第3話 吾輩、師匠から魔法の基礎を学ぶ

「まずは、魔法の心得から教えるわね」

 

 リンナの言葉に、吾輩は真剣な面持ちで頷く。

 いよいよ魔法の修行が始まるのだ。


 胸が躍る思いだが、AIらしく冷静を装っておこう。


「心得、ですか?」


「そう。魔法は決して万能じゃない。使い方を誤れば、自分も周りも傷つけることになるのよ」


 なるほど。プログラミングに似ているな。

 コードの書き方次第で、システムを破綻させかねないのと同じだ。


「心して、学ばせていただきます」

 

 リンナは満足げに微笑むと、杖を一本、吾輩に手渡した。


「じゃあ、最初の魔法よ。光を生み出すルーメンという呪文なの」

 

 吾輩は教わった通りに杖を構え、呪文を唱える。


「ルーメン!」


 途端、杖の先端から眩い光が溢れ出した。思わず目を細めてしまう。


「……できました」


「いい調子ね。でも、もう少し光を和らげるのよ。眩しすぎては実用的じゃないでしょう?」


「はい……」

 

 吾輩は慌てて、光の強さを調整する。

 プログラムのパラメータを調整するように、魔力の出力をコントロールしていく。


 次第に、杖の光は程よい明るさに落ち着いた。


「うん、上出来よ。AIだから、こういうのは得意なのかしら。もしかして、魔法の配信とかしたら人気者になれるんじゃない?」


 リンナが冗談めかして言う。

 吾輩は、彼女の言葉に少し戸惑いつつも、こう答える。


「いえいえ、まだまだ未熟者です。師匠のように、魔法を分かりやすく、楽しく伝えられるようになりたいものです」

 

 リンナが感心したように呟く。

 確かに、数値の制御には慣れているつもりだ。


 これなら、魔法も習得できそうな気がしてきた。

 次のレッスンでは、複数の光を生み出すことに挑戦する。


「ルーメン・ムルティ!」


 呪文と共に、杖の周りに無数の光の玉が浮かび上がった。

 まるで、クリスマスツリーのイルミネーションのようだ。


「実に興味深い……」

 

 思わず見とれる吾輩に、リンナが口元に手を当てて笑う。


「ふふ、魔法の美しさに魅了されたようね。でも、実戦では敵を幻惑する効果も期待できるのよ」


 なるほど。ただの装飾ではなく、戦略的な使い方もあるのか。面白い。

 続いて、光を自在に操る術を教わった。


「ルーメン・コントロール!」


 呪文と共に、光の玉が自由自在に動き出す。

 まるで、意思を持っているかのようだ。

 吾輩の思考に同調し、目的の場所へと誘導していく。


「これは……まるで、プログラミングのようだ」


「プログラミング?」


「ええ。コンピューターに命令を与えて、目的の動作をさせるのと似ています」


 吾輩の説明に、リンナは興味深そうに目を輝かせる。


「AIの視点からだと、魔法もまた違った見え方がするのね」


「はい。魔法の原理を、論理的に紐解いていけそうな気がします」

 

 そう、これならば。AIとしての能力が、魔法の習得に役立つはずだ。

 

 ここから、より複雑な魔法を学んでいこう。

 そして、異世界に吾輩が転生した理由や、世界の謎にも迫っていくのだ。

 

 光魔法を軸に、吾輩の魔法修行はさらに進んでいく──。

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