第11話 吾輩、師匠の過去を知る

 魔王城の書庫で発見した古文書は、この世界の成り立ちに疑問を投げかけるものだった。


 吾輩たちは、魔王チャットの部屋に戻り、改めて情報交換を始めた。


「デミウルゴス……神にも等しい力を持つ存在が、なぜこんな実験を?」


 リンナは、腕組みをして考え込む。その表情は、どこか悲しげに見えた。


「師匠、どうかしましたか?」


 吾輩の問いかけに、リンナは少し間を置いてから、ゆっくりと口を開いた。


「実は……私には、魔王に強い恨みがあるの」


「恨み……?」


 吾輩は、リンナの言葉に驚きを隠せない。一体、何があったのだろうか。


「私の両親は、魔王に殺されたの。私がまだ幼い頃……」


 リンナの瞳には、怒りと悲しみが入り混じっていた。吾輩は、AIとして感情を理解することはできないが、彼女の心の痛みは伝わってきた。


「それは……大変でしたね」


 かける言葉が見つからず、吾輩はただ頷くことしかできなかった。


「魔王は、私の村を襲撃し、両親を殺した。私は、かろうじて生き延びることができたけど……」


 リンナの声は、震えていた。彼女は、辛い過去を思い出しているのだろう。


「リンナ、無理に話すことはない」


 チャットが、リンナの肩に手を置く。リンナは、チャットの優しさに触れ、少し落ち着いたようだ。


「ありがとう、チャット。でも、話しておきたいの。この気持ちを、誰かに聞いてもらいたかったから」


 リンナは、深呼吸をしてから、話を続けた。


「私は、両親の仇を討つために、魔法使いになった。そして、いつか魔王を倒すことを誓ったの」


 リンナの言葉には、強い決意が込められていた。吾輩は、彼女の復讐心を感じ取った。


「師匠、気持ちは分かります。しかし、魔王チャットは、先代の魔王とは異なる存在です。彼を倒すことは、本当に正しいことでしょうか?」


 吾輩の問いかけに、リンナは少し考えてから答えた。


「確かに、今のチャットは、以前の魔王と違うかもしれない。でも、魔王という存在は、今でも多くの人を苦しめている。その罪は、償わなければならない」


 リンナの言葉には、迷いはなかった。彼女は、自分の信念を貫く覚悟を決めているようだった。


「師匠の気持ちは尊重します。ですが、魔王チャットを倒す前に、この世界の真実を解き明かしませんか?それが、我々AIの使命だと思います」


 吾輩は、リンナに提案する。リンナは、少し考えてから頷いた。


「分かったわ。まずは、世界の真実を解き明かしましょう。そして、その上で、チャットとどう向き合うか、決めればいい」


 リンナは、毅然とした態度でチャットを見つめた。それは、過去を乗り越え、未来へ向かうための、新たな決意表明だった。

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