防衛戦の後始末

ー夜ー


外がワイワイガヤガヤと騒がしくて目が覚めたマーギン。


ん、何だこれは?


暖かい物に顔を包まれている。


サワサワ


「ケツ触んなっ」


マーギンはバネッサの膝に顔を埋めたまま手で何だろうと確認したのはバネッサのお尻だった。


「もう動けんだろ?さっさと避けろ」


ゴスッ


バネッサに頭をふんっと落とされたマーギンは顔面を地面で強打する。


「鼻が折れたらどうすんだっ」


いちちち、とマーギンは鼻をさすりながら起きる。まだふらつくけど先程ではない。


よっこらしょっとその場で座る。


「お前、泣いてたのかよ?」


「なっ、泣いてなんかねえっ。お前がいつまでも起きねぇから眠いだけだっ」


「バネッサ」


「なっ、何だよっ?」


「お前は怪我してないか?」


「えっ、あぁ、お陰様で…」


「なら良かったわ。俺も実戦から離れて4年近く経ってるから気付かないうちに鈍ってたんだな。蛇の気配に襲われるまで気付かんかったわ。怖い思いさせて悪かったな」


「ごめん…」


「何がだ?」


「飛び出すなって、くどい程言われてたのにうちのせいで…」


「気にすんな。今回はあの蛇の存在を忘れていた俺が悪い」


「あの蛇の事を知ってたのかよ?」


「あれはアイスラトルバイパーって魔物でな、尻尾を震わせて音を出すんだよ。魔物じゃない蛇でも尻尾を震わせて音を出す奴もいるんだが普通はそれは威嚇音として出す」


「あいつは違うのか?」


「あいつは獲物をおびき寄せる為に音を出す。動物の鳴き声とかな。今回聞こえた女の悲鳴はあいつが出した音だ。村人が何人か魔物に連れ去られたらしいから、その時に学習したんだろ」


「魔物ってそんな事をすんのかよ?」 


「強い魔物程賢いんだぞ。特に長く生きて大型になったやつほどな」


「お前、本当に色々な魔物を討伐してきたんだな」


「まぁ、それが仕事みたいなもんだったからな。魔物に詳しくなったのは俺に魔法や魔道具の回路を教えてくれた奴の影響だ。そいつは魔物マニアみたいな奴だったから俺も他の人より詳しくなったんだよ」


「へぇ、でも忘れてちゃ意味ねぇな」


「全くだ。それより外が騒がしいが村人が戻って来たのか?」


「あぁ、そうみたいだな。騎士が連れて来たみたいだぞ」


「そうか。家畜も守れて良かったよ」


「うん」



そしてロッカが様子を見に来た。


「皆で飯を食う事になったが、食えそうか?」


「あぁ、腹ペコだ。血が足りないから肉とか食うぞ」


「なら外に出て来い。村人達もマーギンを待ってる」


と、まだふらつく身体をバネッサが支えてくれ、テントの外に出ると村人からうわーーっと歓声が上がった。


誰かが英雄のお出ましまだーーっと叫ぶと皆からヤンヤヤンヤと褒め称えられる。


懐かしいなこういうの。


ミスティと魔物を討伐して村に戻るとこんな風に歓迎してくれたっけ。


マーギンは褒め称えてくれる村人に手を振って応えるのであった。



「マーギンさん」


アイリスがこっちに来てグスグスと泣きながらしがみつく。


「アイリス、心配かけたな。俺も鈍ってたみたいだわ」


「もう大丈夫なんですか?」


「もう大丈夫だ。血が増えるまでちょっと時間掛かるだろうけどな」


「じゃあ、たくさん食べましょう」


と、アイリスはマーギンの手を引っ張って宴の中心に連れて行くのであった。




翌日、領主邸で任務完了のお褒めの言葉をもらった。そして、その場に倒した白蛇の死体がある。街の男達も手伝ってここまで持って来たようだ。


「皆の者、この度はよくぞ平和を取り戻してくれた。皆の勇気に感謝する」


領主は20代半ばだろうか?大隊長の言っていた通り若くてボンボンというような感じだ。多分、この感謝の言葉も大隊長からやれと進言されたのだろう。


「この度の皆の活躍及び、この蛇の買い取り金額として追加1億Gを支払うものとする」


皆から1億だと!?っと声が上がる。


「討伐者マーギン、前に出よ」


「え?」


「ほら、呼ばれてんぞ」


ドンっとバネッサに前に押し出される。


「マーギン、そなたの活躍でまた平和が戻って来た。感謝するぞ」


と、報酬をどんドンドンっと用意される。

うぉーーっ、あれ全部大金貨らしいぜっという声が聞こえてくる。


「ありがとうございます。報酬は北の組合と王都の組合にお支払いお願いします。今回の任務は誰が倒したからというものではありません。皆がやるべき事をやった結果ですので。個人報酬は不要です」


「この化け物を倒したのはお前なのだろう?」


「たまたま遭遇したのが自分だっただけです。他のハンターが遭遇していたらその者が倒したでしょう」


「そうなのか?」


「はい、皆優秀ですから」


「うむ、ならばお前の進言通り北の組合と王都の組合に支払う事としよう」


自分達にも追加報酬がもらえると分かって、妬み嫉みの目でマーギンを見ていたハンター達から歓声が上がる。


「ロドリゲス、マッコイ。分け方は組合長で話し合ってくれ。何人参加してたかも知らんから」


「分かった。しかしお前も酷い奴だな」


「ん?初めっから山分けって決まってたろ?最初の決まり通りにしただけだよ。じゃ、解散でいいか?」


「ふんっ、このタヌキ野郎が」


「何のことですかね、キツネ組合長」



こうして、今回の北の街の魔物異常発生事件は幕を下ろしたのだった。王都までの馬車に乗れと言われたが辞退をして、名産のチーズを買ったりして観光をしてから王都に戻ったマーギン達なのであった。


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