ハンナリーの究極魔法

マーギン達が夕方にハンター組合に到着すると、バネッサとカザフがぎゃーぎゃー騒いでいる。


「なぁ、どっちの石が…」


「どっちもゴミよ」


いつもの流れのパターンが増えてきたな。毎回毎回同じ事をよくやるものだ



「マーギン、海賊の報酬額めっちゃ上がってるわ」


報酬内容は海賊のアジト発見情報に300万G、捕縛は一人に付き30万G、親分は300万Gだった。


「マーギン、これを受けるのか?」


「この依頼はハンナが受ける。俺は同行するだけだな。ロッカ達は今日はどうするんだ?」


「我々も同行するぞ」


「これはハンナが商売を始める軍資金にするから一人でやらせるわ。皆で行くと取り分が山分けになるだろ?俺は同行するけど金をもらうわけではないんだ。ハンナを商売人として利用するのが報酬だ」


「海賊の討伐案件なんてハンナ一人でやれんのかよ?」


と、バネッサが訝しがる。


「なんか秘策があるらしいぞ」


と、言うと報酬はいらないからうちも見に行くとバネッサが言い出したので、ロッカ達も付いて来ることになったのであった。


街で一泊してから出発。


「お前、海賊共の居場所知ってんのかよ?」


と、バネッサが頭の後ろに両手を組みながら尋ねる。


「だいたいの場所は解ったんや。後は隠れ家になっとる所を見付けるだけや」


「ふーん、で、見付けてからどうやるんだよ?」


「それは見てからのお楽しみや」


「なんだよそれっ。ちゃんと教えろよ」


「そやからお楽しみやって言うてるやん」


自分をうち呼びするコンビは教えろ、お楽しみやと言い続けて移動。


「ここで昼飯休憩にするか」


と、星の導き達と別れて飯にする。ハンナリーはちゃっかりこっちに来やがった。


「今日は何食べるん?」


「お前、自分の飯があるだろ?」


「そんなイケズ言いなや。魚か?魚を食べるんやろ?」


瞳をまん丸にしてマーギンに魚にするんやろ?と迫ってくるハンナリー。こんな瞳をされたらこれ以上自分のを食えとは言いにくい。


「カ、カザフ達は何が食べたい?」


まん丸お目々から目を反らし、カザフ達に食いたいものを聞く。


「肉ーっ」


と声が揃う。


「ということで肉になった」


「えーっ。あのカジキのステーキ食べようや。あれめっちゃ美味かったやん」


「なら鉄板焼にするか。自分の好きな物を食べろ」


ハンナリーを甘やかすマーギンは魔導鉄板を出して、肉とカジキとエビ、イカを出す。ニンニクバター醤油で色々食べるのだ。


「自分の食べる物は自分で焼くこと。人が焼いてる物を取らないこと。わかったか?」


「うんっ」


マーギンはエビとイカを処理して乗せていく。ガキ共は肉、ハンナリーはカジキだ。


星の導き達も食材を持って来ているが調理器具が鍋とフライパンぐらいのようだ。何食ってるか知らないけどあっちを見ないようにしよう。多分干し肉のスープとパンとかだろうからな。


「うわぁっ、めっちゃええ匂いや。うまぁぁいっ」


ハンナリーがカジキを口に入れてほっぺたを押さえながら大きな声を出す。それに加えてニンニクバター醤油のいい匂いが辺りに漂っている。


さて、俺はエビから…


「おいひいでふへぇ」


「おいアイリス。お前はあっちの飯だろうが」


人のエビを勝手に頬張るアイリス。


「カザフ、うちにもその飯を寄越せっ」


匂いに引き寄せられたバネッサがたかりに来た。


「これは俺が焼いてんだっ。おっぱいは自分の飯を食えよ」


「うるせぇっ」


と、バネッサがカザフの育てていた肉を食べたことで争いが勃発。ロッカとシスコもこちらを見ている。


「食いたきゃ食えよ」


あんなに見つめられたらおちおちと食べられないじゃないか。


結局皆で鉄板焼を食べる事に。この人数だと鉄板が小さいから食うのに時間が掛かるなと思ったマーギンは1人離れてフライパンを出して自分専用にして食べるのであった。



そして海賊のアジトを探して海外線沿いの岩山を登っていく。なかなかにハードな移動だ。アイリスがどんくさいから移動に時間が掛かる。


「あっ、見付けたわ。あそこや!」


ひょいひょいと岩山を飛ぶように先に進んだハンナリーがアジトを見付けたようだ、ハンナリーは目もかなり良いようで、見付けたという方向へ移動を続ける。


「こんな所にアジトがあるのか…」


ようやく見付けた海賊のアジトは岩山に隠れた平地で一つの村のようになっていた。このアジトは海からも岩で隠れて見えないのだろう。これだと夜に移動する海賊達のアジトを見付けるのが困難な訳だ。恐らく食料とかは漁師のようなふりをして街まで行って調達したり、野菜類は自分達で育てているのだろう。


