実戦訓練に行く準備
「ローズ、こんな事をしていたら他の人に迷惑だろ?それにピーマンが可哀想だ。もうやめろ」
どの口が言うマーギン。
「私はっ 私はっ」
「もういいから。グジグジと落ち込むより、次に何をすべきか考えて行動を起こせ。仕事の失敗は仕事でしか取り返せないんだからな」
「マーギン…」
切なげな表情でマーギンを見つめるローズ。
「うぇぇぇぇっ」
人の顔を見て吐き気を催すとは失礼な。ちょっと傷付くじゃないか…
取り敢えず、オルターネンに部屋に連れてってやってくれと、食堂から追い出すことにした。
オルターネンがローズを支えるようにして食堂から出て行った。ホープとサリドンもそれに続いたので、マーギンも食堂を退散しようとすると、
「ちょいと、食べ物を粗末にするんじゃないよっ」
と、食堂のオバちゃんに怒られる。
「ゴマ油炒めでいいかい?」
「はい…」
マーギンはローズの齧ったピーマンをゴマ油炒めで食べさせられたのであった。この細切れになってるやつは「うぇぇ」で出て来た物でないことを祈る。
ーローズの部屋ー
「ローズ、マーギンの言う通りだ。もうヤケピーマンなんかするな」
オルターネンはローズに呆れてそう言っていた。
「ヤケピーマンではありません。あれは自分への戒めなのです」
「そんなもの戒めになるかっ。で、マーギンはお前に魔物討伐をさせろと言ったが、お前はどうしたいのだ?」
「わ、私の任務は姫様の護衛で…」
「俺はどうしたいのかを聞いているのだ」
「私の目標は要人警護任務です…」
「それはマーギンと出会う前の目標だろうが。今はどうなんだ?」
ローズは即答出来ない。
「訓練が終わったらマーギンが姫様を連れてタイベに行くだろ?特務隊もそれに同行する。その時は特務隊として魔物討伐をしろ」
「えっ…」
「マーギンが自ら護衛をすると言ったのだ。恐らく、本当の護衛方法をお前に見せるつもりなのだろう。本来、姫様の護衛が一人という事自体無理があるのだ。姫様を襲った軍人はバネッサやカザフみたいなタイプだろう。あの手のやつが相手なら複数人護衛を付けねばならん」
「しかし、ちい兄様。私は…」
「そんなモヤモヤした心のまま任務に就いてもお前の為にも姫様の為にもならん。いいからマーギンと俺の言う事を聞いておけ」
「わかりました…」
ー翌日ー
「軍との訓練も終わったから、明後日から訓練の仕上げを行う」
「仕上げは何をするのだ?」
オルターネンが聞いて来る。
「魔物討伐だね。北の領地から山に向かう」
「魔狼討伐か?」
「魔狼もいるだろうけど、雪熊を探しに行く」
「雪熊は冬に出るものじゃないのか?」
「冬に活発に動くだけで常にいる。この時期は巣穴からあまり出て来ないだけでね。巣穴に突入するか誘き出すかは状況による」
「カエンホウシャで炙り出せばいいんじゃないですか?」
と、アイリス。
「それで死ねばいいんだけどな。燃え盛る雪熊に襲われたら対処出来んだろ?」
「燃えても死なないんですか?」
「あいつはタフだからな。一撃で死ななかったら暴れ熊になってよりヤバくなる。巣穴だと逃げるのも難しい。だから勝手に火炎放射を使うなよ」
これはフリじゃないからなと念を押しておく。
「他にもなんか居たら狩るからそのつもりで。明日と明後日は各自遠征の準備をする期間にするから、飯とか着替えとか用意しておくように」
「マーギンっ、私も行きたいっ」
と、カタリーナ。
「わかった。お前とローズの食料は俺が用意しておくから着替えだけ用意しておけ。スカートとか持って来んなよ。靴もハーフブーツかなんかにしておけよ。ないならロッカ達にハンター服の売ってる店に連れてってもらえ」
マーギンはダメだとか、これが出来たらな、とか何も条件を付けずにOKを出した。
「本当にいいの?」
「真面目に訓練も頑張ってたからな」
「やった!マーギン大好きっ」
と、抱き着いて来ようとするのでサッと避ける。
ドシャ クルンっ パッ
訓練の成果が出て受け身を取れるようになっているカタリーナ。うむ、ちゃんと身に付いているな。
