12発目 硝煙の香りを消したくて
風呂上がりの二子を見て俺は思わず息をのむ。彼女は髪を下ろしてて、濡れた金髪が肩に張り付いてる。湯気で少し赤くなった顔が柔らかく見えて、俺が昨日着てた寝間着代わりのジャージをダボッと着てる姿が目に飛び込んでくる。サイズが合ってねぇから袖が手首まで落ちてて、なんか妙に可愛いんだよな。
あいかわらず俺が着た後の服を着たがる彼女に俺は少しだけ慣れてきた。最初は「何でだよ?」って聞いたら、「匂いが好きだから」って平然と言われて赤面したけど、今じゃ見慣れた光景だ。でも、慣れたとはいえ、毎回ちょっとドキッとするのは隠せねぇよ。
「何よ?」
二子がこっち見て、碧眼が鋭く光る。風呂上がりの湿った髪が顔に少し貼り付いてて、いつもより柔らかい雰囲気だ。
「いや、ジャージが二子には大きいなと」
俺が苦笑いしながら言うと、二子が「ふーん」って鼻で笑ってソファに座った。俺は風呂に入る準備を始める。タオルと着替え持って、浴室のドア開ける。二子はもう入った後だから、俺はゆっくり湯船に浸かることにした。浴室の中、湯気がモワッと立ち込めて、鏡が曇ってる。湯船に浸かると、温かい水が体を包んで、ちょっと疲れが取れる感じがする。
風呂の中では他にすることもなく、さっきよりも考え込んじまう。『壊される』か……神薙さんが公園で言ってた言葉が頭から離れねぇ。二子と神薙さん、一体どんな関係なんだろうか。ハンバーガーショップで視線ぶつけ合ってた時から怪しいと思ってたけど、今日の会話聞いてると、ただの知り合いじゃねぇ気がする。チェルノとか鶴技会とか、意味わからねぇ単語が頭の中でぐるぐる回って、湯船の中で膝抱えてぼーっとしちまう。
そんなこと考えてたら、いつの間にか長風呂になっちまったみたいだ。水が少し冷めてきて、慌てて体洗って湯船から出る。タオルでゴシゴシ拭いて、急いで着替えると、さっさと寝ようと自分の部屋に向かおうとしたら、突然腕を掴まれた。振り返ると、二子がそこに立ってて、ジャージの袖が俺の腕に絡んでる。
「なんだよ?」
「遅いじゃない…………寝れないでしょ?」
二子の声が少し低くて、碧眼が俺をじっと見てる。俺、ちょっと驚いて言葉探す。
「先に寝てればいいだろ?」
俺は当たり前のこと言ったつもりだけど、彼女には違うらしい。二子の手が少しだけ震えてて、目が何か訴えてるみたいだ。まるで一緒に眠ることが、彼女にとって何か怖いものから自分を守るためのようにも感じ取れた。こいつ、こんなに弱弱しかったか?
「はぁ……わかったよ。一緒に寝るか」
「早くして」
二子が小さく頷いて、俺の手を引っ張る。……俺は二子と一緒にベッドに入り、枕元のスイッチで電気を消す。部屋が真っ暗になって、カーテンの隙間から街灯の光が薄く漏れてくる。布団の中で二子の体温が近くて、ちょっと緊張するぜ。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「手……繋いでもいいかしら?」
二子の声が小さくて、暗闇の中で響く。俺、ちょっと考えてから答えた。
「……ああ」
俺がそう言うと、二子がそっと俺の手を握ってきた。彼女の手は少し冷たくて、風呂上がりなのにまだ温まりきってねぇみたいだ。でも、確かに人の体温で、細い指が俺の手を包んでる。女の子の手の感触って、こんなに柔らかいんだなって思う。
震えてるのは…………壊れる何かを怖がってる。それはきっと……神薙さんの言ってたことと関係あるんだろうな。俺、頭の中で二子の震えとあの言葉繋げて、なんかモヤモヤしてくる。
「二子、お前にとって壊されたくないものってなんだ?」
俺がポツリと聞くと、二子は何も答えてくれなかった。布団の中でもぞもぞ動く音がして、彼女がぎゅっと俺の服を掴んできた。ジャージの胸元が引っ張られて、二子の指の力が伝わってくる。無言のままでも、なんか気持ちが伝わってくるみたいだ。
「二子、いつか教えてくれよ。お前のこと」
そう言って俺は眠りに……落ちる前に、二子が俺の耳元で囁いてきた。彼女の吐息が耳に当たって、ちょっとくすぐったい。
「貴方は知らなくていいことよ……」
その言葉はどこか悲しい響きで……でもなぜか……懐かしく感じた。どこかで聞いたような気がして、頭の奥がチクッとする。でも、そのまま意識がぼやけてきて、俺は寝ちまうのだった。目を閉じた瞬間、二子の香りが鼻に残って、なんか安心する。
このまま聞かなかったことにして…………寝ていいのだろうか。頭の片隅でそう思うけど、体が重くなってきて考えるのやめる。二子のこういう秘密って、知りたいけど怖くもあるよな。
俺は…………二子の手をぎゅっと握り返す。彼女の細い指が俺の手の中で少し動いて、温かさがじんわり伝わってくる。
「それでも…………俺は知りたいんだよ」
俺が小さく呟くと…………もぞもぞ動いてた二子の動きがピクリと止まった。そしたら二子が俺の胸に顔をうずめてきた。彼女の髪が首に触れて、柔らかい感触が広がる。
「馬鹿」
二子がそう言った声は……どこか嬉しそうだった。暗闇の中で、彼女の声が小さく響いて、なんかホッとする。でも、それ以上語ることなく、彼女の寝息が聞こえ始めたあたりで、俺も眠ることにした。スースーって規則正しい息遣いが耳に届いて、二子の香りが心地よく感じる。シャンプーの匂いと彼女の体温が混じって、なんか落ち着くんだよな。
「おやすみ二子」
俺はそう言って、彼女の手を握りながら眠りにつく。目を閉じて意識が薄れる瞬間、頬に柔らかい何かが当たった気がした。唇か何かか? って思うけど、それを確かめる前に俺の意識は沈んでいった。頭の中で二子の顔が浮かんで、なんか幸せな気分で眠りに落ちる。
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