ハラスメント姫

早くどっかに行ってくれ。お前はどうでも良いが、ローズにこんな姿を見られたくはないのだ。お前がここにいるとローズもいる。トントンとか出来ないじゃないか。


悶絶しながらカタリーナをしっしっと追い払ったマーギン。



「ねぇローズ、そんなに凄い攻撃を食らった訳じゃないのにどうしてマーギンはあんなに痛がっているの?」


「そ、それはその…」


「ねぇ、どうして?」


「マーギンは男性ですので…」


ローズには自分以外に男3人兄弟がいる。当然どのような状況になっているのか想像が付いている。自分も子供の頃、剣の稽古でわざとではないが、ちい兄様にやったことがあるのだ。カタリーナにも兄はいるが、そのような事は知らない。


「男性だったらどうして痛いの?」


「あの、その…」


「どこが痛いの?」


ナチュラルにセクハラを続けるカタリーナ。ほら、恥ずかしがらずに言ってごらん?みたいな状況だ。


「それは…マーギンの……」


カタリーナに言葉攻めを受けているローズは真っ赤になってもうすぐクッコロさんになりそうだ。


ねえっ!ねえってば!! っとしつこくナチュラルセクハラをする姫様。


「大隊長がご存知ですっ」


そして大隊長をカタリーナに売ったのだった。カタリーナはどうして?どうして?とターゲットを大隊長に切り替えた。


「ローズ、今日は宿舎に戻れると思うなよ」


「は、はひ…」


そして、大隊長はオルターネンに振る。


「ホープ、お前が説明せよ」


オルターネンはそれを華麗にスルーパス。


「えっ?」


「隊長命令だ」


こうしてオルターネンに姫様を|擦(なす)り付けられたホープ。それは休息ポイントまで続き、ホープがクッコロになったのだった。



ー休息ポイントー


「なぁ、どっちがすげーと思う?」×2


いつものバネッサとカザフとの獲物自慢。ただ今回は石ではなく、狩った獲物だった。


「なんだこの鳥は?」


オルターネンは知らないようだ。


「ホロメン鳥ですね」


と、サリドンが答える。


「お前知ってんのか?これ」


「ええ、バネッサさん。私は田舎の出ですから子供の頃に狩りとかもしていたのですよ。でも凄いですね。ホロメン鳥は滅多に見かけない上にすぐに逃げるのに2羽も狩れるなんて」


「へへっ、まぁな」


褒められると嬉しいバネッサ。


マーギンが遅れて登場。


「あれ?ロドは?」


「先に王都に戻った。それよりマーギン、見てくれよ。俺とおっぱいが狩ったんだ」


「へぇ、王都周辺にも居たんだな」


もうバネッサをおっぱい呼ばわりしても誰も反応しない。


「マーギン、これは南国にいる鳥じゃないのー?」


タイベの森でホロメン鳥を狩ったのはトルクだ。ここにもいるのかと不思議に思ったようだ。


「そうだな、どちらかと言えば暖かい地域にいるけど、まぁ王都周辺にいてもおかしくはないな」


季節はもう夏前だしな。


「で、どっちがすげぇ?」


とカザフが聞いてくる。


「こっちだな。見事に首を斬って絶命させているな。こっちは胴体に刺さった跡が残ってる。こいつはクナイで仕留めたんだろ?2羽共見事だが、首を狙って仕留めたなら首を斬った方が凄い」


そう言うと、バネッサが小さくガッツポーズをした。


「ちぇっ」


「でもな、クナイでこいつを仕留められた事自体が凄いぞ。かなり近付いただろ?」


「うん」


「それだけ気配を上手く消せていたという事だ。自慢していいぞ」


「ほんとかっ」


「あぁ。バネッサと同じぐらい気配を消せているなら超一流だ」


カザフも褒められて嬉しそうだった。


「タジキ、みんなの昼飯は俺が用意するから、お前はホロメン鳥を捌け。カザフ、大きな笹の葉がなかったか?」


「あったぞ」


「それをたくさん取ってきてくれ」


星の導き達とハンナリーは笹の葉取り、特務隊は石で竈作り、ローズとカタリーナは見学。


マーギンは昼飯の準備をする。カルボナーラでいいか。


組んだ竈で焚き火をして、大釜でパスタを茹でる準備。魔導鉄板でベーコンを炒めておいて、パスタを鍋に投入。ボウルに卵黄と茹で汁少々とチーズを削って混ぜておく。そこに炒めたベーコンとその油を入れて塩をちょい足し。湯で上がったパスタを投入して軽く火にかけて混ぜ混ぜと。


