第1章 第8話
ローランがそういうと店主は目玉を飛び出さんばかりに驚く。
「ハリウェルさま!? クレアちゃんのところのかい!? いやあ、それは驚いた……。いや、驚きました。しかしこんなきたねえ通り、お貴族様が通るべきじゃありやせんよ」
そうへりくだりながらも気のよさそうな店主は、こちらに大した警戒心は抱いていないようだ。この国で平民は前時代の圧政を理由に、貴族に恐怖心を抱いているものも少なくない。店主がこちらに友好的な態度を示してくれたので、一応の安心をする。
「少し聞きたいことがあるんだ。少しだけいいか?」
「もちろんでさあ」
つけていた手袋を外し、店主が近づいてくる。
「あんたがクレアに不死鳥教団っていう組織の世間話をしたって聞いてな。俺は魔術師の立場上、街の治安維持も頼まれてる。どんな平凡そうな組織は一応は調べなきゃいけないんだ。だからその組織について、噂レベルでもいいから何か知っていることはないか?」
『黄金の不死鳥』を探していることについては情報の開示を避けることにした。シニフィスも隠密に動いてほしいと思っているはずだ。
「ただの雑技団ですよ、あんなものは。俺も一度だけ説法を聞きましたが、なんてことはない。不死鳥教団には教祖様がおりやしてね、その教祖様は天国にいる人と手紙のやり取りをできるんだそうです。んで、その手紙の内容はその人と家族くらいしか知る由のない情報なんだとか。それゆえに、みーんな信じ込んじまう。けどあんなもの、ただの奇術ですよ」
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