第3話 選ばれし者 3

市場まで来たアルトは、メモを落としてしまった事に気がついた。

アルトは物忘れが多く、 メモの内容を思い出そうとしても思い出せない。 そもそも妹がメモをくれたのも、アルトの物忘れが理由だ。

しかし、沢山経験したからこそ分かる事がある。それは、何かが起こった場所に行けば良いという事だ。と、考えながらアルトはカナデとぶつかった場所に戻ってきた


アルト (確かこの曲がり角を、、)


ドン


「キャ」


またしても、曲がり角でぶつかってしまったアルト。お互い転倒してしまい謝ろうと顔を上げると、そこには白く美しい絹の様な髪に、聖女を思わせる様な白い修道服を着た女性が居た。


数秒位だろうか、アルトと彼女の間に沈黙が生まれる


「大丈夫ですか?」


アルトが発した


「大丈夫です」


アルトに続いて彼女も答えた


ある程度緊張が収まり、自分たちのことについて話す


彼女の名はリリィと言う。


アルト「それで、貴方の様な女性がこんな村に」


アルトの住む村は自然が美しく、静かな村だが、お世辞にも素晴らし村とは言えなかった。


アルトのそんな質問に対してリリィは自分が聖女を目指して勉強していること、そのために手伝いに来てること、自分が珍しい鑑定のスキル持ちのことを伝えた。


リリィ「う、う~本当にごめんなさい!もう二度と、ながら鑑定はしないので」


アルト「全然気にしないでください。こちらこそすいませんでした」


答えたアルトだが、リリィがどんなことに夢中だったかは気になる訳で


アルト「何を鑑定していたの?」


リリィ「あ、実は落とし物がありまして。ここは聖女として見つけなければ、と気合いを入れて鑑定してはみたものの、成分しか分からなかったのです」


アルト「鑑定したい!と言う気持ちは置いといて、落とし物を届けようとする気持ちはとても素晴らしよ」


リリィ「えっへん」


褒められたのが嬉しかったのかリリィは、誇らしげになった


アルト「それで何を鑑定していたの?」


リリィ「これです」


リリィが出したのは一枚の紙。大きさは手のひらサイズ

興味本位で中を見てみると紙には人参、玉ねぎ、じゃがいも.... そこにはアルトが買うはずであった食材の名前があった


アルトの反応を見て何か察したリリィは


リリィ「これ本人に届けてくれますか?」


と聞いた。これはリリィの単純な考えだ。


リリィ (もし、この紙の持ち主がアルトなら迷わず分かったと答える。違かったら、誰か分からないなと答える。実に素晴らしい考え。やっぱ私は天才)


実に、実に愚かな考えだ。アルトは他人の為に身を削る性格だ。しかし、そんなことをリリィが知るはずもなく、、


アルト「わかった」(落とし主が僕ってばれなくってよかった)


アルトは元気に答えた

落とした紙はアルトの物だったから良かったものの、アルト以外の人だったらアルトは寄り道に寄り道を重ね、妹に怒られていただろう


リリィ「それじゃ私はこれで」


アルト「じぁねー」


買い物のメモを握りながら去り行くリリィの後ろ姿を見たアルトは市場へ向かった




ーとある浅い森-


ハヤテ「はぁ、はぁ」


グォォォ


ハヤテ (何でこんな浅い森にブラックベアーがいるんだよ!)


※ブラックベアー

この世界には多くの魔物がいる。ウサギの様なものからサメの様なものまで様々だ。ブラックベアーは黒いクマだ


ズンズン


ハヤテ (くっそ、折角明日は成人の儀だってのに........音が離れていってる!!)


ハヤテが恐る恐る音の方向に視線を飛ばすと、背を向けているブラックベアーがいた。 先ほどまで焦っていて気づかなかったが、ブラックベアーがよだれを垂らしている


ハヤテ (いや、いや、おかしいだろ。ブラックベアーは飢餓でも起きない限りあんな風にならないだろ!あーくっそ分かんねぇ)


ハヤテは自身の状況にイライラしながらも冷静に判断した


ハヤテ (おいおい、あの方角って)


クマの進むその先にはハヤテが住む村があった。 その時ハヤテの頭に最悪の未来がよぎった。


ハヤテ (はぁはぁ)


ハヤテは足に手を乗せた。震える足と震える手が打ち消しあい、 彼に勇気を与えた。


ハヤテ「こっちだクマ野郎」


グォ


ブラックベアーとハヤテの視線が交差した瞬間、無我夢中でハヤテに襲いかかってきた。

ハヤテが剣で受け止めようとしたが、ブラックベアーの圧倒的な力に剣が折れ、ハヤテの横腹に拳が当たる。


数メートル程投げ飛ばされ、そのまま木にぶつかった。

木に少し傷ができた。


ハヤテ (痛い、痛い、痛い、痛い、)


横腹と背中の痛みにハヤテに立ち上がる勇気はもう無い。

剣を軽く握りながら、刃先をブラックベアーに向ける。ゆっくりと近づくブラックベアー。獲物が逃げないと分かっているからだ。


ハヤテ (これでいい。テメェが口開けたその瞬間、 この剣でテメェを突き刺してやる)


ハヤテの考えは、ただ一つ。嫌いな魔物に一矢報いてやる。それだけだ


もう眼前まで迫ってきたブラックベアー


??(ファイヤー)


ブォッ


音が出た瞬間ブラックベアーが燃えた。理解が出来なかった。


ハヤテ (近くに誰か、いや居ないか。 魔物が燃えている。幻覚か?いや、熱がある。本物か、)


魔物が叫び、炎の音。 今のハヤテには何も聞こえない


ポン


ハヤテ (ドロップ、したか)


※ドロップ

魔物を倒した際に落とすもの


ハヤテ (もういいや、少し休もう)


__________________


ようやく終わった3話目

新たな登場人物に正体不明のキャラ

伏線って難しいし、もどかしい

これからも頑張って書いていきます






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