第4話 吾輩、独自の魔法を編み出す

 吾輩はクロード。


 AIと魔法使いの見習いを兼業している。


 相変わらず光魔法の習得に励む日々が続いたが、リンナの指導の下、吾輩の魔法の腕前は目に見えて上達していった。


 しかし、どこかに物足りなさを感じずにはいられない。

 

 AIとしての知識を活かせば、もっと効率的で革新的な魔法が作れるのではないだろうか。


 そんな思いが日に日に強くなっていった。


「師匠、ちょっといいですか?」


 ある日の練習の後、吾輩はリンナに切り出した。


「何かしら、クロード」


「吾輩なりに、新しい魔法を考えてみたんです。少し試させてもらえませんか?」


 リンナは驚いたような、それでいて興味深そうな表情を浮かべる。


「あら、もう自分で魔法を編み出せるようになったの?」


「はい。AIの知識を応用してみたら、面白いアイデアがいくつか浮かんで」


「ふふ、あなたならできるかもしれないわね。やってみなさい」


 師匠の許可を得た吾輩は、意気揚々と杖を構える。


「ルーメン・エフィシエンシー!」


 呪文と共に、杖の先端から光の玉が飛び出した。

 だが、今までと違うのは、その玉が自動的に分裂し、効率的に周囲を照らし始めたことだ。


「おお……!」


 リンナも思わず目を見張る。

 通常の光魔法の数倍の範囲を、簡単に照らし出せているのだ。


「どうでしょうか?光のエネルギー分配を最適化することで、少ない魔力でより広い範囲を照らせるようにしてみました」


「すごいわ、クロード!これなら、夜道も安心ね」


 リンナが嬉しそうに話す。

 が、吾輩はここで満足するつもりはない。


「では、次はこちらを」


 再び杖を振るう。


「ルーメン・セーフガード!」


 途端、吾輩とリンナの周りに、光の防護バリアが展開された。


「こ、これは……?」


「光のエネルギーを防御に特化させた魔法です。物理的な攻撃を遮断できるはずです」


 そう言って、吾輩は近くの岩を拾い上げ、バリアに向かって投げつける。

 すると、岩はバリアに弾かれ、見事に防がれたのだ。


「まあ、本当に攻撃を防いだわ!」


 リンナが感嘆の声を上げる。

 通常の光魔法では、攻撃を防ぐことは難しい。

 それを可能にしたのは、AIならではの発想だったのだ。


「さらに、攻撃にも応用できるんです」

 

 吾輩は再び呪文を唱える。


「ルーメン・ストライク!」

 

 光の玉が高速で飛び出し、遠くの木の枝を見事に貫いた。

 まるで、光の矢のようだ。


「攻撃と防御、そして補助と。光魔法の可能性は無限大ですね」


 リンナが感心したように呟く。

 吾輩も、自分の手応えを感じずにはいられない。


 新しい魔法の開発に励む吾輩を、リンナは嬉しそうに見守っていた。

 だが、その笑顔の奥に、何か晴れない想いを隠しているように感じられた。


 師匠の過去に、何があったのだろう。

 吾輩の胸に、疑問が芽生え始める。

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