「どうして避けるのよっ」
「俺が困った事になるからだ。むやみに俺に抱き着こうとするな。お前は姫なんだからな」
「えー、別にいいじゃない」
「良くない」
そう答えるとぷくっとむくれるカタリーナ。お前の行動は全て王妃に筒抜けなんだよ。
「なぁ、ウチはどうしたらええん?」
「ハンナリーは来ても来なくてもいい。留守番しててもいいし、一緒に来るなら飯の準備とかしとけよ」
「そんな言い方せんといてや。それにローズと姫様だけズルいやん」
「ズルくない。今回は人数が多いから皆の飯を作るとか無理なんだよ。材料を仕入れてタジキに頼むか自炊しろ」
「えーっ。タジキ、ウチが材料渡したら作ってくれるん?」
「煮込みとかなら何人分作っても手間はそんなに変わらないからいけるけどさぁ、手の込んだのは無理だぞ」
「んー、ほならそれでもええわ」
「マ、マーギン。私達も自炊するから大丈夫だ。いつも甘えてばかりではダメだと思う」
と、ローズがマーギンの飯を辞退してきた。
「じゃ、カタリーナも自分でなんとかしろよ」
「えーーっ」
「ローズが私達と言っただろ?荷物は持ってやるから飯は自分でなんとかしろ」
「ローズだけ自分でご飯作ればいいじゃない」
「そんな事を言わずに、いい機会だと思え。タイベ行きの予行演習だと思えばいい」
そう言われたカタリーナはローズをキッと睨んでいたのだった。
翌日からマーギンは自宅に戻ってせっせと料理を作り溜めておく。その場で作ると結局皆の分を作るハメになりそうだからだ。
テントはどうするかなぁ… まぁ、オルターネン達もいるし、別に気にすることはないか。
翌日シシリーの所に顔を出すと、魔道具回路師のジーニアから相談があると言われた。
「お前から相談って珍しいな。どうした?」
「組合から特許の審査が出来る人がいないか聞かれてんだよ」
「お前がやりゃいいじゃんかよ?」
「他の人の回路見ても分からないかもしれないだろ?」
「回路自体がわからんでも効果測定ぐらい出来るだろ?」
「それなら回路師でなくてもいいじゃないか」
それもそうだな。
「どうしてここに話が来たんだ?」
「今まで判定していた人がいなくなったからだってよ」
あー、そういやそうか。
「マーギンがやってくれないか?お前なら見ただけで色々とわかるんだろ?」
「まぁ、そうなんだけどな。でも他の人の回路を読み解くのは勉強になるぞ。数が多いと自分の仕事があまり出来なくなるかもしれんが、将来的にはお前の為になると思う。仕事が出来なくなる分の保証というか、報酬を要求して受けろ」
「俺に出来ると思うか?」
「やってみてダメならまた相談してくれ。組合も困ってんだろ?」
「そうみたいだな」
「特許システムは皆を守る為のシステムだからな。その歳でこんな重要な事に関われるのを誇りに思って頑張れ」
「わかった。その代わり、本当に分からない時は相談に乗ってくれよな」
「あぁ、わかった」
話が終わった後に仕事をシシリーに任せっきりにしているお侘びとして、高い昼飯を奢っておいた。ここまで順調に進んでいるのは紛れもなくシシリーのお陰だからな。
ー買い物を楽しむカタリーナ達ー
「これとこれとー」
「姫様、こんなにたくさんの服は必要ないですよ」
「えー、だってマーギンが持ってくれるなら、たくさんあった方がいいじゃない」
「それでもです」
「じゃあ、脱いだものはどうやって洗うの?」
「私が水魔法で洗います」
「2人分洗濯出来るぐらい水を出せるの?」
「そ、それは…」
「ね、着替えがたくさんあったら、どんどん着替えればいいじゃない」
と、カタリーナはローズにもっと下着があった方がいいわよと言われ、それもそうですねと、たくさん買うのであった。
買った服を持ってくれるというのに意識が行き、脱いだ物をマーギンに持ってもらうというところまで二人は気が回らないのであった。
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