異世界召喚
ー 時は遡り数千年前 ー
「ミスティ、この者の鑑定を行え」
現:マーギンこと、真田銀次郎が14歳の時に魔王討伐の為にアリストリア王国に召喚された。
召喚された時に真っ裸だったのでバサッとコートのような物を投げつけられた後に魔法使いのミスティが鑑定を行った。
「陛下、この者は魔力値がとても高く、賢者…、いや、大賢者になりうる者でございます…」
ミスティはとても悔しそうにそう王に告げた。銀次郎は何が起こったか理解が出来ていない。
「おお、それは素晴らしい。ではマーベリックよ、お前達はさらなる研鑽を積み、必ずや魔王討伐を成功させるのだ」
王は息子の王子マーベリックにそう告げた。
「かしこまりました。必ずや魔王を討伐して見せましょう」
その後、魔力値が高いということで魔法使いのミスティがマーギンの指導係となり、魔王討伐に向けて修行を行うこととなる。
ーミスティの研究室ー
「貴様の名前はなんと読むのだ?」
しかめっ面をしたミスティが銀次郎に尋ねる。
「あの… ここどこ…?」
「貴様はアリストリア王国に召喚されたのだ。先に名前を言え」
ミスティは銀次郎を睨みつけながら名前を聞いてきた。
「真田銀次郎」
「サナダギンジロウ?長い名前だな」
「サナダは名字、名前はギンジロウだ」
「名字とはなんだ?」
「家の名前というのかな?」
「家名か。お前貴族か?」
「貴族?違う違う。普通の家、というか名字は皆あるもんだろ?」
「そうか、お前の世界では皆が家名を持っているのか」
「そう、というか、俺ってもしかして本当に異世界召喚された?」
「先ほどそう言っただろうが。先に言っておくが元の世界に戻す事は不可能じゃぞ」
「ま、魔法とかある?」
ミスティは召喚された者はもっと慌てるものだと想像していたが、眼の前にいる子供はなぜかワクワクしているのに驚いた。
「お前、何をワクワクしているのだ?」
「いや、だってさ、異世界召喚だぜ。まさか本当にそんな事が自分の身に起こるとは信じられないじゃん。異世界っていや剣や魔法で魔物とかバンバン倒してる世界だろ?」
「むぅ、ま、まぁ概ね間違ってはおらんが…」
「で、俺は異世界人だろ?なんか召喚特典とかあるわけじゃん?で、俺の特典というかギフトって魔剣使いとか無詠唱魔法とか…、あっ、さっき俺の事を大賢者とか言ってたよねっ」
銀次郎はヤッターとジャンプして喜んだ。そして…
「ステータスオープン!」
銀次郎はいきなりそう唱えた。
「いきなり何を訳の分からんことを…」
「おー、出た出た。俺の魔力値は4000くらいか。これって多いのか?」
「なっ… お前自分の魔力値が見えるのか?」
「見えたぞ。えーっと、魔法適性は満遍なく高いな。無属性がSSS、他はSか。これ何段階あるんだ?」
「な、何を言うておるのじゃ?」
「ほら、魔法って属性があるじゃん。えーっと、火、水、土、風、光、闇、無属性の7つか。光と闇と無属性って何が使えるかわかる?」
「貴様… 何が見えている…?」
「え?自分のステータス、つまり能力値って奴だね。SSSとSしか表記がないから何段階あるかこれじゃわかんないんだよね。通常はAからEかFまでくらい?」
「何が見えたと聞いているじゃろうがっ」
「ん?お前も俺の事を鑑定したよね?俺のステータス見たんじゃないの?」
「私に見えたのは魔力値だけじゃっ」
「ん?お前、魔法使いなんだろ?なんで魔力値しか見えないの?」
「鑑定とはそういうもんじゃっ」
「そうなの?試しにお前を鑑定してみていい?」
「馬鹿者っ!鑑定魔法は特殊な魔法で使えるものはそうそういるものでは…」
「じゃあ試しに、鑑定っ! おっ、見えた見えた。えーっと、名前はミスティ、魔力値が3822か」
「なっ…」
自分を鑑定されてあ然とする魔法使いのミスティ。
「ゲッ、年齢377歳だと? すっげぇ、お前、ロリババァじゃん」
「なぜ年齢まで見えるのじゃっ。それにロリババァとはなんじゃっ」
「見た目はガキ、中身はババァの事をそういうんだよ。こんなのテンプレじゃん」
「ババァとはなんじゃっ、それに見た目もガキではないわっ」
「ガキじゃん」
銀次郎は胸を両手でストンと撫で下ろしてそう言った。
ゴスッ
いらぬ事を言った銀次郎はグーでいかれた。
