12発目 硝煙の香りを消したくて
風呂上がりの二子を見て俺は思わず息をのむ。二子は髪を下ろして俺が昨日来ていた寝間着代わりのジャージを着ている。
あいかわらず俺が着た後の服を着たがる彼女に俺は少しだけ慣れてきた。
「何よ?」
「いや、ジャージが二子には大きいなと」
そう言って俺は風呂に入る準備を始める。二子はもう入ったので俺はゆっくり湯船に浸かる。
風呂の中では他にすることもないせいでさっきよりも考え込んでしまう。『壊される』か……神薙さんは一体二子とはどんな関係なんだろうか。
そんな事を考えていたらいつの間にか長風呂になってしまったようだ。俺は急いで着替えると、さっさと寝ようと自分の部屋に向かおうとすると突然腕を掴まれた。
「なんだよ?」
「遅いじゃない…………寝れないでしょ?」
「先に寝てればいいだろ?」
俺は当たり前の事を言ったつもりだが、彼女には違うらしい。少しだけ震えているようで、まるで一緒に眠るのは…………何か怖いモノから自分を護るための用にも感じ取れた。
「はぁ……わかったよ。一緒に寝るか」
「早くして」
……俺は二子と一緒にベッドに入り、電気を消す。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「手……繋いでもいいかしら?」
「……ああ」
俺がそう言うと、二子は俺の手を握る。彼女の手は少しだけ冷たいが、それでも確かに人の体温だ。
震えているのは…………壊れる何かを怖がっている。それはきっと……
「二子、お前にとって壊されたくないものってなんだ?」
二子は何も答えてくれなかったが…………布団の中でもぞもぞと動く彼女はぎゅっと俺の服を掴む。
「二子、いつか教えてくれよ。お前の事」
そう言って俺は眠りに……落ちる前に二子が俺の耳元で囁く。
「貴方は知らなくていいことよ……」
その言葉はどこか悲しい響きで……でもなぜか……懐かしく感じた。そして俺はそのまま寝てしまうのだった。
このまま聞かなかったことにして…………寝ていいのだろうか。
俺は…………二子の手をぎゅっと握り返す。
「それでも…………俺は知りたいんだよ」
俺がそう呟くと…………もぞもぞと動いていた二子の動きがピクリと止まり、二子は俺の胸に顔をうずめる。
「馬鹿」
そう言った二子の声は……どこか嬉しそうだった。しかし、それ以上語る事なく、彼女の寝息が聞こえ始めたあたりで、俺も眠る事にした。彼女の香りが心地よく感じる。
「おやすみ二子」
俺はそう言って、彼女の手を握りながら眠りにつく。俺が眠ったかどうかの瞬間、頬に柔らかい何かが当たった気がしたが…………それを確かめる前に俺の意識は沈んでいった。
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