「マーギン、こんな所で生活出来るならちゃんと働けばいいのにな」


カザフ達の言うことはもっともだ。しかし世の中には犯罪をした方が楽に暮らせると思っている馬鹿者がいるのも確かなのだ。


海賊に見つからないように夜になるのを待ち、畑に移動する。


「さ、警戒しといてや、今からうちが魔法であいつらをボロボロにするで」


バネッサがまたもやしつこくどうやんだよ?と聞くが黙って見ときっと小声で答えるハンナリー。


「うちの魔法は前方全体に効果が出る。そやからうちの前に出たらあかんで」


と、ハンナリーが前置きしてから長い詠唱を始めた。


ちっ、人がこっちに来てやがる。


マーギンは人の気配を察知した。ハンナリーは集中して詠唱を唱えているし、皆は後ろを警戒している。


「誰かいるのかっ」


海賊達も夜目が効くらしく、見付かってしまったようなのでマーギンは飛び出してパラライズを掛けに行く。


「ラリパッパっ!」


その刹那、詠唱を終えたハンナリーは魔法発動のトリガーを引いた。


ハンナリーが放った魔法は前方に向かっての広範囲に効果のある魔法ラリパッパ。その魔法を食らった海賊達の脳内に流れるEDM


ドンツクドンツクドンツク♪


「プッチョヘンザッ プッチョヘンザッ」


いきなり海賊達がロッカ達の聞いた事のない奇声を上げて騒ぎ出した。


「ハッ ハッ ハッ スクリーーーームッ ファッキンノイズっ ファッキンノイズっ ンッハッハッハ」


そして酒を飲んで騒いで踊りだす海賊達。


「うははははっ どうやバネッサ。うちの究極魔法ラリパッパや」


「な、な、な、何してやがるんだあいつらは?」


バネッサは暗視魔法を使って海賊達の様子を見ている。シスコも暗視スコープを出してロッカやカザフ達にもその様子を見せた。


「カオスね」


シスコが呆れたように呟いた。


「うちの魔法を食らった奴らの頭の中には人を狂わす曲が流れて踊り出すんや。あのままぶっ倒れるまで酒飲みながら踊り続けよんで。そやから朝になったら屍になっとるわ」


と、うはははっと勝ち誇ったように笑うハンナリー。そしてハンナリーの言う通り、狂ったようにンハッハッハッ♪と叫びながらジャンプしたりして踊る海賊。


「あれ、マーギンはどうしたんだ?」


その時にカザフがマーギンがいないことに気付く。


「マーギンのやろう、あっちで誰か来たのをやりにいったんじゃねーか?一人痺れて倒れてんぞ」


マーギンはこちらに気付いた男にパラライズを掛けた後にその場で立ち尽くしていた。マーギンの様子がおかしいので皆が近付いて様子を見に行く。その時…


チャンカチャンカチャンカチャンカ♪


マーギンの頭にも音楽が流れているのか奇妙な踊りをし始める。


「まさかマーギンの野郎今の魔法を喰らいやがったのか?」


バネッサがハンナリーに聞く。


一心不乱に変な動きをするマーギン。


その様子を見たハンナリーが何かに気付いた。


「ハッ! あかん。このままではうちら損してまうでっ」


「損するって何をだ?」


「ええかバネッサ、今のマーギンは踊るアホウになっとる」


「なんだそれ?」


「ほんでうちらはそれを見とる」


「だからそれが何なんだよっ」


「うちらはこのままでは見るアホウになってまうんやっ。ええからあんたらもはよ踊りっ。同じアホウなら踊らな損やねん」


ハンナリーにそう言われたバネッサ達はチャンカチャンカチャンカ♪とマーギンの踊りを真似して踊るのだった。


「カオスね」


一人踊りに参加しなかったシスコはその様子を見て呆れていたのであった。


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