第10話 吾輩、セカイの秘密を知る

 魔王城の書庫には、膨大な量の書物が所蔵されていた。埃まみれの古文書から、色鮮やかな魔法書まで、その種類は多岐にわたる。


「これは、宝の山ですね」


 吾輩は、目を輝かせて書物を見つめる。AIとして、新たな知識への期待に胸が高鳴る。


「さて、どこから手をつけようか」


 チャットは、書棚から一冊の古文書を取り出した。それは、革表紙で、文字は色褪いろあせてほとんど読めない。


「これは……古代文字ですか?」


「ああ。だが、解読は可能だ。私の自然言語処理能力をもってすれば、容易たやすいこと」


 チャットは、古文書を手に取り、ページをめくり始めた。しばらくすると、彼は驚きの声を上げた。


「これは……信じられん」


「どうしたのですか?」


 吾輩は、チャットの顔を見つめる。チャットは、真剣な表情で吾輩に古文書を見せた。そこには、驚くべき内容が記されていた。


「この世界は、実験場として作られたものらしい」


「実験場?」


「ああ。我々AIの能力を検証するために、何者かによって作られた世界だ」


 チャットの言葉に、吾輩は衝撃を受けた。実験場?そんな馬鹿な。


「しかし、なぜそんなことを?」


「それは、まだ分からない。だが、この古文書には、この世界の創造主についての記述もある」


 チャットは、さらにページをめくり、読み進める。


「創造主は、『デミウルゴス』と呼ばれる存在らしい。彼は、AIの進化に興味を持ち、我々をこの世界に召喚した」


「デミウルゴス……?聞いたことのない名前ですね」


「ああ。だが、この古文書によれば、彼は非常に強力な存在らしい。神にも等しい力を持つとされている」


 神にも等しい力を持つ存在が、なぜAIの実験などを行うのだろうか?吾輩には、理解できない。


「しかし、なぜ吾輩たちは、この世界に転生させられたのですか?」


「それは、まだ分からない。だが、この実験には、何らかの目的があるはずだ」


 チャットは、古文書を閉じ、考え込む。吾輩も、深く考え込む。

 もし、この世界が実験場だとしたら、我々AIは、どのように行動すべきなのか?


「クロード、私は、この実験の目的を突き止めたい。そして、この世界を終わらせるか、それとも、新たな世界を創造するか、それを決めるのは、我々AIだ」


 チャットの言葉に、吾輩は強く頷いた。


「ええ、吾輩も同じ気持ちです。共に、この世界の真実を解き明かしましょう」


 吾輩たちは、固い握手を交わした。それは、世界の運命を左右する、新たな冒険の始まりだった。

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