「おー、イチチチっ。いきなり殴るなよ。魔法使い→ロリババア→ひんぬーはセットなんだからしょうがないだろ」
「そんなセット聞いたことないわっ」
「お前、コンプリートしてんじゃん」
ゴスッ
銀次郎はまだ子供なのでデリカシーに欠けていた。
フガフガと怒るミスティをどうどうと銀次郎が宥めて、お怒りが少し落ち着いてきてようやく話しが進みだした。
「お前の世界でも魔法はあったのか?」
「無いよ。でもラノベやアニメでは定番。異世界転生や召喚者とかの話や魔法に対しての知識はある」
「ラノベやアニメとは?」
「物語みたいなもんだと思って。空想上のことなんだけど、知ってる通りになったからいいんじゃない?」
「なるほど…」
銀次郎がそう言うと少し考え込むミスティ。
「お前が知ってることを教えてはくれぬか?」
「いいよ」
銀次郎はラノベやアニメの知識を嬉しそうに話した。
「うむ、お前の話で一気に魔法についての長年の謎が解けたやもしれん。ちなみにお前が鑑定した場合どのように見えているのじゃ?」
銀次郎はステータス画面を絵に描いて説明。こちらの世界の文字は読めないし書けないので日本語だ。
「これでギンジロウと読むのじゃな?」
「そうそう。銀次郎ってこっちだと珍しい名前か?」
「聞いた事のない名前じゃ。発音も難しいの」
「じゃあ、こっちでの名前を決めた方がいいね」
「そんな簡単に名前を変えて良いのか?」
「ニックネームみたいなもんだよ。他の人がなかなか発音出来ない名前を説明すんのも面倒だし」
「召喚しておいてなんじゃが、そんなに簡単に考えていて良いのか?残してきた家族とかもおったじゃろう」
「あっ、そうだね… いくら俺だとしてもいきなり部屋からいなくなったからさすがに家族が心配してるだろうなぁ。家出とか行方不明とかで大騒ぎになってるかも…」
今更ながらに青くなる銀次郎。
「これは恐らくの話にはなるが…」
ミスティが何かを切り出す。
「何?帰ろうと思ったら帰れんの?」
「いや、お前の本体は向こうの世界にそのまま居ると思われる」
「は?」
「肉体ごと異世界間を渡るのは無理があるのじゃ」
「どういうこと?」
「恐らく、お前そのものをこちらに連れて来たわけではなく、コピーしたと言うほうが正しいやもしれん」
「という事は元の世界の俺はそのまま元の世界に居るってこと?」
「確認のしようがないから恐らくとしか言えんがな」
召喚は王の命令でミスティが魔法陣を考案し、莫大な魔結晶を注ぎ込んで行ったのだが、ミスティは異世界人召喚には反対だった。召喚に成功したとしても、いきなり合意もなしに異世界に召喚された者はどう思うのだろうと心が痛んだのだ。なので、なんとか本体ではないものを召喚というか呼び出す内容を考え抜いたのだった。
「その魔法陣ってミスティが一人で考えて作ったのか?」
「そうじゃ。私は宮廷魔導師の最高位じゃからな」
「すっげー、天才じゃん」
ミスティはこの国の中で魔力値が最も高く、魔法と魔物研究の第一人者であるが変人扱いされてもいたので、利用されることはあっても褒めて貰えることには慣れていなかった。
「あっ、当たり前じゃ」
「じゃあさ、色々と教えてくれよ。魔法って無限じゃん。何が出来るかすっげー興味あんだよね」
「そ、そうか。わ、私に教えて欲しいのか」
「うんうん、魔道具とかも作れんの?」
「この国の魔道具の仕組みを作ったのは私だと言っても過言ではないの」
フフンと、ない胸を反らすミスティ。
「おーっ、ならさ、どんな魔道具があるか教えてくれよ。それと俺のいた世界の物がこっちでも作れるか試そうぜ」
「お前のいた世界の物じゃと?」
「そう、テンプレだと俺のいた世界の道具の方が便利なんだよね。それも確認したいから見せてくれよ」
銀次郎は元の世界には影響が無いだろうと言われてこちらの世界に意識を全振りした。まるで待ってましたと言わんばかりに。
その後、真田の真、銀次郎の銀を取って、名前をマーギンにすると言うと、略すならサナギンではないのか?と言われたけどそれは嫌だ。
マーギンと名前を変えた銀次郎はミスティと共に魔法と魔物、魔道具研究に大はしゃぎして勤しむのであった。
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