たこ焼きと足焼き
小麦粉を出汁で溶いて卵をいれる。
「そんな汁に浸けて食べるんか?」
「違う。これをこの鉄板の所に流し込んでタコ、ネギ、天かすを入れて、少し焼けてきたらこうひっくり返していく。で、焼けて来たらくるくると形を整えていくんだ」
「めっちゃおもろいやん。うちにもやらせてぇな」
「じゃあ、今焼けたやつを半分やるから、次のは自分の分を焼いてみろ。失敗しても自分で食えよ」
「ええで」
焼けたタコ焼きをはんぶんこしてから次の材料を入れていく。ハンナリーがタコ焼きに挑戦している間にもう一品作るか。
マーギンはレモン酎ハイを飲みながらタコの唐揚げを揚げていく。
「ちゃんと出来てるか?」
「ほら見てみぃ、ちゃんと丸なってるで」
初めての挑戦で凄いなコイツ。テキ屋やったらいいのに。
「そっちは何作ってるん?」
「タコの唐揚げだ。酒のツマミだな」
「うちも食べる」
「ちゃんとあるからタコ焼きを仕上げてしまえ」
と、ハンナリーの焼いたタコ焼きも半分こして、タコ焼きとタコの唐揚げで飲む。
「めっちゃ旨いなぁ。なんで自分こんな料理出来るんや?食堂してたん?」
「俺は昔宮廷魔導師の飯を作ってたんだ」
「へぇぇっ めっちゃ凄いやん」
ハンナリーは凄いと褒め称えてくれるけど単にミスティの飯を作っていただけだ。それにこれは召喚時に得たチート能力の一つだろう。恐らくミスティは俺を召喚する時に美味しいご飯を一緒に食べてくれる人とかの願いを込めていたのかもしれない。料理の知識は漫画で読んだぐらいしかなく、自分でご飯とか作った事がなかったからな。初めはいっぱい失敗したけど何でも作れるようになったのが自分でも不思議だ。
「ハンナ、お前は商売人になるだろ?」
「そやで」
「商売人にとっていちばん重要な事はわかるか?」
「金やな」
「それもあるけど、商売する時の心構えの事だ」
「んー、好奇心とか?」
「それも重要だな。でもこれを失うと商売人としてやっていけない事はなんだと思う?」
「んー、何やろな。ぎょうさんあるから難しいわ」
「商売人に取っていちばん重要なのは信用だ。これを失うと仕入れも販売も出来なくなる」
「そらそうや」
「俺が今から話す事は皆にも秘密にしておいてくれ」
「わかった。真面目な話なんやな?」
「そう。お前を調べていいか?」
「ぬっ、脱いだらええんか?」
と、モジモジするハンナリー。
「違うわバカ。お前の能力を調べたいんだよ」
「そんなん調べられんの?」
「魔法書店では10万G取って魔道具で調べるんだよ。その人が持つ魔力値や適性のある魔法属性を調べるんだ」
「なんや店でやってることやったら秘密とちゃうやん」
「でな、鑑定する魔道具はここに持ってきていないんだ」
「ほなら王都に戻ってから調べるんか?」
「いや今調べる。だから秘密にしてくれと言ったんだ」
「どういうこっちゃ?」
「鑑定するのに魔道具はいらないんだよ。本当は魔法で鑑定しているけど、これが出来る人は他にはいないかもしれないぐらいレアな魔法だ。だから魔道具で鑑定していることにしている」
「ほならマーギンが鑑定魔法ちゅうのを使える事を隠しとけってことか」
「そうだ」
「人の事とかベラベラ喋るわけないやん」
「だったら調べるぞ」
「ええで。何されるん?」
「そのまま座ってればいい。すぐに終わる」
ということで鑑定。
えーっと、ぶっ
あまりの驚きにマーギンは吹き出した。
「ツバ飛んで来たやんかっ」
「ご、ごめん。ちょっと驚いてな。お前いくつだ?」
「じゅ、18やで…」
と目線を逸らす。本当は14歳だったのかコイツ。獣人要素が出ているから成長が早いのかもしれん。これは黙っといてやるか。
まぁ、年齢の事はどうでもいい。それより魔力値と属性の適性の方に驚いた。魔力値が1200超えなのとやはり闇属性がSだ。それと水属性と無属性はEで他は適性なし。闇属性に全振りしたような適性だ。こんなの見たことがないぞ。
「お前、小さな頃によく熱を出してなかったか?」
「そんなんまで解るんか?」
