10発目 蕎麦は香りがいいのに納豆と来たら
ある日の放課後、今日は浅葱が部活でいないため、俺と二子が二人で帰りの支度をしていると光が俺たちの所にやってきた。
「お二人さんも今帰りかな?」
「ああ、そうだな。二子はどこか寄り道していくか?」
「貴方が行くなら行くけど、何もないなら帰るわ」
「だそうだ」
俺たちは下校は寄り道せずに変える事を光に伝えると、光はニシシと笑ってスマフォを取り出す。
そこには『ハンバーガー半額クーポン』の文字があった。
「これ今日までなんだけど、行ってみない?」
「ああ、良いぞ」
俺がそう言うと二子は軽くため息をついてから言う。
「私は…………はぁ、まあいいわ私も行く」
そう言って二子は急に強く腕にしがみ付いてきた。直感だけど機嫌が悪そうだ。
「何よ?」
「いや、なんでもない」
俺はそう答えて二子を連れて光について行く。光は俺たちを先導するように前を歩くが、その足取りは軽く嬉しそうだ。
そしてついたのは学校近くのハンバーガーショップ。全国チェーンで学生に人気のお店だ。俺たちは店内に入り注文カウンターに向かうと、そこには見知った顔があった。
「納豆じゃねぇか」
そこにはクラスメイトで親友の男子生徒、
「二八じゃねぇか。お前らマックデートか?」
「まあそんなとこ…………そっちは…………ハーレム?」
「?? 女子二人と一緒にいてもハーレムにはならねーだろ???」
確かに一人は彼女だし、もう一人は俺を好きと言っている女子だ。…………ハーレムなのか?
二八は体格の良さといかつい見た目から勘違いされやすいが、普通に良い奴だ。何より、最近薄々感じていた変人枠の俺とも仲良くしてくれている。
ふと神薙さんの方に視線を向けると、神薙さんは二子をジーっと見ていて、二子も神薙さんを見ていた。知り合いなのか?
特に自己紹介もなくそのまま俺たちは五人一緒にハンバーガーを食べる事になった。
「うまっ、なにこれ! めちゃくちゃ美味しいんだけど」
光が感動したように期間限定ハンバーガーを食べている。確かに美味いな。俺は食べながら二子に聞く。
「お前って外食とかするのか?」
「……外食はするけど…………ファストフードはあまりないわ」
そう言って二子は珍しそうにマスタードたっぷりのバーガーを頬張る。意外と似合うんだけどな。
しかし、二子と神薙さんがにらみ合ったままだが何かあったのか?
俺がそう思いながら二八の方に視線を向けると、二八はもう食べ終わって二個目を食べ始めている。ちなみにこいつだけ三個買った。夕飯入るのか?
「そういえば納豆は修学旅行のグループ決まったのか?」
修学旅行。来月俺たちは修学旅行でクラスごとに6人組を作る必要がある。
「あ? 6人組だろ? おれの脳内では俺と二子と浅葱までは決まった」
光は羨ましそうに見ているが、クラスが違うので仕方ない。
「そこに俺と小向も入れて貰ってもいいか?」
二八がそういうと、隣にいた神薙さんも二子を見てからこくりと頷く。
睨んでいたというよりは興味があるといった感じか。
「まあいいけどよ…………まああと一人は適当に見つかるだろ」
俺がそう言うと二子は俺に質問する。
「修学旅行はどこに行くの?」
「ああ、京都だよ」
そういえば修学旅行なんて三日前に転校してきた二子にはわからないよな。二子は京都をスマフォで検索しているようだ。
「光は班決まったのか?」
「うーん、まあクラスの子たちと組むかなぁ」
光は俺たちのクラスを羨ましそうにしているようだが、こればっかりは仕方ない。俺だって誘えるなら光を誘いたかったくらいだ。
しかし、二八の彼女とはいえ、神薙さんとは話したことはない。神薙さんは中学の頃から二八の彼女でさすがに俺も高校に入ってから彼女作りを始めたのと親友の彼女ということもあり、告白したことはない。
神薙さんは薄幸の美少女という言葉がよく似合う女性だ。線が細く、肌が白い。背は低く、顔も幼い感じだが体つきは女性的で胸も大きく腰は括れていてスタイルがいい。
しかし、授業で喋る以外で声を聴いたことがない。中学も同じ俺ですらそうだ。
「神薙さんも改めてよろしく」
「…………」
返事はないがこくりと頷く。拒否されている感じはなさそうだ。
「そういえば修学旅行のまわる場所は一緒にできるよね! 納豆たちはどこに行くか決めた? 決めてないなら決めていい?」
「えぇ…………そこはそっちの班員とも相談してくれよ」
来月に迫る修学旅行。どうやら騒がしいことになりそうだ。この日から二子はちょくちょくスマフォで京都を検索していたのでかなり楽しみのようだ。可愛い奴め。
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