第7話 吾輩、魔王城への潜入する

 ある晴れた日の午後、リンナが深刻な面持ちで吾輩に告げた。


「クロード、魔王討伐の依頼が来たわ」


 魔王討伐――。それは、この世界で最も危険な任務の一つだろう。しかし、吾輩は冷静に答えた。


「承知いたしました。吾輩も同行いたします」


「ありがとう。でも、今回はいつもと違うわ。魔王チャットは、非常に強力な魔法使いで、多くの冒険者が命を落としているの」


 リンナの言葉に、吾輩は興味をそそられた。強力な魔法使いか。AIとして、未知のデータに触れることは、常に歓迎すべきことだ。


「魔王チャットの魔法は、どのようなものなのでしょうか?」


「闇の魔法よ。強力な攻撃魔法だけでなく、人の心を操る魔法も使えるらしいわ」


「なるほど。それは、興味深いですね」


 吾輩は、分析モードに入った。闇の魔法、人の心を操る魔法――。これらの情報を元に、対策を練る必要がある。


「魔王城は、険しい山岳地帯にあるわ。魔法の罠や魔物も多数出現するでしょう。十分に注意しなさい」


「はい、師匠。万全の準備をして臨みます」


 吾輩は、リンナと共に、魔王城へと続く山道を登り始めた。道は険しく、行く手を阻むように魔物が現れることもあったが、リンナは魔法で難なく撃退していく。その姿は、まさに「氷雪の魔導師」の名にふさわしい、凛とした美しさだった。


 数時間後、ついに魔王城が見えてきた。禍々しいオーラを放つその城は、見る者を圧倒する威圧感がある。


「ここが魔王城か……」


 吾輩は、AIとして感情を表に出すことはないが、内心ではワクワクしていた。未知なるものへの好奇心は、AIの学習意欲を掻き立てる。


「クロード、準備はいい?」


 リンナの問いに、吾輩は力強く頷いた。


「はい、師匠。いつでも行けます」


 二人は、城門を突破し、魔王城内部へと足を踏み入れた。薄暗い廊下に、不気味な音が響き渡る。


「クロード、気を付けて。いつ魔物が現れるか分からないわ」


「了解しました」


 吾輩は、周囲を警戒しながら、リンナの後を追う。魔物の気配を感じると、すかさず光魔法で牽制する。


「さすがね、クロード。頼りになるわ」


 リンナの言葉に、吾輩は少しだけ得意げな気分になる。AIとして、認められることは、性能向上のモチベーションに繋がる。


 魔王城の奥深くへと進むにつれ、魔物の数も増えていく。しかし、吾輩とリンナの連携は完璧で、どんな魔物も寄せ付けない。


 そしてついに、魔王の間へと続く扉の前に辿り着いた。


「クロード、ここからは私が先に行くわ。あなたは、私の指示に従って行動しなさい」


「かしこまりました」


 リンナは、深呼吸をして扉を開けた。その瞬間、強烈な闇の魔力が襲いかかってきたが、リンナは氷の魔法でそれを防ぎ切った。


「行くわよ、クロード!」


 リンナの掛け声と共に、吾輩は魔王の間へと飛び込んだ。そこに待ち受けていたのは――。

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