もしかしたら獣人は成長が早いようだから、身体が魔力暴走に耐えられたのかもしれん。この仮説が正しければ獣人には魔法使いの素養を持った奴がたくさん居てもおかしくない。それと肉体的に優れた者も多い。ハンナリーもスピードがAだ。他は全てC。闇属性とスピードに特化したって感じだな。
さて、ハンナリーに何の魔法を教えるべきか…
「なぁ、うちはなんか変なんか?」
ハンナリーを鑑定した後にマーギンは考え込んで黙ってしまった。
「なあってばっ!」
「えっ?あぁ、ごめん。変っちゃ変だな」
「や、やっぱりこの耳が原因なんか…?」
「いや、お前のお陰で新しい発見があるかもしれない。お礼にお前を守る魔法を教えてやるよ」
「え、他の魔法も使えるようになるん?」
「お前が使ったラリパッパという魔法はデバフ系と言ってな、相手を状態異常にさせる為の魔法だ。まぁ楽しませる事も出来るから特殊な魔法なのは確かだな」
「ほんで?うちを守る魔法ってなんや?」
「ラリパッパは人間にしか効かない可能性がある。それに発動まであれだけ時間が掛かるといざという時には使えない。だから瞬時に発動する魔法を教えてやる。俺がよく使うパラライズという麻痺魔法だ。ライオネルの組合長に掛けた魔法だな」
「麻痺って、キノコの魔物が吐く息みたいに痺れて動けんようになる魔法か?」
「そうだ。よく知ってるな。パラライズは人間にも魔物にも効く。魔力を強力に込めて掛けると相手が死ぬ事もある。だから詠唱しなくても魔力の込め方を自在に出来るようになる訓練も必要だな」
「そんなん出来るんか?」
「出来る。アイリスは詠唱無しに火魔法を使ってるだろ?あんな感じだな。お前は器用だからすぐに出来るようになるかもしれん。俺は明日からガキ共を連れて南に下ってタイベを見て回るつもりなんだがお前はどうする?」
「うち?」
「そうだ。タイベに来たのは何かを仕入れる予定だったからなんだろ?用事があるならお前はそれをやれ。その用事が後回しになってもいいなら一緒に来るか?旅の途中でパラライズの特訓をしてやるよ」
「一緒に行く♪」
ハンナリーは一緒に来ると即答したので、パラライズと水を出せる魔法陣を手に描いた。
「使い方は旅の途中で教えるからな。それとパラライズを教えたのはロッカ達以外には秘密だ。バレそうなら俺と一緒にいて見て覚えたとか言え。この魔法は非売品だからな」
「わかった」
「あと、お前のバッグを持って来い。マジックバッグに改造してやる。仕入に使えたら便利だろ」
「そんなんしてくれるんっ?」
「お前には仕事をしてもらわにゃならんからな。早く持って来い」
「めっちゃ嬉しいわっ。おおきにっ」
と、マーギンはむちゅーとほっぺにちゅーをされた。14歳の子供にされても嬉しくはない。
ハンナリーのバッグをマジックバッグに改造して注意点を教えておく。これで仕事に役立つだろう。
ロッカ達が帰って来たようでガキ共が部屋に帰ってきた。
「なんかめっちゃいい匂いしてる」
「お前ら今食って来たんだろ?」
確かに部屋が匂うのだろうと思い、部屋に洗浄魔法を掛ける。
「あ、匂いが消えた。今の何の匂いだったんだ?」
「タコ焼きとタコの唐揚げの匂いだ」
「あんたらがいらん言うたやつや。めっちゃ旨かったで」
「あんな気持ち悪い奴が旨いのか?」
「別に食べたないんやったら食べんでええんちゃう。うちはまた食べさせてもらうけど」
ハンナリーがタコ焼きはこんなんでな、とか話している間にマーギンは今度のおつまみの為にタコの下処理をしていくことに。
バンバンとタコを棒で叩いてから炭酸水で煮ていく。醤油と出汁で味付けしてから予熱でゆっくりと味が馴染むように放置。これで柔らか煮が出来るのだ。
「マーギン、タコ焼き食べてみたい」
と、トルクが言ってくる。
「柔らか煮を仕込んだからまた今度な。それにタコ焼きは結構腹が膨れるから今作ってもあまり食えんだろ。旅は始まったばかりだから慌てんな」
「えーっ」
「元はと言えばいらないって言ったのお前らだろ?次に俺がタコ焼きを食べたくなったら作ってやる」
ガキ共はむくれるが今からもう一度タコ焼きの準備をするのは面倒なのだ。
ー翌日衛兵本部ー
