4発目 アサルトライフルの乱射は下手な鉄砲ですか?
俺は午後の授業中。彼女になってくれた二子の良いところを頑張って考えていた。まずは顔だ。ハーフの女子の顔は本当に整っている。それから髪も良いし、瞳も綺麗だ。体系は西洋系の血筋か日本の子よりも大人びていてそこも加点だろう。
性格はおいといて…………いや、きっと性格もその…………ペットに餌付けする母性的な? …………いや違うな。
まあ、悪人じゃなさそうだしどっか可愛いとこあるだろ。…………いや俺の両親を追い出したな。あれはどうやったんだ? そもそも俺から両親に連絡するって発想がなかったな。時間が出来たらメッセージでも飛ばしてみよう。
とりあえず今は二子の良いところを見つけなければ。えっと、他には……そうだ。声がきれいだ…………いやこれって外見の一部? か? まあ、いい声だとは思うし。
そんなことを考えていたらあっという間に放課後、俺は二子の方を見ると二子と浅葱と別のクラスからやってきた光の三人が話していた。
「
浅葱がなんかすごいことを二子に話していた。なんだよ遅いとか早いとかないだろ。
「ナットウ君? 昨日から聞こえてたけど、もしかしてナツトのこと?」
「そうそう! 夏人って名前が納豆みたいでしょ? あ! 明科さんって納豆ってわかる?」
「ええ」
納豆の話はどうでもいいだろ。それより、俺はやめておけの続きが気になるな。
「どうしてナツトはダメなの?」
「納豆君は美女なら誰でも良いんです! 明科さんも顔で選ばれただけで内面なんて見ていないんですよ!」
浅葱の言葉には心当たりしかない。中身なんて一切確認しないで付き合ったのは事実だし、今は少しそれを後悔している所だ。だが、俺はまだ別れるつもりはない。
二子はふーん、と浅葱の言葉を聞き流している様子。特に驚いている様子こそないが、内心はどう思っているのだろうか。
「別に選ばれた理由なんてなんでもいいのよ。顔が気に入った? 結構じゃない。私はそれ以外も好きにさせる自信があるわ」
「えと…………それに納豆君は美女なら誰でも告白していて、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで貴女は被弾したのです」
浅葱がそう言い、光が「そうだそうだ!」と俺を非難する。ちょっとショックなんですけど。そう思っていると二子は勝ち誇った表情で言い放つ。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる? まったくもってその通りだわ。下手でも良いからとにかく撃った者が勝ち取るのよ」
「え?」
浅葱と光は完全に固まっている。俺も二子の言葉を聞いて思うとこはあった。告白とは行動した者が勝つ。そして俺は勝った。二子は俺のあり方を認めてくれたような気がした。
「引き金をたくさん引くのは簡単よ。でも、どうしても引きたい一発目を引いたことはあるのかしら?」
そう言われた浅葱と光は何も言い返せない様子だ。こいつらもしかして好きな男子でもいたのか?
そんな風に考えていると浅葱も光も何も言わずにそれぞれの部活に向かった。俺は部活に入っていないので二子と一緒に帰り始める。
俺は意を決して二子の手を握ると、彼女は何も言わずに握り返してきた。嫌われていない。俺の事を認めてくれる。
俺の生き方を笑わない女。外見は最高だけど、中身はクールで少しきつい。俺をペット扱いして可愛がろうとする嫌な面もあるが、俺はこいつが嫌いになれなさそうだ。
「二子…………何か欲しいものとかしてほしい事ってあるか?」
「…………そうね、お昼の件でわかると思うけど私は家事が出来ないわ。頼んでもいいかしら?」
えっと…………プレゼントとか、デートとかキスとかそういうのじゃないのね。そういえば一緒に住んでるんだったわ。今朝事が急すぎてすっかり忘れてた。
「同棲ルールとか決めるか」
「? 私に従えばいいのに?」
なんとなくだけど、こいつのツンとした態度は少し癖になる。辛みのある調味料のように思えてきた。
「掃除は?」
「ナツトがするわ」
「洗濯は?」
「ナツトがするわ」
「下着もか?」
「洗えないの?」
「俺が触ってもいいのか?」
「つまり洗えるのね。ならやって」
二子は相変わらずのクールな顔でそう言い切る。もうさ俺が飼われてるのか俺が飼ってるのかわからねぇよ。
「俺にその見返りというかそのメリットってありますか?」
「…………そうね。考えておくわ。欲しかったわよねご褒美」
やっぱり飼われてるのは俺の方か。てゆうかご褒美くらい俺に指定させて…………くれないよなぁ。
そして帰路は特に何もなく、でも確かに彼女の手をしっかりと握っていた。時々ぎゅっと握ると彼女は窮屈そうにして俺を睨むが、手を振りほどこうとはしなかった。
そして家に着くと、渡した記憶のない我が家の鍵を取り出して家に入る二子。
そして彼女はドアが閉まるのを確認すると玄関で突然脱ぎ始めた。
「何してるんだ二子!!」
ブレザーとスカートを脱いでワイシャツ一枚と下着だけの姿になった彼女は俺の方を振り向いて一言。
「アイロン」
そう言って俺の手元には彼女の脱いだばかりのブレザーとスカート。ワイシャツと下着だけになった彼女はそのまま洗面所に向かっていった。
「黒か……」
俺はそう呟いて彼女の制服に視線を落とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます