしない服で、制服のままだと変だから着替えて出歩くことにする。新しい服着ると、なんか気分が上がるな。
「そうだ、昼は何食べたい?」
「そうね…………ナツトと行くならどこでもいいわ」
「そうか。なら適当にファミレスにでも入るか。ちょっと休憩もしたいしな」
歩き疲れてたから、ファミレスに入って適当に注文した。二人でテーブル向かい合って座って、食事しながら他愛ない話をする。食事を終えた俺たち、何もすることがなくなって迷ってると、二子が口開いた。
「私、今は普通の女の子なのかな」
その言葉の意味が俺にはよくわからなくて、少し考えてから素直に思ったことを口にした。
「普通の女の子は…………彼氏の家に住まねえけどな」
「…………それもそうね」
二子が小さく笑って、どこか寂しそうな目をした。彼女が何に悩んでるのか、今の俺にはわからない。でも、彼女の支えになってるなら、今はそれでいいのかもしれない。二子の謎を知りたいって好奇心が、心のどこかで膨らんでるよ。
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