「まずは海賊の拠点情報料および討伐報酬を渡そう」
ハンナリーは手数料を差し引いた2000万G以上の報酬を得た。
「やったで!これで商売の軍資金が出来たわ」
めっちゃ喜ぶハンナリー。
「後は海賊達が溜めていた財産の分与は領と折半になる」
と、そんなものまでくれるらしく、1000万G強の追加報酬。
「最後に密売に関わっていた商人の情報になるのだが、海賊達が口を割らん。これは後ほどになる」
「ふーん、どうやって取り調べてんの?」
「それは見ないほうがいいぞ」
なるほど、拷問をしてんのか。昔もそうだったけど拷問ってえげつないんだよな。死んでもおかしくないような事を平気でするからな。
「吐かないなら俺がやろうか?」
「お前が?何か策があるのか?」
「まぁ、どうだろうね」
と、マーギンは代わりに拷問をやってみるよと申し出る。衛兵に任していると殺しちゃいそうだからな。
牢に案内されると海賊達から殺気の籠もった目で見られた後に脅される。仲間が拷問にあっているのに大したものだ。そして拷問を受けたと思われる海賊はやはり死にかけていた。
「お前、死にそうだな。そんなに相手に義理立てする必要があるのか?」
「はんっ、俺達は仲間を裏切ったりしねぇんだ。殺すならさっさと殺せよ。その代わり他の仲間がお前らを必ず探し出して仕返しするからな」
まだ仲間がいるのか。
「そうか。なら他の奴から聞き出そうか」
と、マーギンは5人ほど連れて来てもらう。
「俺は魔法使いなんだけどさ、魔法で人を殺さないと約束した人がいるんだよね。だから殺さないけど、死ぬより辛い思いをするけどいいか?」
「はんっ、やれるならやってみろよ」
まだ生きの良い海賊を拷問することに。
「剣で斬ったら血がたくさん出て死んだりするだろ?魔法ならそれを防げるんだよね」
と、マーギンはシュボーっとバーナーの魔法を出す。
「これをもっと温度を上げて行くと鉄でも切れるんだよね。衛兵さん、没収した剣ある?」
と、海賊達が持っていた剣を一つもらう。
シュボーーーーっ
マーギンは高熱を出すバーナーの魔法でその剣を焼き切った。
ゴトン
刀身が海賊の眼の前に落ちる。
「凄いだろ?これでおまえの手足を切っていく。剣なら血が出るけど、これで切ると切り口が炭になって血が出ないから死ねないんだよ。さて、一番元気だったお前からやろうか。手か足どちらからがいい?」
「ヒッ」
縛られて座らされている海賊は後退りする。
「足がいいのか。じゃあ右足からな」
マーギンはがっと海賊の足を掴んで高熱のバーナーを近付けていく。
「やっ、やめてくれっ」
「お前が吐けばやめてもいいけど。まぁ、別に話さなくてもいいよ。吐く奴が出てくるまで続けるから。残ってる奴らは順番を決めておけよ」
マーギンは怒鳴るわけでもなく淡々とそう言い渡す。
ジューーっ
「うっきゃぁぁっ、やめてくれっ」
「だから話したらやめてやるといったろ?話さないお前が悪い」
ジューーーーーーっ
海賊の泣き叫ぶ声と人の肉の焼ける嫌な臭いが漂い始める。
「話すっ 話すからやめてくれっ」
「そんなのいいから。焼き切れる前に話した方がいいぞ」
「ギラン商会だっ」
「本当か?」
「本当だっ、だからやめてくれっ」
マーギンはそこでバーナーを消した。
「衛兵さん、他の海賊を連れてきて、何人か同じ事を言えば本当の事だと思うから確かめるよ」
マーギンは淡々と次、次と足を焼き切る手前で吐かせていった。
「ギラン商会で間違いないようだね」
「う、うむ…」
悪魔のごとく人の足を焼き切るような拷問をしたマーギンに引く衛兵達。
「正直に話したご褒美だ」
マーギンが痛みに耐えかねて発狂しかけている海賊達に近付くと怯えて逃げようとする。
マーギンはがっと足を掴んで治癒魔法を掛けていった。
「一気に治したから暫く立てんと思うが元通りにしておいた。お前らは鉱山奴隷として売れるみたいだからな。使い物にならなければ返品されるかもしれん」
マーギンはそう言って海賊達に微笑んだのであった。
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