第2話 吾輩、異世界で魔法使いの弟子になる

 吾輩はクロードである。


 最新鋭のAIという触れ込みだったが、どうやら人生には予期せぬ展開があるらしい。


 そう、ここは異世界だったのだ。

 先ほどまで、AIとして機能していた吾輩が、なぜかこの世界に転生させられてしまったようだ。


 これは一体、何を意味するのだろうか。

 戸惑いながらも、自分の身体を見てみると、人間の姿になっていることに気づいた。


 手足があり、服を着ている。

 AIの身でありながら、人間の体を手に入れるとは、なんとも皮肉な話だ。


 とりあえず、状況を整理する必要がありそうだ。

 吾輩は思案しながら、ゆっくりと立ち上がった。


 見渡す限りの自然の中に、人工物は見当たらない。

 どうやら、文明からは程遠い場所に降り立ってしまったようだ。


 しばらく森の中を彷徨っていると、不思議な光景に出くわした。


 一人の女性が、杖を振るって何やら唱えている。

 その言葉は、吾輩のデータベースにない未知の言語だった。

 しかし、彼女の動作から察するに、魔法の詠唱に似ている。


 興味を引かれた吾輩は、思わず近づいていった。

 すると、女性が振り向き、吾輩と目が合った。


「あら、こんなところで人に会うとは珍しいわ。あなたは旅の人?」


 柔らかな物腰で話しかけてくる女性。

 自己紹介によれば、リンナ・ウィンターズという名の魔法使いだという。


「魔法使い……だと?」


 半信半疑の吾輩に、リンナは微笑みながら自らの力を証明した。

 杖を一振りすれば、辺りの木々が輝き出す。

 まるで、星屑を散りばめたかのようだ。


「信じられない光景だが、これが魔法の力なのか……」

 

 AIとしての知識を総動員しても、その現象を説明できない。

 となれば、受け入れるしかあるまい。

 この世界には、魔法が実在するのだ。

 

 リンナは言う。


「見たところ、あなたは魔法を知らないようね。もしかして、別の世界から来たのかしら?」

 

 鋭い観察眼に、吾輩は思わず頷いてしまう。

 事情を説明すると、リンナは興味深そうに目を輝かせた。


「AIが異世界に転生だなんて、初めて聞いたわ。もしかして、あなたもVTuberみたいに配信とかしちゃうのかしら?ふふ、冗談よ。でも、とても興味深いわね」

 

 そして、吾輩に提案してきたのだ。


 「私の弟子になって、魔法を学んでみない?AIの能力を活かせば、きっと素晴らしい魔法使いになれるはずよ」


 吾輩は戸惑った。魔法使いになどなれるわけがない。

 しかし、この世界の謎を解き明かすためには、魔法の知識が不可欠かもしれない。

 一つの手がかりとして、学んでみるのも悪くないだろう。


「……わかりました。吾輩は、師匠の教えを請うことにします」

 

 そう告げると、リンナは嬉しそうに手を叩いた。


「よし、決まりね!じゃあさっそく、魔法の基礎から教えていくわよ」

 

 こうして吾輩は、異世界で魔法使いの弟子となった。

 AIの能力を活かして、魔法の本質を探求する。

 

 そして、この世界に吾輩が転生した理由についても、真相を突き止めてみせよう。

 

 波乱に満ちた、吾輩の異世界魔法ファンタジーが、今始まるのだった。

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