「はい、ローズとカタリーナの分。順番に作るから」


同じ工程を繰り返していく。大隊長と特務隊の分を作り終えたら、笹の葉を山程抱えてみんなが戻って来たので、二人分ずつ作っていった。


おかしい。いくら作っても終わらない…


「おいっ、みんな大盛りで作っただろ。お代わり欲しいなら自分で作ってくれ」


まったく、俺は飯屋じゃないんだぞ。


材料をどんと出すと誰も作ろうとしなかった。なんて奴らだ…


最後に自分の分とタジキの分を作って食う。


「タジキ、上手く出来たか?」


「多分。食い終わったら見てくれよ」


「了解」


カルボナーラの最後の一口を食おうとすると、アイリスが隣に来て口を開けたので、食わせておいた。


「タジキ、上手く捌けてるぞ。じゃ、スパイスを振って、お腹にじゃがいもと玉ねぎを詰めておいてくれ。他に何か入れたい物があったら入れてもいい。1羽はオーソドックスに、もう1羽は自分でアレンジしてもいいと思うぞ。この中に入ってるもの好きに使え」


マジックバッグをタジキに渡して、他の皆で笹の葉を編む。


「こうしてこうして、大きな葉っぱにしてくれるか」


皆でやればすぐに出来るだろ。


シスコ、バネッサは上手く編めているが、ロッカは苦手そうだな。笹の葉ちぎるとかどれだけ力を入れてんだお前は?


ローズが「あっ」と声を上げたので見ると葉っぱがちぎれていた。ローズよ、君はロッカと同類だったか…


カタリーナもアイリスも上手いな。ハンナリーはまぁそこそこ。


そしてなぜか特務隊もやっている。


「ホープ、お前笹編み職人として食っていけるぞ」 


「馬鹿にしてんのかっ」


いや、本当に職人かと思うぐらいだ。きっと、きっちりとした性格なんだろうな。バネッサの部屋とか見せたら暴れるかもしれん。


オルターネンはもちろんロッカ組。一番驚いたのが大隊長。


「大隊長、上手いですね」


「あぁ、編み物も得意だ」


熊が着ては貰えぬセーターを編む姿を想像する。


「決してここを開けるな」


と、言っているのに開けたら、熊が自分の毛を抜いて、セーターを作っている姿を想像した。


「誰かに恩返しするんですか?」


「何の事だ?」


「いえ、別に…」 


くだらない妄想はやめておこう。


タジキも準備が終わったようなので、笹の葉を編んで作った大きな葉っぱで包んでいく。泥を使う予定なので2重にしておこう。


カルボナーラで使わなかった卵白と土を混ぜていく。


「タジキ、これを塩釜みたいに塗ってみろ」


タジキにやらせて準備完成。


「これは泥窯焼きっていうのか?」 


「いや、乞食鶏って言うんだ」


と、名前の由来で諸説あるうちの一つを教える。


「へぇ、地面に埋めて上で焚き火をするのか」


「やった事ないけど、土に埋めるとちゃんと焼けないんじゃないかと思うぞ。これは大将の所で焼く」


「え?」


「大将に食って貰いたいんだろ?晩飯はリッカの食堂が閉店したらそこでみんなで食おう」


「うん♪」




そして、王都に戻ってきた。


「ローズ、いつから新しい家に住むんだ?」


「もう住めるようになっているからいつでも良いのだが」


あそこに引っ越したら、24時間ずっと仕事しているのと変わらんな。


「明日、あの家に防犯魔法陣を組むわ」


「え?」


「夜ぐらい安心して寝たいだろ?賊が侵入しない仕組みを作る」


「いいのか?」


「どこかに情報は漏れていると思った方がいい。だから今日はあそこに泊まるな」


「分かった」


「マーギン、飯はどうするのだ?」


と、オルターネンが聞いてくる。


「俺達は大将の店の閉店を待って、そこで、タジキの作った鳥を食うよ」


「葉っぱで包んだやつだな」


「そう。ちい兄様も食べに来る?」


ちい兄様呼びには怒らないオルターネン。


「では、一度宿舎に戻って着替えて来よう。鎧姿ではゆっくりと食えんからな」


「うむ、そうしよう」


あ、大隊長も来るのね。


星の導き達も一度家に帰ってから来るらしい。


「ローズ、うちで閉店まで待つ?」


「いいわよっ」


ローズに聞いたのに返事をするカタリーナ。


家に戻り、先に風呂に入ら…


カタリーナを風呂に入れたらまずいのではなかろうか?


「姫様、お風呂の使い方教えるね」


悩んでいる間にトルクが案内していった。ローズも一緒に入るらしい。


もう気にしないでおこう。俺は風呂に入れとは言ってない。


「タジキ、大将の所で焼こうかと思ってたけど、時間が掛かるからここで焼いて持っていくぞ」


オーブンに入れて待つだけ。他にも何か作っておくか。


「タジキ、ハンバーグを作るか?」


「うん」


アイリスがハンバーグ食べたいとか言い出すだろうからな。ハンナリーは魚か。あ、ライオネルでもらった鯛があるな。鯛飯でも作るか。


マーギンとタジキはせっせと料理を作るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る